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グリーンマイル(1999)

映像化して初めて伝わる物語の素晴らしさ
奇跡を信じる心をよみがえらせてくれる

本作を観て、人間の持つ残酷さに驚き、あきれ、おののき、胸が締めつけられました。と同時に、神が生み出す奇跡を信じる心を大切にしたいと痛切に感じました。

『グリーンマイル』は、1996年に分冊形式で出版されたスティーブン・キングの全6巻に及ぶ長編小説。優れたストーリー・テラーをもってしても、膨大なセンテンスを要した原作は、シリアスな〈人間の真実〉を寓話的に描いた力作で、絶賛の声をもって迎えられました。

この物語には、癒しの力を持つ神の申し子が登場しますが、人間から動物まで、生きるものすべてを病気や死の苦しみから救える男の存在はまさにファンタジー、ミラクルの世界です。でも、その奇跡も残酷に見えてしまいます。

なぜなら奇跡が起こる舞台は、死の空気が重く張りつめた死刑囚官房、そして神の申し子は死刑囚なのだから。

人間の心の闇に潜む恐怖を書き続けるキングの最高傑作を、同じくキング原作の刑務所を舞台にしたヒューマンドラマ『ショーシャンクの空に』で鮮烈なデビューを飾ったフランク・ダラボン監督が1999年に映画化。最高の映像をもって具現化した、見応えある作品です。

【ストーリー】
1935年、大恐慌最中のジョージア州、コールド・マウンテン刑務所に身長2メートルの黒人の大男が、傍らにいる心無い新入りの看守パーシー(ダグ・ハッチソン)の「デッドマン(死刑囚)・ウォーキング」という嘲りの言葉を浴びながら送還されてきました。
男の名はジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)。幼い双子の姉妹を殺した罪でした。
しかし、奴隷として連れてこられた文字も書けない、物静かな男に「果たしてそんな無惨な殺人ができるのか?」と懐疑的な主任看守ポール(トム・ハンクス)の目の前で、やがてコーフィが奇跡を起こします。

物語はポールが過去に起こった運命的な出来事を回想する形で進行します。

死をもって人を殺めた罪を償う死刑囚と、彼らにせめて「心安らかな死を」と願い、任務を全うする看守たちとの触れ合いを、何の変哲もないエピソードにユーモアを交えて描く序盤では、巧みなキャラクター造形に引き込まれます。

そして中盤、刑務所で悲惨な事件が起こります。ある死刑囚の死刑執行シーンで、人間が持つ残酷性が嵐のように吹き荒れた後、光り輝く奇跡が訪れる寓話的なエピソードから、人間の真実を浮き彫りにする怒濤のエンディングへの筋運びの上手さにうならされます。

さらにリアリティとファンタジーが交錯した映像は相当のインパクトを持ち、必ずや感動以上のものを与えてくれるでしょう。

ダラボン監督はかつてテレビ版『ヤング・インディの冒険』のシナリオを書いていたことから、ジョージ・ルーカスの映像マジックを目の当たりにしており、特殊視覚効果にも精通しています。

コーフィが奇跡を生み出すシーンだけでなく、至るところにILMの特殊視覚効果が使われ、死という壮大なテーマを寓話的なストーリーに昇華させています。

撮影は『スター・ウォーズ エピソード1』のデヴィッド・タッターソル。プロダクション・デザインは2度のアカデミー賞に輝くテレンス・マーシュ。奇跡の申し子コーフィに扮したマイケル・クラーク・ダンカンは、ゴールデン・グローブ、アカデミー両賞で助演男優賞を受賞する熱演を見せています。

映像化して初めて伝わる素晴らしさもあることが再認識させられる作品です。

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