幻覚や妄想の捉え方③

幻覚や妄想は、発病のときに現れて、治療によって改善すると思われています。その誤解を少し解いておこうと思います。
ア、幻覚や妄想は、サポートさえあれば、自然に回復します。
イ、幻覚や妄想の治療に使われる薬剤(抗精神病薬)の副作用に、幻覚、妄想があります。
ウ、抗精神病薬をのんでも幻覚や妄想が改善しないのは、薬が合っていない、足りないのでなく、幻覚や妄想が現れる原因にアプローチしていないからです。

ア、については、同タイトル②に書きましたので、お読みください。
今回はイ、抗精神病薬(だけではないけれども)の副作用としての幻覚、妄想について、です。
抗精神病薬を服用して、速やかに幻覚、妄想が消えるか、相当楽になる人がいます。抗精神病薬が、症状を消してくれた、と思うかも知れません。が、薬はそんな上等なことはできません。薬にできるのは、脳神経系を鈍らせることくらいです。幻覚や妄想で頭がパンクしそうになっているときに、鈍らせることで、たまたま自分の頭の整理ができただけなのです。薬の力は借りたかもしれませんが、自分で、または自然に回復したのです。そしてこの、鈍らせる作用は、必ずしも抗精神病薬である必要はありません。ある、有名な精神科医が「鎮静作用を持つ薬であれば、何だって精神病症状を改善できる。抗不安薬でも、気分調整薬でも」と言っておられました。抗精神病薬が、最もガツンとくるだけのことです。
では、抗精神病薬をのんでも、幻覚、妄想が消えない人は、どういうことになっているのでしょう。これについては、④で書きます。
ところで、抗精神病薬の副作用で幻覚、妄想が出現するとは、どういうことなのでしょう。このことは、あまり知られていません(向精神薬の薬害な知識のある人にとっては常識なのに)。ほとんどの抗精神病薬で、添付文書の副作用欄にしっかりと書いてあります。それでも、薬物治療が必須だと信じている専門家や、その治療を信じている人は、幻覚、妄想を改善する力のほうが、副作用で幻覚、妄想が出現する可能性より、ずっと大きいと思っているでしょう。先に書きましたが、薬は幻覚や妄想を取り除いてくれることなどできません。脳神経系の働きを鈍らせるだけ。ですから、タイミングや量によっては、むしろ、幻覚や妄想を引き出してしまうのは、理解できますね。
もしも、薬によって、幻覚や妄想が出現していると思われる場合、(服用前は全くそれらの症状がなかったのに、服用後に現れた場合)は、抗精神病薬の種類や量を変えても改善しません。このことは、精神科医師にこそ、知っておいてほしいです。
(ついでに、薬物治療開始後に幻覚や妄想が出現したときに、「あなたがもともと持っていたものが現れたのです」ということを言う人がいますが、抗うつ薬を出しておいて、その副作用で躁状態が出たときに「あなたは、もともと双極性の要素を持っていたのです」というのと同じくらいナンセンスです。が、現実にはよくある話なのです)

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