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レスラー(2008)

どん底に落ちても、自分らしく生きる!
ミッキー・ロークの鮮やかな復活が深い感動を呼ぶ

1980年代、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『ナインハーフ』などで瞬く間にスターダムにのし上がったミッキー・ローク。少年のような甘さと、落ちついた大人の渋みを兼ね備えた風貌はハンサムと一口ではまとめられない、不思議な魅力がありました。

当時、女子高生だった私や友人も、ミッキー・ロークの妖しい魅力に取りつかれ、ずいぶん盛り上がったものです。残念ながら『ナインハーフ』はR指定で、女子高生は映画館に入ることができなかったのですが、私にとって、ミッキー・ロークと言えば、ちょっと背伸びをしたい年ごろだった高校時代の懐かしい思い出になっています。

しかし、なぜかプロボクサーに転向したミッキー・ロークは悪名高いネコパンチを繰り出した後、嘲笑の対象となり、俳優としても長らく低迷することになってしまいました。

栄光からどん底へ、奔放な生き方ゆえに20年余り辛酸をなめたロークの半生。その人生経験を糧にしたロークは本作で見事な復活を果たしました!

【ストーリー】
年齢的に盛りの過ぎたプロレスラー、ランディ(ミッキー・ローク)はかつて人気プロレスラーとして名を馳せていましたが、20年経た今は、どさ廻りの興行しか活躍の場はありませんでした。
トレーラーでの独り暮らしでアルバイトもするなど、家族も金も栄光もない生活。そんな虚しい境遇を黙々と受け入れ、ド派手な流血パフォーマンスを繰り広げる落ち目のレスラー、ランディの姿が痛々しい。
試合中に心臓発作を起したランディは引退を決めます。人生をやり直すために、ストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)に愛を告白し、疎遠だった娘ステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)との絆を取り戻そうとしますが……。

映画公開時のロークは56歳。昔のスマートな面影が見事に無くなってしまったことに驚かされましたが、過去を投影させたような自虐的な役柄を引き受け、とことんみじめなランディをひたむきに演じるロークの姿に心を揺さぶられます。

愛も家族もレスラーのキャリアも失ったランディが、第2の人生にかける姿を淡々と描いた本作は、ロークの鮮やかな復活に加え、ナチュラルなストーリー展開が深い感動を呼びます。

思い通りに行かない現実をどう生きるか。ランディの生き様は壮絶で真似できませんが、自分らしく生きる勇気を与えてくれます。

本作はベネチア国際映画祭グランプリを受賞。ロークは英国アカデミー賞主演男優賞とゴールデングローブ賞主演男優賞 (ドラマ部門) に輝きました。

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