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進化心理学(evolutionary psychology)

○進化心理学

 進化論の立場から人間の特性と行動パターンが、長い進化の過程でどのように形成されてきたかを研究する分野。
 「文化や地域を越えて人間に共通してみられる心理的メカニズムの基盤には適応の問題がある」としている。

○進化論(evolution)

 ダーウィン (Darwin, C.R.)が提唱した。
 生物種は不変なものではなく、遺伝子の変化が原因となって種類が分岐し、 新たな種が生じるとする理論。

○自然淘汰(natural selection)

 厳しい自然環境にさらされた結果、 生物集団においてある形質をもつ個体が他の個体よりも多くの子孫を残すこと。
 動物は常に環境に適応するように進化していき、その遺伝子が受け継がれ、その種の性質を形成していくとされる。

自然淘汰の基本条件

(1) 生物には、生き残るよりも多くの子が生まれる
(2) 生物の個体には、同じ種に属していても、さまざまな変異が見られる
(3) 変異の中には、生存や繁殖に影響を及ぼすものがある
(4) そのような変異の中には、親から子へと遺伝するものがある

○ 性淘汰(sexual selection)

 進化論で提唱されている適応のメカニズム。
 異性をめぐる闘いを通じて、ある形質が進化していく現象。

○血緣淘汰(kin selection)

 個体が自ら残す子孫だけではなく、 遺伝子を共有する血縁者間での利他的行動を考慮に入れた進化理論。
 血縁が近いほど利他的行動が進化する傾向にある。

○互恵的利他主義(reciprocal altruism)

 動物が血縁者でない個体に対して利他的に振る舞う行動を進化的に説明する理論。
 ある個体が他個体に対して利他的に振る舞う場合には、一定の適応度の損失が生じるが、その個体が利他行動をしてあげた他個体から将来的に同様の恩恵を被れば、先の損失を解消することができる。
 こうした行動の繰り返しは、長期的に見ると両個体ともに適応度が上がる。
 霊長類に多くみられる。

互惠的利他行動が成立する条件

(1) 特定の個体間の社会関係が長期にわたって続く、なかば閉鎖的な集団で生活していること
(2) 動物が互いに個体識別し、過去にどんな行動のやりとりがあったか記憶できる認知能力をもっていること
(3)行為者が被る損失よりも、行動の受け手が受ける利益のほうが大きいこと

○マキャベリ的知能仮説(Machiavellian intelligence hypothesis)または社会脳仮説(social brain hypothesis)

 霊長類の持つ高度な知的能力は、社会的な場面で騙しや欺き、同盟を使って他の個体を操作する必要性に由来するという仮説。
 ヒトが高度な知性をもつようになったのは、 物理的環境に対する適応というよりも、むしろ社会的環境への適応として進化したためだと考える。

○ 究極要因(ultimate factor)

 なぜ人間が特定の心的特性を有し、特定の行動傾向を持つようになったのかを説明する進化的な要因。
 生存率や繁殖率の上昇といった環境への適応に関係する原因。

○至近要因(proximate factor)

 その行動を直接的に引き起こす生理的、心理的、社会的な原因。


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