終わりなきぐるぐるワンダーランド

私の頑張りが、足りないの?

私の努力が、足りないの?

私が、家を継がなかったから、ご先祖様が罰を与えてるの?

私が、いいつけを守らず親から逃げたから、そんな子供は幸せになれないの?

ごめんなさい。神様、ごめんなさい。

神様、もっとがんばるから、助けてください。

神様、私もっと、もっとがんばるから・・・。

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束縛する親から自立した後の20代〜30代、そんな風にぐるぐるぐるぐる24時間365日考えて、心も頭も休まる時がなくて、本当に苦しかった。

「24時間365日考えて」というのは正確な表現ではないかもしれない。

正確には、「24時間365日ずっと頭の中で声が聞こえ続けて」だ。

望む望まぬにかかわらず、強制的に頭の中では毎日「朝まで生テレビ」的に大討論会が繰り広げられていた。

A「あぁ、やっと自由になれた これからは自分の好きなことをやろう」

B「あんた(自分)になんか何にもできないわよ 才能も価値もないんだから いい気になってバカみたい」

C「私には、ずっと親から抑圧されてきてもくじけなかった根性と悔しい気持ち、強いハングリー精神がある これを使ってなんだってやり遂げてやるよ!なんだってできるんだからっ!ふざけんじゃないよ、誰も私の邪魔をさせないんだから!」

D「ドウデモイイ もう死にたい いなくなりたい 疲れた」

E「でも、人の道にそれることはしてはいけない 神様は私を見ている 亡くなったお母さんも見てるわ」

F「寂しい、寂しいよぉ。誰か、お願い、私を抱きしめて 良い子良い子って言って」

G「フフフ、あんた(自分)って本当に醜いわね、ミットモナイわね、恥ずかしいわね、気持ち悪っ、死ねば?」

H「ごめんなさい、ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい・・・」

I「はぁ(ため息)、また謝ってるの?何を悪いことをしたの?何もしてないじゃん・・・何で謝るの?やることいっぱいあるのにいつまでぐじぐじと考えてるの?」

365日24時間、毎日、毎日、これが続く生活。

あなたは耐えられるだろうか?

自分には関係のない事とメンヘラ女を嗤うだろうか?

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ぐるぐるが始まったは、高校を卒業して上京した18歳。

ぐるぐるが少しづつ和らぎだしたのは、今の主治医に出会って治療を受けてから1年経った37歳くらい。

私は実に20年近くの間、このぐるぐるとともに生きてきた。

私は私の人生の膨大な時間をぐるぐるすることについやしてしまった。

ぐるぐるの正体は、

PTSD とか 軽度の解離性同一性障害 が、当てはまりそうだ。

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眠っても、休んでも、休まらなくて、いっつも疲れてた。

両親からの電話や手紙が来たり、両親に似ている人や、罪悪感を煽るような出来事や人物に出会うと、瞬時に私の頭の中でスイッチが入るらしい。

スイッチとは、PTSDの発作のスイッチである。

そしてフラッシュバックが始まる。

フラッシュバックは、過去の恐怖の場面にトリップし、その時の恐怖と同じ恐怖を再び感じる状態である。

そして、同時に頭の中でぐるぐるとエンドレスにたくさんの人格が噴き出すように会話を始める。

そして何日もの間、眠ることができない。

眠っていても、ずっと脳内で会議が止んでいない。

沢山の悪夢をみる。

だから、目覚めた時、眠る前よりもぐったりと疲れている。

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「すべてはあなたがまきおこしたこと」

「相手の態度はあなたの鏡」

「あなたは、承認欲求が強い」

「あなたは、メンタルが弱い」

「親はあなたのことを思ってやったことで悪気はないのだから、あなたも大人になって、もっと仲良くしなさいよ(苦笑)」

「あなたは、考えすぎ。そんなに考えないで」

「もっと頑張って、努力して。一生は一度しかないんだよ」

「世の中には、もっと大変な人達がいる」

毎日、、、本当に毎日、襲ってくるフラッシュバックの苦しみ。

それから逃れたくて色んな人に相談した過程で、沢山のアドバイスをもらった。

なるほどと思うものもあった、目から鱗が落ちるようなものもあった。

でもだいたい悔しさや絶望感が、湧き上がった。

苦しみを理解されない寂しさ、「あなたの考えすぎだ」と軽くあしらわれる空虚感、見当違いのアドバイスをされることへの憤慨、20年間ジタバタともがき続けた中で湧き上がった思いは、到底一言では言い表せない。

「もっと頑張れ」とか「君は、メンタルが弱い」とか言ってきた友達は、実家暮らしで一度も生活に困ったことがない子だった。

「親はあなたのことを思ってやったことで悪気はないのだから、あなたも大人になって、もっと仲良くしなさいよ(苦笑)」と言ってきた親戚は、親から殴られたり無視されたりしたこともなく、子供思いの親が残してくれた土地や店を運営して生活していた。

彼らから見たら私の訴えは、ただの反抗期の子供が物事を大げさなに騒いでいるようしか見えなかっただろう。

心の底ではすごく腹が立ったけど、苦しみから逃れたくてわらをも掴みたい思いだったから、人からもらった自分を戒める言葉を自分で全力で受け止めて肯定して「そうだよね、それが私に足りないんだよね」とアドバイスを黙って聞いて行動した。

頑張れ、もっと頑張れ、もっと変われ!と「変わる努力」「成長する努力」を自分に強いてきた。

「苦しみのない理想の私」に「変わる」ために「生まれ変わる」ために「成長する」ために「苦しい現実の私」を否定し傷つけ殺し続けた。

そして「そのままの私を受け入れてくれる」人をスルーし、「私を否定して、私を変えよう、より良くしよう」とする人の前にわざわざ「私」を置いた。そして、彼らと一緒になって「苦しい現実の自分」を痛め続けさせた。

「あんたなんかいなくなれ!」「怠け者!」「弱虫!」と心の中で何万回も石を投げた。

「辛いよぉ もうやめてよぉ、がんばれないよぉ」というその子を何万回も無視した。

今思うと、、、本当に今思うと、、

自業自得?そうだね。

でも、そんな風に不自然に卑屈なことをして自分を傷つけてしまうくらい藁にもすがる気持ちだったのだ。

私は、なんとしても逃げ切りたかった。

経済的に精神的に肉体的に私を支配しようとする親から、私を背後から突き動かす「ぐるぐるワンダーランド」から。

それがどんなに長い、苦しいものなのか、孤独で痛いものなのか、体験したことがある人にしかわからない。

体験したことがない人に苦しむ人を理屈だけで裁くような物言いは、できない。

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今の私があの頃の私を見たら、ただ黙って抱きしめてあげたい。

今、同じ思いを抱えてる人がいたら、ただ黙って抱きしめてあげたい。

つらいよね。

疲れるよね。

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