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実は、芽胞の性質を逆手に取って利用した納豆が凄い!

幾度となくこのコラムでも触れてきました「芽胞」ですが、クロストリジウム属などの生き残りのための大事な戦略であることはすでにご承知かと思います。

その戦略とは、増殖が困難な環境下になると、殻を被り(硬い皮膜で自らを包み込む)呼吸などの代謝はほとんど停止した状態にします。そして、栄養や環境が好転してくると水分を取り入れ、細胞質から新たな栄養細胞が出現し、再び分裂増殖を始めるというメカニズムを使ったものです。

このクロストリジウムの中でも枯草菌は、病原性こそありませんが、味噌作りにおいては汚染菌であり、どうしても原材料に付着してくるため芽胞への対処が重要です。なぜなら、芽胞状態であれば、多少の熱処理では死なないからです。

よって、120℃にできる圧力釜で滅菌して芽胞に対処する味噌蔵が多いようです。

そして、興味深いのは、この芽胞の性質を逆手に取った発酵食品が納豆なのです。

ここでは、プラスチック容器に入れた大豆に納豆菌を振りかける納豆ではなく、昔ながらの藁に包まれた納豆をイメージしていただきましょう。通常は、藁に付着している雑菌処理のため熱湯消毒しますが、枯草菌(納豆菌)は芽胞を形成しているため、多少の熱湯消毒では死にません。すなわち納豆菌だけ都合よく生き残らせるというわけです。

この藁で茹でた大豆を包み、38℃~42℃で16~24時間発酵させることで納豆が出来上がります。その後5℃以下で冷蔵し、納豆菌を休眠させてから出荷されるのです。(「進化している発酵食品学」より引用)

もちろん、昔の人は細菌が持つ芽胞という性質を知る由もないですから、経験則から納豆をつくっていたのでしょう。そういう意味では、中国で2000年前に紹興酒のような並行複発酵させた醸造酒が生まれていることも、経験則からの成せる技なのでしょうけど。

芽胞と言う、非常にユニークな特性ですが、先人たちはこの芽胞の性質を科学的に解明することもなく、生活の知恵として生かしてきたんですね。

腸内細菌もそうですが、人もまんざら捨てたものではありませんね!?(笑)