ウォーリー(2008)
美しい心を持つごみ処理ロボット、ウォーリーが
過剰な豊かさへの警鐘を、愛と風刺たっぷりに鳴らす
さすがはピクサー、2007年に製作され、3度目のアカデミー長編アニメ賞に輝いた『レミーのおいしいレストラン』に続く本作も、愛らしくて楽しいアニメーションに仕上がっています。
しかし、ピュアなゴミ処理ロボット、ウォーリーを主人公にした本作は、現代的な豊かさを皮肉たっぷりに見つめた風刺喜劇としての素晴らしさが際立っています。
イヴとウォーリーが辿りついたのは人類が暮らす宇宙船でした。人工リゾート地のような内部は、すべてが自動化され、リモコン一つで何でもできる便利な世界。移動するのも座ったまま、好きなものを食べ、仕事もせず、ロボットに世話されて生活する人々は、起き上がるのも一苦労なほどの肥満体になり、無気力、ご都合主義、そしてコミュニケーションの希薄も増していました。そんな利便性に依存する人類を横目に、イヴを助けるウォーリーの奮闘が描かれます。
地球で見つけた小さな植物、ユーモア溢れるウォーリーの言動、〈イヴと手をつなぎたい〉というウォーリーの欲求、だらけきった人類の姿など、何気ないエピソードの数々が見事な伏線となったストーリーテリングは相変わらずよくできてきます。
物語の核になるのは、ウォーリーとイヴとの甘く切ないロマンスですが、恐るべき人類の未来像もまた強く印象に残るでしょう。
美しい心を持ち、物や他人に無垢な愛を注ぐウォーリーに、今我々が見習うべきことはとても多いです。
本作もアカデミー長編アニメ賞を受賞しました。
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