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マッチングサービス。

 もう年寄りなので、なんという名称なのかわからないけど、ネットで登録すると、こんな仕事があるけどやりませんか、と依頼がきたり、入札して仕事を得る、みたいなところがあちこちにある。5年程前に、知り合いの若いカメラマンから教えてもらい、面白そうなので紹介してもらった。しばらくすると面接みたいなのがあって、ポートフォリオだの履歴だの出すと審査には通った。どんな案件が来るのか不安だったけど、とりあえず登録していたら、ほどなくして撮影の依頼があった。ホームページのようなところへ使う、店舗の紹介写真、外観だの商品だの撮影する仕事。ギャラ自体は安めだけど、撮影から納品まで3時間以内に完結するならそれほど悪くないぞ、と引き受けた。びっくりしたのはそれから。撮影の方法、機材、服装の事まで事細かに書かれた、マニュアルのようなのが送られてきたが、そこには、ストロボ撮影では、影がきつくなるのでアンブレラを使ってこんな風に撮影しましょう、ワイドを使うと画面の端が歪むので気を付けましょう、集合では重ならないよう並びに気を付けましょう、など、およそカメラマンとして仕事をしていれば、言わずもがななことが羅列してあった。良い例、悪い例の、写真データまで付いてきたのには申し訳ないけど、笑ってしまった。
 こんなことまで言わないといけない人たちと同列に扱われるのか、と思うとちょっと”げんなり”したけど、それはそれ、こちらも仕事と割り切って、ギャラに見合うだけの働きをすればいいかと考えてた。ある時、チャンスがあったので、このようなマニュアルが出来た背景を聞いてみたが、案の定な回答だった。デジタル化で参入しやすくなったとはいえ、感性だけではすませられない最低限の撮影技術と機材、少なくともストロボなりの照明をある程度使いこなせないと駄目だと思うのだけど、違うのかな。
 これまでずっと仕事してきた代理店とのギャラの話で、担当になったばかりの若い方に、ネットでカメラマンを派遣してくれるところに頼んだら一日〇万円でいける、と言われました、なんとかなりませんか?と言われた。即座に、それで出来る方が居るならどうぞそちらへ頼んでください、私には無理なので、とお伝えした。後日、別の長い付き合いの方から連絡があり、クライアントからマッチングサイトでカメラマンを探せばこんな料金で出来そうだけど、これはダメかなと打診があったそう。先方には、これから売り出そうという新商品、しっかりした技術のある所に、適正な料金でお願いしましょうよ、とちゃんと説明して、説得、説き伏せたらしい。それを若い人が点数稼ぎなのか、私に吹っ掛けてきたのだった。私もそうだけど、同じ製品を買うのにネットで最安値を探してそこで買う、ってのが当たり前になったご時世。カメラマンも同じように値段だけで見られているのだろうか。

 昔は私も機材は、出入りの機材屋さんから買っていた。相場より安いわけではない、むしろ割高だけど、電話一つですぐ持ってきてもらえるし、壊れたときなど代替えの機材を治るまで貸してくれたり、業界の裏話(どこがやばいとか)やら噂話、アシスタントの手配から、忙しい時は仕事の手伝いまでしてくれたりしてたので、いつもお願いしていた。これが、ネットでなんでも安く買えるようになると、いつの間にか足が遠のき、値段だけ見て買うようになってしまった。

 件の仕事斡旋のサイト、別のところにも登録だけしてみたけど、こちらはさらに酷くて、各々がポートフォリオを載せるページがあるのだけど、コマーシャルフォト系の分類なのに、その辺で撮ってきたストリートスナップ、おそらく友達かなんかのポートレイト(とも呼べない記念写真)や、うちで食べる朝食を撮ってみました、なんていうの載せていたりする方が案外多いので、心底びっくりした。もちろんここはすぐに撤退した。知り合いの印刷屋さんから、赤字でも受けて輪転回しておくほうが機械の調子もいいし、やらないと0だけど、これでお金も回るし無理でもやってる、と聞いたことがある。カメラマンも腕を鈍らせないためには、カットあたり500円と言われても仕事したほうが良いのだろうか。

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