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Sci-Fiプロトタイピングを活用し、ATOUNが見出した未来とは

先日、パワードウェアを展開するロボティクスファーム ATOUNによる『10年後、パワードウェアは技能やスキルを「ダウンロードして着るもの」に変える―』と題したビジョン発表会が開催されました。
PARTYは、ATOUNの長期に渡るブランディングを担当させていただいています。そこで紹介された「Sci-Fiプロトタイピング」という手法とその可能性について、ATOUN代表 藤本弘道さんにインタビューさせていただきました。

そもそも、Sci-Fiプロトタイピングって?

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Sci-Fi(サイファイ)= SF のこと。

Sci-Fiプロトタイピングは、SF作家により描かれた物語を、企業のビジョンやミッションの策定、新規事業の創出、技術ロードマップの策定などに生かす手法です。

アマゾンやグーグルといった大手テクノロジー企業の創業者たちはSF作品に多大な影響を受け、事業や製品を生み出してきました。彼/彼女らの「妄想力」を体系化し、民主化したのが「Sci-Fiプロトタイピング」の手法とも言えます。米国西海岸では「Sci-Fiプロトタイピング」を専門とするコンサルティング会社も登場しており、いま注目を集めている手法のひとつなんです。

”着るロボット”パワードウェアを開発するロボティクスファームであるATOUN。
Sci-Fiプロトタイピングを用いて、10年後のビジョン設定とプロダクトの開発ロードマップ策定に挑戦しました。

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ATOUN MODEL Y
腰の動きをセンサーがとらえ、パワフルなモーターの力で重量物を持ったときにかかる腰部への負担を
軽減する着るロボット。
すでに物流・建設・農業などの幅広い現場で実用化されている。

6/3に開催された発表会の内容や具体的なプロセスについては、藤本さんのnoteでも詳細が紹介されています。


ATOUN代表 藤本広道さんインタビュー

ー今回、Sci-Fiプロトタイピングを活用した経緯を教えてください。

もともと弊社には、創業当時から近い発想の文化のようなものはあったんです。ロボットといえば、やっぱりSFですから。社長である私を含めて、SF好きの社員が集まって、そこにSF作家やクリエイターがまじったりしつつ、あれこれ未来を妄想して、どうやってそれを実現しようかと議論しながら、プロトタイプ製作に取り組んだりしていました。
でも文化ですから、それこそ習慣みたいなもので、体系立ててはいなかったんですね。PARTYさんには、ずっとパートナーとしてブランディングの支援をしていただいてきたのですが、今回、ビジョンを策定するにあたって、伊藤直樹さんから「その発想の文化はSci-Fiプロタイピングではないか」と指摘いただいて、すごく腑に落ちました。で、せっかくなら、意識的に体系にのっとってやらせてもらおう、と思ったんです。


ー実際にSF作家とストーリーを描いたり、ヴィジュアライズしたりしたことで、生まれた価値や発見はありますか?

技術的な側面から立てた仮説や妄想が、SFストーリーとして描かれて、絵になると、やっぱりイメージに奥行きが出るし、とらえかたが具体的になります。プロダクトがある未来の風景を“見ながら”考えることができますから、それまで知ってはいたけど、価値に気づけていなかったものを発見できたりもしました。今回なら、私たちのプロダクトが親子の関係に貢献できるとわかったこともそうだし、デザインの面でもいろんなヒントをもらいました。

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SFストーリーとして描かれたのは、2030年の未来の物語。
ATOUN創業まもなくから未来を描く作業をサポートいただいている映像作家の吾奏伸さん、
今回Sci-Fiプロトタイピング実施をきっかけに新たにご縁を持ったSF作家の樋口恭介さん、
イラストレーターのよー清水さんと一緒にSci-Fiストーリーの具現化を行った。


ーSci-Fiプロトタイピングを、自社だけでなく、PARTYやSF作家、イラストレーターと協業したことで得られた気付きはありますか?

開発者の多くは、ユーザーの生活を思い浮かべて、そこにあるニーズに応えようとプロダクトを開発します。そのせいで視野がせまくなってしまうことがよくあるので、私たちも気をつけているのですが、だからといって、やみくもに外部の人たちをまじえると的はずれな発想になってしまう。でも、Sci-Fiプロトタイピングだと、アウトプットがストーリーであるおかげで、そこが担保されると感じました。未来への妄想ではあるのだけど、人の生活を描こうとするわけですから、最後のところではちゃんとしています。いろんな人の知恵を借りつつ、「的を射た破壊」が起こせるんだな、と(笑)。


ーSci-Fiプロトタイピングのアプローチのユニークなところとして、フォアキャストではなく、バックキャストによる発想があります。実際にやってみて、この発想についてどのように感じましたか?

バックキャスト発想の最大の魅力は、やっぱりイノベーションを起こしやすくなることじゃないでしょうか。よくいわれるようにイノベーションは、ロジックとか事実の積み上げではなく、飛躍から生まれるわけですが、その飛躍がなかなかできません。でも、未来から逆算すれば、飛躍したと感じるまもなく飛躍できますよね。しかもSci-Fiプロトタイピングの場合は、立体的なイメージからのバックキャストですから、とらえかたも多様で、発想も広がりやすい。現状にしばられずに、本当に新しい価値を生み出すには、すごく有効な手段だと思います。

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ー2030年の目標がはっきりとしたことで、変わったことはありますか?

発表してまもないので、まだ社内にそこまで目立った変化があったというわけではありませんが、目指すところがはっきりしたことで結束が強まったような気はします。しかもそれをストーリーとして共有できているおかげで、前提を飛ばしてテンポよく議論できるし、一人ひとりがやるべきことを自分で見つけやすくなってきているような雰囲気もあります。
でも、いちばん大きいのは、外の人たちからの理解が深まったことじゃないでしょうか。これまでも弊社に興味をもってくれる人はたくさんいましたが、未来像を描いたことで、おもしろがってくれたり、応援してくれたりする人たちが増えた気がします。わかってもらえている感じがしますね。


そんなATOUNがSci-Fiプロトタイピングを通して、2030年以降の「科幻」として目指すものは「フリーアビリティ社会」。フリーアビリティ社会とは、生来の身体的能力を自由に拡張して動き回れる社会のこと。

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SciFiプロトタイピングをすること=会社の今後のあり⽅を考えること であることであり、ATOUNはSci-Fiからはじまった会社、ともいえます。発表された内容は、メディアでも多数紹介されていますので、ぜひご覧ください。

PC Watch|着るロボットの10年後「ATOUN Vision 2030」

AXIS|ロボティクスファーム ATOUNとPARTYが着用型ロボット「パワードウェア」のある未来の体験を考案


WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所 企業向けウェビナーのお知らせ

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Sci-Fiの可能性とニーズに着目し、PARTYは『WIRED』日本版ととともに「WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所」を先日設立いたしました。Sci-Fiがもつ大胆かつ精緻な想像力を用いて未来を構想するコンサルティングサービスを提供しています。

WIRED.JP 特集記事|
いまこそ「SF的想像力」が求められている:『WIRED』日本版とクリエイティヴ集団「PARTY」、WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所を設立

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未来に対する仮説をサイエンスフィクションとして描き出し、そこからバックキャスティングによって、プロダクトのあるべき姿を描く。未来の予測ではなく、未来から逆算してつくることによって、非連続性の高い発想が可能となり、イノベーションを起こしやすくします。

WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所の取り組みをよりご理解いただくための、企業向けのウェビナーを開催いたします。(研究所の主要メンバーによる独自メソッドの概略説明、質疑応答などを予定)

日時:
- 7月1日(水) 16:00~17:00
- 7月3日(金) 19:00~20:00
(2枠とも、同一内容です)

出演:
『WIRED』日本版 編集長 松島倫明
『WIRED』日本版 副編集長 小谷知也
「PARTY」ファウンダー / クリエイティブディレクター 伊藤直樹

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参加方法:
下記フォームよりお申し込みいただけましたら、ZOOMのウェビナーURLとパスワードをお送りいたします。
・参加枠数につきましては限りがございますことを予めご了承ください。
・競合サービス取り扱い企業様のお申込はお断りさせていただく場合がございます。
https://forms.gle/6VDknock7yofbsmp6


PARTYは、Sci-Fiのチカラも携えて、未来の体験を社会実装していきます。


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