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輝く夜明けに向かって(2006)

苦難の歴史を風化させてはならない
自由の戦士の半生をとおして伝えるアパルトヘイトの真実

1948年から1991年まで、南アフリカで行なわれた人種隔離政策〈アパルトヘイト〉。いわれなき迫害を受けた黒人たちには、人生を狂わされた人々も多いでしょう。

黒人にとっては、「自由の戦士」とたたえられるパトリック・チャムーソもそのひとり。自由を痛切に求め、反アパルトヘイト闘争に身を投じたチャムーソの波乱の半生を、白人の暴挙が生んだアパルトヘイトの実態とともに描き出します。

【ストーリー】
1980年、南アフリカ北部の炭田地帯。チャムーソ(デレク・ルーク)は、妻と2人の子供と暮らす普通の男でしたが、勤務していたセクンダ石油精油所が反体制勢力に攻撃されたことからテロリストの共犯容疑をかけられてしまいます。
テロリストの一掃を急ぐ公安部テロ対策班のニック・フォス大佐(ティム・ロビンス)はチャムーソに自白を強要、拷問はチャムーソの妻にも及び、ついにチャムーソは無実の罪を自白してしまいます。

この事件を契機に、チャムーソが反政府組織アフリカ民族会議(ANC)に入り、本当にセクンダ石油精油所に爆破工作を仕掛けるテロリストになってしまうのは皮肉な運命と言わざるを得ません。

普通の男を闘争家へと変えたアパルトヘイトとは何だったのでしょうか。チャムーソだけでなく、彼を苦しめたニック・フォスの人生をも描く構成が巧みで、アパルトヘイトが黒人と白人の区別なく、南アフリカに住む人すべてを絶望の渦に巻き込み、彼らの人生や人間性を狂わせてしまったことを鮮明に伝えます。
 
実際にANCの幹部だったジョー・スロヴォの娘ショーン・スロヴォが脚本を手掛け、アパルヘイトの真実を伝えるために映画化を切望しました。

また、現在の姿を伝えるためにチャムーソも出演するなど、苦難の時代を生き抜き、そしていつまでも歴史を風化させまいと尽力する人々の思いに応えるためにもぜひ多くの人に見て欲しい作品です。

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