マジックワード

「とても考えさせられる話だった」という感想は誰もが目にしたことがあるだろう。

だが、其れは……何を考えさせられたのかが不明瞭だ。尋ねると、「そういう話じゃない」と怒られるが、そういう話なのではないか。
「なんかすごいけど、よくわからない」の代替表現として、「考えさせられる」があるように思えてならない。

考えさせられる、という使役表現が用いられたならば、「考える」状態になっているはずだ。なのに、「何を考えたのか」を答えられないという事は、「実は考えていない」ことの証明になるだろう。

誰が使い始めたのか、マジックワード。鑑賞と思考の言語力を衰退させたのは、此れだ。いつも同じ言葉ばかり見る。ちゃんと作品や言葉が鑑賞されていない状態が「あたりまえ」になっていることを見せつけられるようだ。

「考えさせられる」ではなく「〜について考えるきっかけになった」とか、「……について考えるべきだと感じた」という感想を見たいんだ、メッセージの作り手は。

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