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倒産の相次ぐ昨今、「それでも介護保険サービス事業所を作りたい」方へ

もし、6年前であれば、諸手を挙げて賛成したでしょう。
もし、3年前であれば、それなりに賛成したでしょう。

これから、自分の(自分たちの)目指す介護保険サービス事業所を1から作りたいという方にお伝えします。

「やめたほうが、いい」

理由は以下の5つです。

・今後、小規模の事業所は淘汰される(国は大規模化を想定している)
・次期改正では、資産がモノを言う
・いずれ許認可制になる
・何よりも複雑化する法令についていくには、アドバイザーが必須(お金がかかる)
・ロボットやAIはもとより、少なくともパソコン、スマートフォンなどのテクノロジーが使いこなせなくては業務はできない、継続した学びが必須になる

介護保険サービス。
かつては、想いの強い人々が寄り集まって、小資金でも開業することができました。
ところが、そうはいかなくなりつつあるのが、この国の方策です。

東京商工リサーチの調査では
2018年上半期(1-6月)の老人福祉・介護事業倒産は45件です。
これは前年同期の40件を上回ります。
このペースで推移した場合、介護保険法施行(2000年)以降で年間最多であった2017年の111件を上回る可能性が高まっています。

誰もが、事業所の船出をした時は「自分たちが倒産するはずはない」と思っているでしょう。でも、これが現実です。理由の一例として。

・経営がうまくいかない
・運営が不適切で指定取り消し→報酬返還ができず倒産
・サービス依頼はくるものの人手不足で対応できない
・後継者育成ができない
・創立メンバーの意見の食い違いで決裂

船出後も様々な荒波は、事業者を襲い続けます。
ましてや3年毎にコロコロ変わる法令と報酬。加えて法令を遵守し、新たな法令もチェックし守らねばなりません。
居宅介護支援の場合、全てのサービスに精通していなければならず、利用者に説明できなければ、不信感を持たれ、即クビになりましょう。その評判は口コミで広がり、廃業です。負債はいくらになるのでしょうか?そもそも、廃業直前に関わっている利用者・家族・各サービス事業者に多大な迷惑をかけることになります。
訪問介護に至っては、ヘルパーさんの確保が最大の課題です。このご時世、誰が雨・雪・強風の中、自転車で利用者の「城」に入り、文句ばかり言われても耐えてサービス提供するでしょうか?ましてや特定事業所加算取得するための「職場環境等要件」を(2019年10月からは)複数取り組まねばなりません。

全ての介護事業所に共通なのは、何よりも研修です。誰が研修の講師をできるでしょうか?事業所内でできなければ、それなりの料金を支払って外注するしかありません。学びなき事業者は、衰退します。

現状でさえ、ハードルの高い状況です。
そして、
平成30年(2018年)12月20日 経済財政諮問会議で提出された
「新経済・財政再生計画 改革工程表2018 」によると、より一層厳しい事態になります。新規参入はおろか、現時点で運営している事業者にも痛烈なハンマーが下されます。ここから考察してみましょう。

・今後、小規模の事業所は淘汰される(国は大規模化を想定している)
介護の経営の大規模化・協働化により人材や資源を有効に活用する。
特定事業所加算を取得できない事業者は、大手に吸収される可能性があります。

こじんまりと地域に密着して、痒い所に手が届く介護

は、もはや幻想になりましょう。

・次期改正では、資産がモノを言う

上記文章には明確に「経営統合」と言う文言が入っています。
もしかすると不動産会社開業のように、保証協会に1000万円の営業保証金を納める......などと言う必要が生じるかもしれません。そうでなくとも、黒字経営で資産xxxx万円なければ指定取り消し、となるかもしれません。

そうならないためには、膨大な資金を持っている必要があります。現時点で金額はわからないけれど。
「お金がない人は、介護保険サービスを提供するな」
そんな時代がもうすぐ到来する可能性があります。

・いずれ許認可制になる
現在、介護サービス事業所は飽和状態であると思われます。特に都会ではそうでしょう。
例えば、大田区の場合。現時点で居宅介護支援は242件、訪問介護は225件です。
高齢者の人口は平成28年度には約16万3千人で、その10%がサービス利用と仮定すると、1.6万人となります。
これを居宅介護支援で割れば、1事業所66名程度。一見するとケアマネジャー2名で運営できそうですが、入れ替わりが激しい。高齢者は、状態変化が著しいことはご存知のことでしょう。
常に営業をかけねば、資金繰りは回らない状況は想像できます。
さらに営業の際に、アピールポイントができなければ、地域包括支援センターも病院も紹介しません。皆様のアピールポイントはなんでしょうか?
もう1つは、主任介護支援専門員が管理者であることです。
自治体の推薦がなければ、主任介護支援専門員にはなれません。そのためには自治体に尽くさなければなりません。その上で、更新もあります。
自治体の裁量で、主任介護支援専門員の数を焼成できる、と言うことは介護保険サービスの量も調整できる。これまでの地域密着型サービスに加えて、訪問・通所は事実上地域密着型と言ってもいい現状です。居宅も(事実上)「地域密着型」と言えましょう。
これは地方自治の拡大です。「このくらいの高齢者が、このくらいのサービスを利用するので、もうこのサービスはいらない」となると、開業申請しても撥ねられるでしょう。

・何よりも複雑化する法令についていくには、アドバイザーが必須(お金がかかる)
3年に1回の改正......と思っていてはいけません。今年も10月には介護報酬改定・区分支給基準限度額の変更などが控えています。「半年に1回」は変化するのです。定常ではありません。
通常業務を行いながら、公表される複雑な法令を読み込むことは、ほぼ無理です。
アドバイザー(有料。インターネットで検索したとしても、その時間は割かれます)から定期的に「かいつまんで」すべきことを学び続けないと。実地指導で「知らなかった」では済みません。確実に報酬返還となります。支払えますか?

・ロボットやAIはもとより、少なくともパソコン、スマートフォンなどのテクノロジーが使いこなせなくては業務はできない、継続した学びが必須になる

前述の経済財政諮問会議での工程表には

AIの実装に向けた取組の推進」と題し、取組事項として

人口減少の中にあって少ない人手で効率的に医療・介護・福祉サービスが提供できるよう、AIの実装に向けた取組の推進、ケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築、ロボット・IoT・AI・センサーの活用を図る。

つまり、人手不足なのでマシーンができることはさせて、補う
と言うことです。
これは、各種介護保険サービス事業所には多大な負担になります。タダで使わせるほど、気前のいい国家ではありません。
パソコンはもとより、スマホも使いこなし、各種アプリケーションを駆使して、アセスメントをするべく、相談援助技術やコミュニケーション技法を学び続け、
さらに、AIやロボットと関わる。

どれだけの時間が必要なのでしょう。

何よりも。時期報酬改定で居宅介護支援は「利用者負担」は確実に導入されます。
皆様のケアプランは自信を持って「売れる」ケアプランですか?

ここまで来て、
私が「やめたほうが、いい」と言ったことがご理解できたでしょう。

それでも
・小資金でも、やる
・許認可されるかわからないけれどエントリーはする
と言うのであれば、止めません。

どうしても介護を続けたいのであれば簡単です。
大手に就職して「社畜」になることです。
自分の思うようにはならないでしょう。それでも「どこかの誰か」は、感謝するかもしれません。
文句を言いながらも、精神に支障をきたしながらも、日々の努力をして、会社の理念に共感して、生活の糧を得ましょう。

ところで
私は「新たな介護」を模索しています。

そのアイデアの1つを次回以降、どこかで公表したいと思います。

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