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眼窩骨折(目の周りの骨折)②眼窩の解剖

注:自分自身の学習と理解によるNOTEです。誤りがある可能性があるため、正書での確認をお願いします。

■眼窩の解剖

 眼窩は、上壁(前頭骨と蝶形骨小翼)、内壁(篩骨、涙骨と上顎骨前頭突起)、外壁(蝶形骨大翼と頬骨)、下壁(上顎骨と口蓋骨)から構成されます。視神経管、上眼窩裂、下眼窩裂、眼窩下管、眼窩上孔、前頭切痕、前篩骨孔、後篩骨孔が開口して神経や血管の通り道となっています。

この中でも眼窩骨折の手術を経験していくにあたり、最初に悩むのは眼窩底骨折における眼窩下管の位置と構造及び眼窩下神経の走行と骨片との位置関係です。

 

眼窩下神経は三叉神経第二枝である上顎神経より分岐して下眼窩裂より眼窩内に入ります。その後、眼窩下壁の眼窩下溝を走行して眼窩下管に入る。眼窩下管は眼窩下孔として頬部前面に開口しています。

 

実際の眼窩底骨折の手術の際には、脱出した眼窩内容物と眼窩底の骨及び上顎洞粘膜が眼窩下神経を巻き込んで存在しているため、この中から眼窩下神経を同定して剥離する必要があります。受傷後、時間が経過した骨折の場合は瘢痕による癒着が強くなっていることが多く剥離が難しいため、できるだけ神経を損傷しないように正常な神経の走行と骨片の位置関係をイメージしつつ、組織内から眼窩下神経を同定して剥離する必要があります。

 

 また、眼窩底骨折の手術に不慣れな場合には、眼球や視神経損傷を恐れるあまり脱出した組織の挙上が不十分なまま骨の再建が行われることがあります。この原因は解剖学的な知識が不十分なため、どの深さまで手術器具を安全に挿入することができるかを術者が把握できていないことによることが多いです。

術前にCTを用いて安全に再建手術ができる距離を確認することはもちろん重要ですが、実際の術野においては狭い視野に加えて軟部組織の張り出しや出血などがあり距離感をつかむのは非常に難しい。そのため、メジャー等を用いた距離の測定だけでは不十分です。従って、なんらかの解剖学的な指標が必要となります。眼窩底骨折の場合、手術中に安全に手術ができる深さをつかむ手がかりになるのは上顎洞後端です。眼窩底骨折では、眼窩内と上顎洞が交通している状態です。そのため、この骨折部分からエレバ等の剥離子を眼球接線方向に滑らせるように上顎洞内に挿入して上顎洞の後壁を確認することで、眼窩底の奥行きを安全に確認することができます。

 

内側壁骨折の場合は、内側壁に沿って眼窩深部に入っていくと視神経に到達するため、より恐怖心がでます。内側壁の場合は、篩骨蜂巣が上顎洞のように単一の大きな空洞ではないので眼窩底と同様の方法では骨折の後端を確認するのは困難です。しかし、眼窩底と違い骨折部分に眼窩下神経のような構造物がないため、脱出しているもののほとんどが眼窩内容物と考えることができます。そのため、前方で骨折縁を確認して丁寧に脱出した組織の剥離を行うことにより骨折の最深部を確認することが可能です。眼窩内側壁へのアプローチの際には、前涙嚢稜から視神経孔までの間の前頭骨篩骨縫合近傍に前篩骨孔及び後篩骨孔が開口しており、各々同名の動静脈及び神経が通っています。これらは解剖学的指標となるとともに、出血源となる可能性があり、狭い視野での手術を求められる眼窩内側壁骨折の手術では同動静脈の適切な止血処理が必要となります。

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