日本に自殺が多い理由

先日、非常に興味深い話を見た。

それは『死の欲動』とミクログリアの関係についての話だった。

まず、それぞれの説明をする必要があるかもしれないね。

『死の欲動』とは、フロイトが『生の欲動』の対になる概念として提唱した我々の無意識の中にある欲動のことで、これは誰しもが無意識的に持っているらしい。

難しい言葉で言うなれば、これは生命という有機的なものから無生命という無機的なものなものへの欲動なんだそう。

と言われてもよく分からないかもしれないが、とりあえず我々には『生きたい!』という欲求だけでなく『死』に対する欲求もあるんだって。

そして、これはストレスや不安などによって強まっていくんだけど、それを治める最初の方法は『死の欲動』を外側に向けることらしい。

フロイトはこれを『破壊の衝動』と呼んでいて、怒りや争い、戦争の元になっていると仮定していたみたいだ。

そうして外側に向けることができれば一旦『死の欲動』は治るんだけど、もしそれに失敗したらその欲動は自分の内側に向くんだって。

そうすると自傷行為などによって自分を傷つけるようになるそうだ。

そんな一見恐ろしいものが『死の欲動』だ。

その『死の欲動』と、脳科学的に関連しているのがミクログリアなんじゃないかと言ったのが精神科医で脳科学者の加藤隆弘さんだ。

何を隠そう、僕は今加藤さんの本を読んでこの記事を書いている。

加藤さんは脳科学者でありながら、精神分析の研究と臨床も行なっている。

そんな加藤さんが特に注目しているのがミクログリアなんだって。

ミクログリアとはグリア細胞の一種なんだけど、そもそもグリア細胞を聞いたことがないという人も多いんじゃないかな。

すごく簡単にいうと、グリア細胞は神経細胞が円滑に機能するように手助けをしてくれる細胞たちなんだけど、その中でもミクログリアはストレスなどに対して反応し、炎症反応を引き起こすグリア細胞なんだ。

実は、うつ病や統合失調症の原因の一つとして脳内の炎症反応が考えられていて、それを引き起こしているのがまさにミクログリアというわけだ。

加藤さんはこのミクログリアの様々な影響や効果、また生物の行動との相関について研究されている。

そして、その研究の中で、うつ病患者や統合失調症患者の自殺念慮とミクログリア活性の間に生の相関を見つけている。

つまり、脳内のある部位において(厳密には前帯状皮質や前頭前皮質という部位なんだけど難しいから細かい話はカットするね)ミクログリアの活性が強い人ほど自殺念慮が強く、精神疾患の重症度も高かったんだって。

この結果を見ると、『死の欲動』とミクログリアが無関係だとは言えなさそうだよね。

フロイトの理論はどうしても科学的ではなさすぎて、フロイトの提唱する理論を科学的・生理学的に証明するのはすごく難しいんだ。

だから、彼のいう『生の欲動』『死の欲動』も、そんなものが本当にあるのかどうかすら科学的には分からないんだ。

そして、フロイト自身もその説明には苦労したみたいなんだ。

彼は『死の欲動』の説明の中で『生ける小胞』という言葉を用いている。

それが何かは分からないが、加藤さん曰く、それがミクログリアなんじゃないかということなんだ。

もちろんフロイトがそんなことを言っていた時代にミクログリアの存在は知られていなかった。だからフロイトが説明する言葉を失っていたのも決して不思議なことではない。

ただ、もしそれが解明できたら、なんかまた一つ『心』と脳がつながるようですごく感動的だよね。

まぁそれはそれとして、今回のテーマは『日本に自殺が多い理由』だったよね。

これはフロイトの考えだから正しいかどうかについては言及しないけれども、非常に理にかなっているなと思うんだ。

もしかしたら読んだことがあるかもしれないけど、実は1932年頃にフロイトはアインシュタインと手紙でのやり取りをしているんだ。

それは今でも『ヒトはなぜ戦争をするのか?』というタイトルで売られているから興味があるひとは読んでみて。

その中でフロイトは戦争の原因として、外側に向いた『死の欲動』を取り上げている。

そして、その『死の欲動』に由来する破壊の衝動を処理する方法として、『死の欲動』を内側に向けることを提唱しているんだ。

ただ、『死の欲動』を自分の内側に向けるということは、自傷行為や自殺など自分自身を破壊する行動にも繋がりかねないことはフロイトも懸念していたことだ。

そして、それがまさに現代の日本で起こっていることなんじゃないかな。

日本は世界的に見ても安全な国だと思われている。1945年、第二次世界大戦が終わってから約80年間日本は戦争をしていない。

しかし、その代わりに自殺率は世界でもかなり高い方だ。

『戦争はしないが自殺が多い国』としての日本は、まさに『死の欲動』がうちに向きすぎた結果なのかもしれないね。

さらに、日本はストレスが多いだろう。過労や同調圧力など、日々多くの人がストレスを抱えて生きていると思うんだ。

それがまたミクログリアを活性化させるんだろうね。それが『死の欲動』となって我々の人生を破壊するのかもしれない。

日本に自殺が多い理由。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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