見出し画像

アングル。

昔、リニューアルしたてのある会館の撮影に、2チームで行くことになった。一つは4x5でメインカットを、私がついたのは6x7で細かいところを拾っていく班。4x5班のカメラマンは少し年上の人だった。ライティングの事もあって、同じ場所で待っている時、その人に、俺は背が低いから皆と見えている世界が違う、おかしいなと思ったら遠慮なく言ってくれ、と言われた。確かにその方は身長140㎝台だけど、言われるまでそんなこと気に掛けたことも無かった。私は高くも低くもない、当時の平均くらいで周りの先輩や師匠も、同じくらいか、まあ昔にしたら普通より少し大きいかな、という程度。身長の差で見えているものが違う、というのは、言われてみればその通りなんだけど、ちょっとした驚きでした。

商品撮影でも、ボトルや瓶などは水平やや上。カバンとかは上面をどのくらい見せる必要があるかで、上がったり下りたりしますが、まあ斜めです。小さいタオルやハンカチなどは俯瞰でも撮影台を滑らない程度に斜めにしてやれば、他と同じようにできます。夏のお中元とか、冬のお歳暮なんかの詰合せ、箱モノは、真俯瞰。三脚だと一番高く出来るやつの足の下にサイコロをかませて持ち上げて、脚立の一番上に立ち、天井すれすれに頭をねじ込んで、なんてアクロバティックな姿勢で臨んでました。それでもかなり小さい物しか無理だったのですけど。カンボのカメラスタンド入れてからは、真俯瞰も三脚を使ってた頃より面倒ではないですが、あまり横にセリ出せないのでどうしてもサイズが限られます。とはいうものの、このスタンド、あるとかなり便利です。重いし値段もそこそこするけど、適当な中古に巡り合えたら導入をおすすめします。うちも廃業したスタジオの方から安く手に入れました。

そんなわけで、化粧箱に入った様々な商品、大きな絨毯やこたつの上掛け、毛布、ケット、バスタオルなんかは、カタログとかで色柄サイズ、比率など見せるのには真俯瞰が基本。これはなかなか面倒です。
絨毯は壁にくぎで打ち付けて撮影する、なんて方法も聞いたことがありますけど、真偽のほどは不明です。私のいたところでは2階の床や、キャットウォークから撮ってました。それに習って今の仕事場にも二階の床にキッチンの床下収納みたいな蓋を付けて、外すと俯瞰撮影ができるようにしてもらいました。おかげで、いろいろ真俯瞰の撮影がとても楽に。この真俯瞰撮影、当然カメラは二階でブツは一階。アシスタントがいれば上から指示を出してセットしてもらったり出来ますが、それでも日に何度も上がったり降りたり、もう足がパンパンです。テザーで一階から全て出来るようになるまでは、大変でした。
他にも、真上からのアングルが欲しいと言うモデル撮影や、長すぎて吊れなかった書家先生の掛け軸を撮ったり、作っといて良かったことばかり。それもこれも、2000年になって移ったところが、築80年の三階建て木造長屋の一角で、床を抜こうが、天井に穴をあけようが、どうにでも好きに使って良い、というところだったからです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?