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口に出して良いこと、悪いこと

有給を取得する日など休みの日の前日は、『明日休みだから、ここまでやろう。』と、休暇を取得する(稼働日数が減る)ことを前提として仕事のスケジュールを組む。

そんなとき上司から声をかけられた。
「みりさん、仕事順調だね。これもお願いしていいかな?」
「私、明日休暇なんですけど…。」と言ってみるものの
「みりさんなら大丈夫だよね。お願いね。」
ここまで言われると、まだまだ下っ端の私には断れるはずもなく、笑顔で了承する。

明日休暇を取得する自分のために、明後日出勤したときに慌てなくていいように、与えられた仕事をこなしていたはずなのに、それを余裕と捉えられて仕事がまわってくる…。

ふと、自分の目の前に座っているAさんを見る。

『あの人は、暇そうだなぁ。あの人に頼めばいいのに。』
これは、口にはださない。
お願いできないことは、分かっているからだ。

「Aさん、この仕事をお願いしたいんですけど…。」
 と、今までにもお願いしたことのある仕事をお願いしてみると
「これは、まだ1回しかやったことがないからできない!」と言われる。
「前回のメモやチェックリストなどありませんか?」と聞いてみるが、
「私、メモはとれません。」と返されるだけである。

そこへ上司は、いつものように
「もう一度、みりさんに教えてもらいながらやってみましょうか。」と笑顔で言う。

前に、上司に相談したことがある。
上司の返事は、こうだった。
「あの人は、(人生の)先輩だからね。たててあげないと。気持ちよく仕事してもらいたいから、環境を整えないとね。」

私は、反論したかった。

「先輩をたてる」ということに反論したかったわけではない。
特別な技術、高度な知識を持っていたり、勤勉であったりするのであれば、(人生の)先輩ですし、時にはたてることも大事だと思う。
しかし、Aさんは私の目から見て、そのような人だとは思えない。
だからこそ、「ただ先輩というだけで立てなければならないのか。」と。それがとても悔しかった。

Aさんは、何かあると思っていることをすぐに口に出す。本人曰く、「思ったことは、すぐに言ってしまわないといけない」らしい。
人に聞くときも「答えを教えなさい。」「aとbどっちなの。」と、答えさえわかれば「わかったから。」と、それ以上こちらの話を聞いてもらえない。
説明しているときも、メモをとっているわけでもないのに、話をしている人の方を向いてすらいない。
そしていつも仕事をしていようがなにをしていようが、お構いなしに話しかけてくる。
返事は常に、「はいはい。」

ある日、私は繁忙部署の応援に行くことになった。
私は、自分のキャパでこなすことができるか心配だったけれど、引き受けた。繁忙だから応援の要請がきたのであって、その応援要請を断ることはできない。しかし、自分の仕事をAさんにお願いすることもできない。
その状況を知った別の先輩からは
「思ってること言いなよー。」と言われた。

『言えるわけがない。』
思わず口にだすところだった。
「そうですね。また何かあったら相談させてください。」と、笑顔で言った。

私が思っていることを伝えると、Aさんが怒って仕事を放棄してしまう。
上司から言われても、「上司に言われる筋合いはありません。」と席を離れ聞く耳をもってもらえない。
誰かがAさんに注意したり間違いを指摘したりすると、「すみません。私はバカですから。」と自虐したり、怒り出して部署の雰囲気はピリつく。

だからなのかもしれない、上司はAさんの声をよく聞く。
そして、Aさんは自分の思っていることだけを主張し周囲の意見は聞かない。
私が声をあげても何も聞いてもらえない。口に出すと、あの人が怒りだし、部の雰囲気は最悪になる。

部署内での仕事の割振りがよく変更される。
上司が部署のマネジメントとして、変更するのは反対しない。むしろ上司の仕事だと思う。しかし、この変更はAさんの機嫌をとるために行われるのである。

もう何を口に出していいのかわからない。
私がわがままなのか、それとも仕事をする上で正当な主張なのか。

Aさんの機嫌をとる必要があるのか。

私にはわからない。

私は、仕事を任せてもらえるのは、周囲から信頼されているからだと考えている。
「この人なら任せても大丈夫だ。」「任せてみて、ミスしても自分がカバーする。」などと思ってもらえるから仕事を任せてもらえるのだと思っている。
だからこそ、その信頼に答えたいと思って、私は努力する。

Aさんより仕事を任せてもらえるのは、そういった努力を積み重ねたからであるからだと、自負している。

思っていることを口にすることが、すべて悪いことだと言いたいわけではない。誰かが言わなければならないことがあるだろう。実際、私も自分で言えなかったことを周囲の人から言ってもらえて助かったことも多い。

口に出さなければ思いは伝わらない。

口に出すことで、相手を傷つけることもできるし、元気づけることもできる。

言葉は、良くも悪くも一度口にしてしまうと武器になってしまう。

だからこそ口に出すときに、一度考えるべきではないだろうか。

今このタイミングでどうしても言わなければならないことか。
他に言い方はないだろうか。
自分が見えている以外のものや考えがないか。

口に出して良いこと、悪いこと
口に出すべきこと、秘めておくべきこと
とても難しいけれど、それを考えてほしい。

さぁ、大人になるとは、どういうことなのだろうか。

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