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下肢のしびれに対するストレッチとマッサージ

下肢のしびれに対するストレッチとマッサージについて、メカニズムと具体的な方法を10項目にわたってご説明いたします。

  1. 坐骨神経ストレッチ

(1) メカニズム:
坐骨神経は、腰部から下肢後面を通る大きな神経です。この神経が圧迫されると、下肢にしびれや痛みが生じることがあります。ストレッチにより、坐骨神経周囲の筋肉や結合組織の柔軟性を高め、神経への圧迫を軽減することができます。

(2) 具体的方法:
a. 仰向けに寝て、片足を曲げて胸に近づけます。
b. 両手で太ももを抱え、ゆっくりと伸ばしていきます。
c. つま先を自分の方に引き寄せ、足首を曲げます。
d. 15-30秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻します。
e. 左右3-5回ずつ行います。

注意点:

  • 痛みを感じる場合は、無理をせず、stretch感を感じる範囲で行ってください。

  • 動作はゆっくりと行い、急激な動きは避けましょう。

  • 腰に負担がかからないよう、背中を床につけた状態を維持します。

代償動作に注意:

  • 反対側の腰が浮かないようにしましょう。

  • 膝を完全に伸ばそうとせず、軽く曲げた状態でも効果があります。

出典:理学療法ジャーナル, Vol.55, No.6, 2021

  1. ハムストリングスのマッサージ

(1) メカニズム:
ハムストリングスは大腿後面の筋肉群で、これらが緊張すると坐骨神経を圧迫し、下肢のしびれを引き起こす可能性があります。マッサージによりハムストリングスの緊張を緩和し、血流を改善することで、しびれの軽減につながります。

(2) 具体的方法:
a. 椅子に座るか、ベッドの端に腰掛けます。
b. マッサージしたい側の足を少し伸ばします。
c. 両手の親指を使い、大腿後面を膝から臀部に向かって、ゆっくりと圧迫しながら上げていきます。
d. 筋肉の走行に沿って、円を描くように揉みほぐします。
e. 特に緊張が強い部分は、その場所で30秒ほど圧迫します。
f. 5-10分程度行います。

注意点:

  • 強すぎる圧迫は避け、心地よい圧で行います。

  • 皮膚を引っ張らないよう、オイルやクリームを使用するとよいでしょう。

  • 傷や炎症がある部位は避けてください。

代償動作に注意:

  • マッサージ中に体が前傾しないよう、背筋を伸ばした姿勢を保ちます。

  • 足を完全に伸ばすのが難しい場合は、軽く曲げた状態でも効果があります。

出典:PTOnline(日本理学療法士協会公式サイト), 2023

  1. 下腿三頭筋(ふくらはぎ)のストレッチ

(1) メカニズム:
下腿三頭筋の緊張は、足関節の可動域制限や下肢の血流障害を引き起こし、しびれの一因となることがあります。ストレッチにより筋の柔軟性を高め、血流を改善することで、しびれの軽減が期待できます。

(2) 具体的方法:
a. 壁に向かって立ち、両手を壁につけます。
b. ストレッチする側の足を後ろに引き、もう一方の足を前に出します。
c. 後ろ足のかかとを床につけたまま、前足の膝を曲げていきます。
d. ふくらはぎに stretch感を感じる位置で15-30秒間保持します。
e. 左右3-5回ずつ行います。

注意点:

  • 後ろ足のかかとが浮かないよう注意します。

  • 過度な stretch感や痛みを感じる場合は、強度を下げてください。

  • 背中を丸めず、まっすぐに保ちます。

代償動作に注意:

  • 後ろ足が外側や内側に向かないよう、まっすぐ後ろに引きます。

  • 骨盤が前傾しないよう、腹部に力を入れて姿勢を保ちます。

出典:理学療法Update, Vol.7, No.2, 2022

  1. 足底筋膜のマッサージ

(1) メカニズム:
足底筋膜の緊張は、足部の機能障害や姿勢の変化を引き起こし、下肢全体のアライメントに影響を与える可能性があります。これにより、神経や血管の圧迫が生じ、しびれの原因となることがあります。足底筋膜をマッサージすることで、足部の柔軟性を高め、全体的な下肢の機能改善につながります。

(2) 具体的方法:
a. 椅子に座り、マッサージしたい足を反対側の膝の上に乗せます。
b. 片手で足首を支え、もう一方の手の親指で足底を押します。
c. かかとから足の指の付け根まで、弓状に沿ってゆっくりと押していきます。
d. 特に緊張が強い部分は、その場所で円を描くように揉みほぐします。
e. 5-10分程度行います。

注意点:

  • 痛みを感じない程度の圧で行います。

  • 足底に傷や炎症がある場合は避けてください。

  • マッサージ後は、足をゆっくり動かし、血流を促進させます。

代償動作に注意:

  • マッサージ中に足首が過度に背屈や底屈しないよう、適度に支えます。

  • 足指が強く曲がらないよう注意しましょう。

出典:メディカルオンライン, 2023

  1. 腰部回旋ストレッチ

(1) メカニズム:
腰部の筋肉や関節の硬さは、脊柱管や椎間孔の狭窄を引き起こし、神経根を圧迫する可能性があります。これにより、下肢のしびれが生じることがあります。腰部の回旋ストレッチは、脊柱の可動性を高め、神経根への圧迫を軽減する効果が期待できます。

(2) 具体的方法:
a. 仰向けに寝て、両膝を曲げ、足底を床につけます。
b. 両腕を横に広げ、T字型になるようにします。
c. 膝を片側にゆっくりと倒していきます。
d. 反対側の肩が床から離れないよう注意しながら、15-30秒間保持します。
e. ゆっくりと元の位置に戻し、反対側も同様に行います。
f. 左右3-5回ずつ行います。

注意点:

  • 痛みを感じる場合は、無理をせず、回旋の角度を小さくします。

  • 呼吸を止めずに、ゆっくりと呼吸を続けます。

  • 動作は緩やかに行い、急激な動きは避けましょう。

代償動作に注意:

  • 上半身が回転しないよう、肩を床につけたままにします。

  • 膝を倒す際に、反対側の足が浮かないようにしましょう。

出典:リハビリテーション医学会誌, Vol.58, No.9, 2021

  1. 大腿四頭筋のセルフマッサージ

(1) メカニズム:
大腿四頭筋の過度な緊張は、膝関節や股関節の機能に影響を与え、下肢全体のアライメントを崩す可能性があります。これにより、神経や血管の圧迫が生じ、しびれの原因となることがあります。大腿四頭筋のマッサージは、筋緊張を緩和し、血流を改善することで、しびれの軽減に寄与します。

(2) 具体的方法:
a. 椅子に座るか、ベッドの端に腰掛けます。
b. マッサージしたい側の足を少し伸ばします。
c. 両手の指を使い、大腿前面を膝から股関節に向かって、ゆっくりと圧迫しながら上げていきます。
d. 筋肉の走行に沿って、縦方向や斜め方向に揉みほぐします。
e. 特に緊張が強い部分は、その場所で30秒ほど圧迫します。
f. 5-10分程度行います。

注意点:

  • 強すぎる圧迫は避け、心地よい圧で行います。

  • 皮膚を引っ張らないよう、オイルやクリームを使用するとよいでしょう。

  • 傷や炎症がある部位は避けてください。

代償動作に注意:

  • マッサージ中に体が後傾しないよう、背筋を伸ばした姿勢を保ちます。

  • 膝を完全に伸ばすのが難しい場合は、軽く曲げた状態でも効果があります。

出典:臨床理学療法研究, Vol.39, No.1, 2022

  1. 腓腹筋とヒラメ筋の分離ストレッチ

(1) メカニズム:
腓腹筋とヒラメ筋は下腿三頭筋を構成する主要な筋肉です。これらの筋肉の緊張は、足関節の可動域制限や下肢の血流障害を引き起こし、しびれの一因となることがあります。各筋肉を個別にストレッチすることで、より効果的に筋の柔軟性を高め、血流を改善することができます。

(2) 具体的方法:
腓腹筋のストレッチ:
a. 壁に向かって立ち、両手を壁につけます。
b. ストレッチする側の足を後ろに引き、膝を軽く曲げます。
c. 後ろ足のかかとを床につけたまま、前足の膝を曲げていきます。
d. 下腿後面に stretch感を感じる位置で15-30秒間保持します。

ヒラメ筋のストレッチ:
a. 腓腹筋のストレッチと同じ開始姿勢をとります。
b. 今度は後ろ足の膝を深く曲げます。
c. 後ろ足のかかとを床につけたまま、体重を後ろ足にかけていきます。
d. 足首の奥に stretch感を感じる位置で15-30秒間保持します。

e. 両方のストレッチを左右3-5回ずつ行います。

注意点:

  • 過度な stretch感や痛みを感じる場合は、強度を下げてください。

  • 背中を丸めず、まっすぐに保ちます。

  • 動作はゆっくりと行い、急激な動きは避けましょう。

代償動作に注意:

  • 後ろ足が外側や内側に向かないよう、まっすぐ後ろに引きます。

  • 骨盤が前傾しないよう、腹部に力を入れて姿勢を保ちます。

出典:PTNow(アメリカ理学療法士協会公式サイト), 2023

  1. 腸腰筋のストレッチ

(1) メカニズム:
腸腰筋は股関節の屈曲に関与する深部の筋肉で、これが緊張すると腰椎の前弯が増強し、腰部や骨盤のアライメントに影響を与えます。このアライメントの変化が神経根を圧迫し、下肢のしびれを引き起こす可能性があります。腸腰筋のストレッチにより、腰部や骨盤の柔軟性を高め、神経への圧迫を軽減することができます。

(2) 具体的方法:
a. 片膝立ちの姿勢をとります。前に出す足は、ストレッチしたい側の反対側とします。
b. 後ろ足の膝を床につけ、前足は膝を90度に曲げます。
c. 両手を腰に置き、上半身をまっすぐに保ちます。
d. ゆっくりと骨盤を前方に傾けていきます。
e. 後ろ足の付け根に stretch感を感じる位置で20-30秒間保持します。
f. 左右3-5回ずつ行います。

注意点:

  • 腰に痛みがある場合は、無理をせず、医療専門家に相談してください。

  • 上半身が前傾しないよう注意しましょう。

  • 呼吸を止めずに、ゆっくりと呼吸を続けます。

  • ストレッチ中は腹部に軽く力を入れ、腰部の安定性を保ちます。

代償動作に注意:

  • 骨盤を前傾させる際に、上半身が反り返らないようにします。

  • 後ろ足の膝が外側や内側に倒れないよう、まっすぐ保ちます。

  • 前足が前に滑らないよう、足の位置を固定します。

出典:The Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, Vol.51, No.2, 2021

  1. 下肢のリンパドレナージマッサージ

(1) メカニズム:
リンパ液の滞りは、組織間液の貯留や循環不全を引き起こし、下肢のむくみやしびれの原因となることがあります。リンパドレナージマッサージは、リンパの流れを促進し、老廃物の排出を助けることで、しびれの軽減に寄与します。

(2) 具体的方法:
a. 仰向けに寝て、足を少し高くします(クッションなどを使用)。
b. 足首から大腿部に向かって、以下の順序でマッサージを行います:

  1. 足首周り:親指と人差し指で輪を作り、足首を包み込むように、上方向に軽く圧をかけながら動かします。

  2. 下腿:両手の手のひら全体を使い、足首から膝に向かって、らせん状に上っていきます。

  3. 膝周り:膝の周囲を円を描くようにマッサージします。

  4. 大腿:両手の手のひら全体を使い、膝から鼠径部に向かって、らせん状に上っていきます。
    c. 各部位で5-10回ずつ、全体で10-15分程度行います。

注意点:

  • 圧は非常に軽く、皮膚が少し動く程度にします。

  • 動きは常にリンパの流れる方向(末梢から中枢)に向かって行います。

  • 傷や炎症がある部位は避けてください。

代償動作に注意:

  • マッサージ中に足が内旋や外旋しないよう、まっすぐな状態を保ちます。

  • 力を入れすぎて筋肉が緊張しないよう、リラックスした状態を維持します。

出典:Physical Therapy Journal, Vol.101, No.4, 2021

  1. 下肢のスキンローリング

(1) メカニズム:
皮膚や皮下組織の癒着は、神経や血管の圧迫を引き起こし、しびれの原因となることがあります。スキンローリングは、皮膚と皮下組織の可動性を高め、組織間の滑走を改善することで、神経や血管への圧迫を軽減し、しびれの改善に寄与します。

(2) 具体的方法:
a. 仰向けに寝るか、椅子に座ります。
b. 親指と人差し指で皮膚をつまみ、軽く持ち上げます。
c. つまんだ皮膚を、筋肉の走行に沿ってゆっくりと転がすように動かします。
d. 以下の順序で行います:

  1. 足背:足首から足指に向かって

  2. 下腿前面:膝から足首に向かって

  3. 下腿後面:膝窩から足首に向かって

  4. 大腿前面:膝から鼠径部に向かって

  5. 大腿後面:膝窩から臀部に向かって
    e. 各部位で3-5回ずつ、全体で10-15分程度行います。

注意点:

  • 皮膚を強くつまみすぎないよう注意します。

  • 動きはゆっくりと行い、1cm進むのに1秒程度かけます。

  • 傷や炎症がある部位は避けてください。

代償動作に注意:

  • スキンローリング中に筋肉が過度に緊張しないよう、リラックスした状態を保ちます。

  • 皮膚をつまむ際に、爪が皮膚に当たらないよう注意します。

出典:Physiopedia, 2023

これらのストレッチやマッサージは、下肢のしびれ軽減に効果が期待できますが、個人の状態や症状によって適切な方法や強度が異なる場合があります。持続的な痛みやしびれがある場合は、必ず医療専門家に相談し、適切な指導を受けてください。また、これらの方法を実施する際は、無理をせず、体調に合わせて行うことが重要です。

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