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心理系大学院を探すときに重視したポイント【公認心理師・臨床心理士】

2024年4月24日:500文字加筆
指導教員の選び方や研究室訪問での具体的な質問方法を追記しました。

2024年4月4日:2,000文字加筆
内部実習の実態や担当できるケース数の見極め方、就活への活かし方、公認公認心理師試験対策や合格率などの情報を追記しました。

2023年5月11日:3,500文字加筆
外部実習に必要な費用や実態、大学院受験の難易度・偏差値、ライバルとなる学生の学力などの情報を追記しました。

2023年2月2日:4,000字加筆・大幅修正
実際に大学院へ通い始めて感じたこと、新たに知ったこと、ここもチェックしておくべきだったことなどの情報を追加しました。
各項目の整理を実施し、読みやすいように構成を変更しました。



はじめに

公認心理師・臨床心理士を目指すためには、大学で4年間学んだあと、大学院で2年間臨床心理学を学ぶ必要があります。
筆者は、もともと心理学とは関係のない業界で働いていました。「心理士を目指す」ことを決め、心理学が学べる通信大学(聖徳大学)へ3年次編入し、その後大学院受験をし、国立大学院へ進学しました。

大学院選びは、受検するときに最も悩んだことのひとつです。なぜなら、インターネット上で得られる大学院生活に関する情報が限られているため、心理業界にツテやアテがない人が「心理系大学院に進学したい」と考えたときに、判断するために必要な情報を得るのが難しい実態があったからです。
自分は情報を集めるために、20校以上の大学院説明会に出席し、複数校の大学院の研究室訪問をしました。時には大学院の研究で行われている心理学の実験に参加して、大学院生と仲良くなり、そこから心理学を専攻している心理系大学院生を紹介してもらって、生の声を聞いたこともあります。

臨床心理学は、他の専門分野と比較すると、社会人経験者もなじみやすい風土があると思いますが、それでも、入学する大学院はかなり慎重に選ぶ必要があると考えています。(理由は後述します)

この記事は、「心理学に関する情報が完全にゼロの状態から、自分に合った大学院を選ぶために重視したこと」をまとめた記事です。
また、「大学院や指導教員を選ぶ時点で重視したこと」に加え、「実際に大学院生活を送ってみて感じたこと、重要だった視点」などを解説します。
この記事に記載しているざっくりとした概要はこちらの記事に書いてあるので、まずはこちらの記事を読んでいただくのもおすすめです。

社会人や外部受験者が大学院探しで注意すべきことは、こちらにまとめました。


【注意】
記事内容は、あくまで個人の感想であり、所属する機関を代表するものではありません。
また、大学院や指導教員によって、実態は大きく異なります。内部事情は大学院ごとに大きく異なること、年々変化していくことを了承したうえでお読みください。本当に知りたい情報は、自分の足を動かして入手することをおすすめします。
資格試験の最新情報に関しても、こちらの記事ではカバーしきれないため、各公式HP等を確認するようにしてください。


【この記事が向いている人】

  • 何を基準に心理系大学院を選んだらいいか分からない人

  • 公認心理師・臨床心理士になるために大学院進学を検討している人

  • 公認心理師・臨床心理士になりたいが、知り合いがおらず、心理系大学院の実態が分からない人

  • 社会人から心理系大学院へ進学した人の生の体験談が知りたい人

  • 心理系大学院の忙しさ・スケジュール・実習内容などを知ったうえで、今の生活スタイルで大学院へ進学できるか検討したい人

  • 大学院説明会・研究室訪問でチェックしておくべき点、質問するべきことを知りたい人

【お断り】
この記事は、自分の体験を踏まえて書いているため、有料記事とさせていただきます。当然ですが、守秘義務やコンプライアンス違反となる内容は記載していません。
また、今後体験談などを追記した際には値上げする可能性もあるのでご了承ください。

【マガジンの紹介】
この記事を含んだ「心理系大学院の大学院生活体験記」は下記のマガジンでまとめて販売しています。大学院生の1年間、1週間のスケジュールや忙しさ、お金事情など、かなり赤裸々・リアルに書いています。受験勉強のモチベーション維持や、大学院入学を検討するための情報として活用してもらえると嬉しいです。


0.心理系大学院でやること

大学院で重視されるのは「研究」だけではない

みなさんは、何を目指して心理系大学院へ入学しようとしていますか。
「カウンセリングや心理療法ができるようになりたい」「困っている人の力になりたい」「心理学の研究をしたい」「公認心理師や臨床心理士の資格が欲しい」「なんとなくかっこいいから」「心理学の知識が欲しいから」「カウンセラーに憧れているから」など、様々な動機やモチベーションがあると思います。

他の領域の大学院生活では(特に筆者は元理系だったので、理系の大学院生活を元に考えると)、主に「研究」と「授業」が中心になります。特に「研究」に対して大学院生活の大半の時間を使っていると言っても過言ではありません。

一方で、心理系大学院に入学した場合、「研究」「授業」「実習」の3本立てとなります。そして、2年生になると「就活」「(資格取得を目指す場合)公認心理師の試験勉強」が追加され、日々の生活を回していくことになります。

①研究

研究に関しては、まだ自分が偉そうなことを言える立場にないので、多くは言及しません。ただ、「大学院を卒業する=修士論文を書いて提出する」ことが必須になります。修士論文を書くためには、2年間の大学院生活の中で研究を進めていく必要があります。(元を言えば大学院は研究する場所です)
M1の入学後すぐに研究に着手し、M2の冬(12月~1月頃)に論文を完成させ、提出する大学院が多いようです(一部の大学院では、M2の夏~秋頃に提出する場合もあるようです)

②授業

詳細は後日更新しますが、基本的に「公認心理師」「臨床心理士」の受験資格に必要な単位を満たすために、授業を取り、単位を取得していく必要があります。主にM1の前期・後期に多くの授業を取る必要があります。
ただ講義を聞いていればいい大学の授業とは異なり、大学院の授業ではグループワークや院生による発表、ロールプレイが中心となります。そのため、全ての授業に出席する必要がありますし、発表準備や課題に忙殺されます。基本的に授業の欠席はよほどの理由がないと許されないと考えておいたほうが良いです。(社会人として仕事をしているから授業は欠席します、は難しいです)

③実習

公認心理師・臨床心理士の資格を取得するために実習に行きます。実習は「外部実習」と「内部実習」の2つに分類されます。
外部実習は、外部機関へ行き、実際に心理士として働いている人の元で現場を学びます。公認心理師を目指す場合、心理士の5領域(医療・福祉・教育・司法・産業)の中で3領域以上の実習先に行くことが推奨(かつ医療領域は必須)されています。
内部実習は、大学院の中に併設されている「心理相談室」におけるケースの担当、電話受付、運営全般を行います。実習に関する詳細は後述します。

④就活

上記3つの「研究」「授業」「実習」をこなしながら、就職活動をする必要があります。公務員を目指す人は、早い段階から公務員試験の対策・勉強をしています。また、民間就職、心理士としての就職を目指す人もそれぞれ就活を行っています。
博士課程へ進学する人もいます。自分の進路を決定し、それぞれの道に合わせた就活や進学先の決定を行います。

⑤公認心理師の試験勉強

これから大学院へ入学する人で公認心理師の資格取得を目指している人は、基本的にM2(大学院2年生)の3月に公認心理師の国家試験を受ける必要があります(2024年以降は3月受験になる予定のようです)。
研究や実習と並行しながら、国家試験の試験勉強を進める必要があるため、かなり負担が大きくなることが予想されます。

1.取りたい資格は

この記事を読んでいる方が大学院へ進学して取りたい資格は何ですか。「臨床心理士」「公認心理師」の2つの資格をあげる人が多いのではないでしょうか。

心理系大学院の中には

  • 臨床心理士と公認心理師の両方の資格が取れる

  • 臨床心理士の資格のみ取れる

  • 公認心理師の資格のみ取れる

の3種類があります。

大学院を選ぶときには、必ず欲しい資格の受験資格が得られる大学院かどうかを確認しましょう。

2つの資格の違いや是非については、様々な主張があるので調べてみてください(筆者は詳しくは言及しません)

臨床心理士

臨床心理士は、「臨床心理士指定大学院」を卒業すれば臨床心理士の受験資格を取得することができます。そのため、他学部出身の人が心理カウンセラーになりたい、と考えたときには比較的目指しやすい資格です。(後述する公認心理師は、大学の学部で4年間心理学を学んだあとに、大学院へ進学しないと受験資格が得られません)

まずは、興味のある大学院が「臨床心理士指定大学院なのか」確認しましょう。
また、「臨床心理士指定大学院」には「1種指定大学院」と「2種指定大学院」の2つがあります。
「1種指定大学院」は、大学院卒業後、すぐに臨床心理士の受験資格を得ることができます。
「2種指定大学院」は、大学院卒業後、1年間以上の臨床経験を積んだ後に臨床心理士の受験資格を得られる大学院です。
すなわち、大学院の卒業後すぐに臨床心理士の受験ができるわけではありません。

また、国家資格の公認心理師ができたことにより、今まで臨床心理士の資格取得ができた大学院が、「臨床心理士指定大学院」の看板を外し、「公認心理師の資格のみ取得できる」大学院へ変わってきているところもあります。
去年までは臨床心理士の資格が取れていたのに、来年以降は臨床心理士の資格が取れなくなる、といった場合もあるので、大学院説明会やHPで入念にチェックしておきましょう。

公認心理師

2016年に「公認心理師法」が施行されてできた国家資格です。
公認心理師になるためには、「大学で4年間」+「大学院で2年間」の合計6年間が必要になります。その後、大学院を卒業する3月のタイミングで(2024年以降Aルート受験者の場合)国家試験を受験し、無事に合格したら公認心理師の資格を得ることができます。
公認心理師になるためには、大学で80時間、大学院で450時間の実習に行く必要があります。

少しずつ公認心理師の資格取得ができる大学院が増えてきている印象です。こちらに関しても、大学院説明会や大学HPで、最新の情報を確認するようにしましょう。

筆者は、「公認心理師を目指そう」と思った時には既に大学を卒業し、社会人として働いていました。そのため、公認心理師の受験資格を満たすために、通信大学(聖徳大学)に3年次編入し、2年間在籍し、大学を卒業しました。その後、心理系大学院へ進学し、公認心理師の資格取得のために卒業を目指しています。
既に心理学科以外の大学を卒業している人は、大学への3年次編入が認められる場合があります。現在仕事をしている人は、通信制大学を選ぶのも一つの手です。
筆者のこちらのブログでは、通信制大学のリアルや大学院受験についまとめているので、実態が知りたい人はチェックしてみてください。


2.「臨床」と「研究」どちらを重視する?

「大学院へ進学して臨床心理士・公認心理師の資格を取りたい」と、知り合いの臨床心理士に話したときに、最初に聞かれたのが「博士課程に進学する意思はある?」ということでした。
なぜそんなことを聞かれたのか、当時は分からなかったのですが、大学院進学後、すごく大切なことだったと感じたので、体験談を踏まえて書いていきます。

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