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オーラが輝く時

2023年も終わりが近付いてきた。今年は11月に入ったというのに気温が高い日が続いたかと思えばいきなり気温が下がったりして、令和はつくづく温度調節が苦手と見える。

足元が冷える季節になると、毎年思い出す事がある。ちょうどクリスマスを迎えるこの時期だ。今からもうだいぶ前になるが、当時派遣先の会社に新入社員の若い女性が入ってきた。入社当初は緊張でいっぱいだった彼女も年末が近づくとだいぶ雰囲気にも慣れ、あちこち営業で飛び回って活躍していた。時間がある時はお昼を一緒にとっていたが、11月の月末も迫ったある日、ランチをとりながら彼女は叫んだ。

「どうしましょう、このままじゃ明石家サンタを一人で見ることになりますううぅぅううっ!!!!!!」

彼氏がいなくてピンチ、というわけだ。

その頃、彼女と私が所属していた営業部は美人ぞろいで有名で、彼女自身も可愛らしい人だった。しばらく前に付き合っていた彼氏と別れたらしく、12月を目前に控えた今、このままでは一人さみしくクリスマスを過ごすことになる、というのである。彼女は美人だし性格も良いのでなんの心配もしていなかった。しかし確かにクリスマス直前では分が悪いか。相談される側の私の方がよっぽど危機感のある人生を送っていたが、当時そのような立場で慰めただろうか。

しばらくして12月に入ると仕事も年末進行で忙しさが増し、同僚と落ち着いて食事をとる機会も減ってしまった。バタバタとオフィスを出入りする人たち。私は内勤だったので外に出る機会はほとんどなく、ずっとパソコンと睨み合って作業をしていたが、そんな時ある違和感に気が付いた。「眩しい」のだ。チカチカするような感じで何が眩しいのかと周囲を見渡してみると、彼女が外回りから戻ってきて仕事をしている。私は彼女自身が眩しいことに気が付いた。輝き方が尋常じゃない。…でも待てよ?おかしい。先日嘆いている様子を見たばかりではないか。それなのに…。
とにかくチカチカするので目くらましを食らったような気分でいたが、先日の出来事とのギャップもあり、その違和感の正体をつかめないまま、そして理由を聞けないまま、部署の忘年会を迎えてしまった。そこで驚きの発表を聞くことになるのである。

「彼氏ができました♡」

つい先日明石家サンタを一人で見ると言っていた彼女が。
いやさすがだな。可愛いだけあって何の心配もいらなかったわ。
…そうじゃなくて。
その時悟った。眩しかったのはやはりそのせいだったのだ。

彼女の眩しさに気が付いたのは12月の頭ごろだった。
「彼氏とはいつお付き合いを始めたの?」
と聞いてみると、
「12月の頭ぐらいですかね」
と言う。
あの輝きはやはりそのせいだったのだ。

当時、私は人がこれほど眩しく光るものかと本当に驚いたものだった。文字通り、輝きが違うのだ。心から喜びを溢れさせた人というのは、こうも違うものか。

あれから何年も経ったが、あれほどの輝きを見た機会はない。
この時期になるとその時の輝きを思い出しては、あのように人が輝ける瞬間を、どれほど持てるだろうかと考える。
心から喜びを感じている時の、人の輝き。それが何年経った今でも忘れられない。

光を感じることがあるだろうか。
喜びを開放させている時の輝きを感じる瞬間が。

今後もたくさんの光を感じたいと願っている。

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