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小脳出血による失調症状の理学療法ケーススタディ


1. 患者情報

  • 年齢:62歳

  • 性別:男性

  • 診断名:左小脳出血

  • 手術:開頭血腫除去術(発症後3日目に実施)

2. 現病歴

62歳男性。自宅で突然の激しい頭痛と嘔吐を生じ、救急搬送される。CTにて左小脳半球に約30mlの血腫を認め、小脳出血と診断。発症3日後に開頭血腫除去術を施行。術後7日目よりリハビリテーション開始となる。

3. 既往歴

  • 高血圧症(10年前から加療中)

  • 2型糖尿病(5年前から加療中)

4. 社会背景

  • 職業:会社員(事務職)

  • 家族構成:妻と2人暮らし

  • 住環境:マンション3階(エレベーターあり)

  • 趣味:ゴルフ、散歩

5. 理学療法評価(術後7日目)

疼痛評価

  • 頭痛:NRS 2/10(安静時)

関節可動域検査(ROM)

  • 頸部:回旋制限(左右とも45°)

  • 体幹:回旋制限(左右とも30°)

  • 四肢:著明な制限なし

徒手筋力検査(MMT)

  • 頸部:3

  • 体幹:3

  • 上肢:右4、左4

  • 下肢:右4、左4

ブルンストロームステージ

  • 上肢:Stage VI (左右とも)

  • 手指:Stage VI (左右とも)

  • 下肢:Stage VI (左右とも)

注:小脳出血では、一般的に大脳の病変で見られるような片麻痺は生じないため、ブルンストロームステージは正常範囲内です。しかし、協調性の問題は顕著に見られます。

その他の関連する評価

  • 協調性検査:

    • 指鼻試験:左側で測定障害あり

    • 踵膝試験:左側で測定障害あり

    • 反復拮抗運動:左側で拙劣

  • 平衡機能検査:

    • Romberg試験:陽性(開眼でも動揺あり)

    • Mann's test:不可

  • 失調症状:

    • 体幹失調:座位、立位にて左側への傾斜あり

    • 四肢失調:左上下肢に企図振戦、測定障害あり

  • 眼球運動:水平性眼振あり

  • 構音障害:軽度の断綴性構音障害あり

日常生活動作(FIM)

総得点:68/126点

  • セルフケア:28/42点

  • 排泄コントロール:10/14点

  • 移乗:9/21点

  • 移動:4/14点

  • コミュニケーション:10/14点

  • 社会的認知:7/21点

詳細な動作分析

  • 起き上がり:左側への傾斜があり、軽介助を要する

  • 座位:支持なしで可能だが、左側への傾斜あり

  • 立ち上がり:両手支持で可能だが、ふらつきあり

  • 立位:開脚立位で可能だが、左側への傾斜と動揺あり

  • 歩行:平行棒内歩行で軽介助

    • 立脚期:左下肢の膝折れ傾向あり、左への傾斜

    • 遊脚期:左下肢のクリアランス低下、右側への代償的体幹傾斜

6. 問題点

インペアメントレベル

  1. 左小脳半球の損傷による運動失調

  2. 体幹・四肢の協調性低下

  3. 平衡機能障害

  4. 眼球運動障害(眼振)

  5. 構音障害

ディスアビリティレベル

  1. 座位・立位バランス能力の低下

  2. 歩行能力の低下

  3. ADL(特に移動、セルフケア)の低下

ハンディキャップレベル

  1. 職場復帰の困難

  2. 社会参加の制限(趣味活動の制限)

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