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フィアスコ(TRPG)の解説ノート

フィアスコ(fiasco)とは大失敗を意味する言葉だ。
しかし、ここではジェイソン・モーニングスターによって作られたTRPGを指すものである。

・TRPGって?

TRPGとは何か、を問われると毎夜twitterで行われる学級会のようになってしまうため、簡単に、そして語弊を恐れずに説明すると、「ある程度の不確定要素を伴う即興演劇ゲーム」である。

例えば、クトゥルフ神話TRPGというもので説明するなら、「目の前の棚を調べると魔導書が見つかった」という脚本が事前にあった場合、技能(キャラクターの固有能力)を用いて棚を調べることで魔導書が見つかる。ただこれだけではゲーム性がない。

「スタンリーは目の前の棚を調べ、魔導書を見つけた」だけでは面白さが半減する

そこで、それぞれの技能に定められた成功値を参照し、サイコロを振る。そしてその出た目が成功値以下の場合、その技能は成功した、ということになる。これが不確定要素となり、ゲーム性の向上や、ストーリーの複雑化に寄与する。

TRPGのダイスを振る意味はここにある(私感)

・フィアスコってどんなTRPG?

・簡単な説明

では、フィアスコはどのようなTRPGなのか。これもまた、簡潔に説明すると、「大惨事を作る即興演劇」である。
言い換えれば「主人公一味が徹底的に酷い目にあう映画を皆で作ろうよ」ということだ。

ここで先ほどのTRPGの説明から意図的に省かれた「ある程度の不確定要素」と「ゲーム」という部分が気になる人間もいるだろう。先の例で示した通り、ゲーム性はある程度の不確定要素に依存する。言い切ってしまうと、フィアスコは「ダイスによる不確定要素を求めている人間には向いていない」ゲームである。

では、何がこのゲームを楽しいゲームにしているのか。それは脚本そのものがそもそも決まっていないという不確定要素だ。
プレイヤーの手によって脚本が紡がれていくため、自分の想定外の方向へ転がっていくことこそがこのゲームの本質的なゲーム性といえるだろう。

さて、本題だが、フィアスコの最終目的は「自身らが演じるキャラクターたちの平凡な日常、非凡な幸福をボコボコのボコに転落させる」ことである。
例えば、ルルブに記載されているプレイセット「ドラゴン・スレイヤーズ」はキャラクターたちがドラゴンを倒し、街に帰ってきたところからストーリーが始まる。

しかし、その幸福はたった2回の手番で転落が始まり、4回目の手番が終わるころにはとんでもない大惨事が引き起こされているのだ。もちろん、これをプレイしているあなた達の手によって。

・大まかな流れ

詳しいルールは当然買っていただく必要があるが、説明のために簡単な流れを説明する。(リンクはPDF版、書籍版もあるのでそちらが好みの人はご自身で調べて。)


①人を集める

至極簡単、あるいは史上最大の難問だと思われるかもしれないが、これが重要だ。このゲームは3~5人を適当に集めればできる。

②プレイセットを決める
ルルブには4種類のプレイセット、すなわち、プレイヤー間で共有する大まかな世界観が収録されている。当然、あなた達の手によって新たなものを生み出しても構わない。

③ダイスを振る
白と黒のダイスをそれぞれプレイヤーの数×2個ずつ(4人で遊ぶときは白8個、黒8個の6面ダイスが必要だ)振る。

④【人間関係】【つながり】でキャラクターの関係性を決める
ここが他のTRPGと大きく異なるところだ。大事なのはあなた自身ではなく、あなたを取り巻く環境であり、それがあなたというキャラクターを作り出す。具体的には、あなたの両隣の人間との関係性を先に振ったダイスの目を当てはめながら決めていく。このとき、各プレイヤーの間にメモ用紙などを用意することが好ましい。

⑤ダイスを中央に戻し、ゲームを開始する。
簡単なキャラメイクが終わったら、ゲームが始まる。
常に考えておかねばならないことは「自分のキャラは隣の奴とこんな【人間関係】なのだ」ということと「どうすればこのキャラは徹底的に転落することができるか」ということである。要は、伏線はあるだけ全部出し切った方がいい。

ゲーム開始時点でこのようになっているとわかりやすい

⑥第一幕
手番プレイヤーがやれることは2つ。〔場面〕を【確立】するか【解決】するかだ。
【確立】する場合、手番プレイヤーが自身のキャラクターやその周囲の環境を演出していく。
【解決】する場合、手番プレイヤー以外のプレイヤーが手番プレイヤーのキャラクターやその周囲の環境を演出していく。

どちらにせよ、その中で何か出来事が起こるだろう。例えば「このキャラクターは酒を浴びるように飲む」だとか「チンピラに絡まれた」だとか。その結果どうなるのかを【確立】した場合、他のプレイヤーが、【解決】した場合は手番プレイヤーが判定する。

判定には中央に置かれているダイスの色を使う。
キャラクターにとって都合がよければ白のダイスを、都合が悪ければ黒のダイスを使う。そしてこの判定に使ったダイスを手番プレイヤーは他プレイヤーに渡す。これは最後に効いてくるのだが、ダイスの色の偏りがないほど悲劇的な結末に近くなると考えて問題がない。

これを中央のダイスが半分になるまで(つまりそれぞれ2回の手番を終わらせるまで)続ける。
ここまでは(見かけ上)ハッピーなんだ。たいていの場合は。

ダイスの動きはこんな感じ

⑦転落
第一幕で獲得したダイスをそれぞれ振る。そして白の合計と黒の合計の高い方から低い方を引いた値を算出する。
例えば、白の出目の合計が4、黒の出目の合計が6の時、あなたの値は黒の2と記録される。

そして黒の最大値を出した人と白の最大値をだした二人にはこれからの大惨事っぷりを決める権利と義務が与えられる。
中央の未使用ダイスを振り、【転落】表の大カテゴリーをそれぞれ1つずつ決め、そしてお互いに相手の大カテゴリーの小カテゴリーを決定する。これが第二幕の行動指針になる。

休憩を挟むならここ。休憩中にたくさんの悪だくみと、悲劇的な結末を考え、相談しておこう。

⑧第二幕
やることは第一幕と同じだ。
たった一つ大きな違いは、判定に使ったダイスは手番プレイヤーが獲得するということだ。
これを中央のダイスが尽きるまで続ける。そして最後に残ったダイスは白としても、黒としても扱う。どっちにするかは判定をする人間にゆだねられる。

ダイスの動きはこんな感じ


この第二幕が終われば、物語はエピローグを残すのみとなる。なるべく派手に見せ場を作ろう。そしてなにより、転落を楽しもう。

⑨残響
転落の時と同じように自身の目を算出する。その値が0に近いほど悲劇的な結末を迎える。
自身に与えられた結末に従って、すべてのプレイヤーは自分のキャラクターについて語りながら、自分の持つダイスを中央に返していく。そしてすべてのダイスが戻ってきたとき、物語は終了する。

残響はエンドロールのようなものだ。しっかりと演出する必要はなく、ダイジェストで十分だ。

・まとめ

さて、これで十分とは言えないが説明を終わらせていただく。最後になったが、プレイ時間は2~3時間程度かかるだろう。当然、人数やプレイヤーのスタイルによって大きく変化する。

簡単なメモ書きだが、これがあなたの良い大惨事の糧になることを祈っている。

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