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枯草の根

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社会不適合でも頑張って生きてる、と証明するには文章を書くしかあるまい。そんなことを思いながら、書いているのです。
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2016年1月の記事一覧

言葉の誤用

言葉の誤用、というものはしばしば取り沙汰される。

たとえば「破天荒」。一般に使われてしまっている「言動が突飛だ。常識に囚われない」といった意味はなく、正しくは「前人未到の偉業」という意味を持つ。

たとえば「させていただく」。「する」の謙譲表現の中でも特に丁寧……のように思われているが実際は「相手の許可を得て、する」の謙譲表現であり、慇懃無礼かつ強要の姿勢を相手に示していることになる。用いるべき

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Ворон ворону глаз не выклюет

カラスはカラスの目を突かない。

互いに利益を共有する相手は裏切らないという意味だ。

逆に言えば、利益を共有出来ないならば、裏切る。

強固な信頼には、利益、或いは理念を共有することが求められよう。

裏切られた、と絶望するよりも、其処の捩れを洗い出し共有し直す調整をするべきだ。

此の言葉、自戒として。

狐の、虎被りて、な恋しそ

思うに人は、「教えてくれる」人間に恋をする。言い方を変えれば、新しい世界を見せてくれる人に恋をする。

「自分にないものを持っている人に憧れる」というのも、其の一端だろう。自分が知らなかった世界を見せてくれるから好きになるのだ。

夢追い人が魅力的に映るのも、其のためだ。
同時に、寝言ばかりで行動しない人間に惹かれる者がいるのも、「もし寝言が実現すれば、新しい世界を見せてくれる」と意識の水面下で感

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恩師の言葉より

 芸術とは、感情や心情、思想などの表現の多様性、其のものであると考える。概ね、芸術の生まれる動機は自己表現だろう。

 其れ故、芸術には「人間」と、「意志」と「現実」が必ず内包されている。

 とりわけ、文学では其れが顕著に見て取れると感じる。

 高校時代の恩師から賜り、今でも心に生き続ける言葉として、「文学は、人間の存在証明だ」というものがある。

 人間が、意志を持ち、現実を生きた証明として

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言葉の摩耗

 減らしたい言葉。「愛してる」と「死ね」。

 言葉には重みがある。そして、其れは摩耗する。「愛してる」と言い過ぎると、重みが磨り減って「いざ、という時」の言葉がなくなってしまう。「死ね」も同様だ。命を扱う言葉が軽いはずもないのに、いつの間にか、軽々しく口に出来る言葉になってしまった。そんなにも軽く「死ね」と言っていて、いつか心の底から憎い相手が出来た時、何と言うのだろう。

 重みを失わないよう

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 何か目的があるわけでもなく、夕暮れ時の寺町を歩いていると、学生時代、頻繁にどちらかの家で酒を飲み交わしていた友人にばたりと出くわした。

「久しぶりじゃあないか。どうしたんだ、こんなところで」

そう尋ねると友人は

「久しぶりだなぁ。俺はちょっとした買い物だ。お前こそ何をしていたんだ」

と返した。僕は平生であれば見栄を張ってしまい、「仕事の資料を探していた」などと答えるが、彼に隠し事などする

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リセットボタン

 よく報道の中で「ゲームのやりすぎで、人生にもリセットボタンがあると思っていたのでしょう」といったコメントを耳にする。「リセットボタンがあるから、死者が増えるんだ」といった論調だ。

 逆ではないだろうか。人生に……というよりも、日本にはリセットボタンがないから死者が増えているのではないだろうか。

 前者の報道の中で見られる「リセットボタンがあるから死者が増える」という理論は、「人を殺しても、リ

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マジックワード

「とても考えさせられる話だった」という感想は誰もが目にしたことがあるだろう。

だが、其れは……何を考えさせられたのかが不明瞭だ。尋ねると、「そういう話じゃない」と怒られるが、そういう話なのではないか。
「なんかすごいけど、よくわからない」の代替表現として、「考えさせられる」があるように思えてならない。

考えさせられる、という使役表現が用いられたならば、「考える」状態になっているはずだ。なのに、

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本音を聞かせて

 「信じて」と言われた。だから僕は彼女を信じることにした。

 彼女が浮気をしているという事実は、疑いようもないことだと考えていた。デートを当日にキャンセルされる、香水や服装の趣味が変わる、アクセサリー類がやたらと増える、おまけにベッドの中で僕以外の名前を口走る。其れほどの「疑惑」を振りまいているのだから、気づかない方がおかしい。だから僕は尋ねた。しかし、彼女は否定した。そして、「信じて」と言った

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満月

 満月のイメージは日本と西洋では、だいぶ異なっている。

 日本ではやはり「十五夜」、「風流」、「神秘的」、「ロマンティック」、というイメージだ。とりわけ、「風流」を感じることが多いのではないか。

 西洋ではむしろ満月は「狂気」の象徴となる。「人狼」のイメージも此処から来ていると考えられる。

 何故、此のような差異が生じたのだろうか。

 西洋の「狂気」のイメージの原因として、引力が有力説とし

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