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糖のトランスポーターとはいったい何者!?

昨日のコラムで、ビフィドバクテリウム・ロンガムと言うビフィズス菌の種の場合、マウスの腸内にビフィドバクテリウム・ロンガムを定着させO157を感染させても死ななかったのに、別のビフィズス菌の種であるビフィドバクテリウム・アドレセンティスを定着させると死に至ったということから、同じビフィズス菌でも種により、その働きはまったく別になることに触れました。

そして、この違いは、どうやら糖のトランスポーターの違いにあるようなのですが、このトランスポーターとはいったい何なのでしょうか?

このトランスポーターとは、たんぱく質で出来た物質の取り込み口のことを指します。細胞膜などの生体膜は脂質でできています。脂溶性のものは膜に溶け込むため膜を通過することができますが、脂溶性でないものは膜を通過できないのです。そのため栄養素を吸収するためには、トランスポーターを介する必要があります。

では、そもそも、糖質はどのように体内に取り入れられているのでしょうか?

糖質は膜消化によって体内に取り込みやすい単糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース)まで分解されると、直ちに小腸の絨毛上皮細胞で吸収し、毛細血管へ送られ、門脈を経て肝臓へ行きます。

糖類は容易に取り込みが出来るよう、能動輸送されているのです。

ここでいう能動輸送とは、トランスポーターを必要とし、エネルギーを用いて細胞内へ積極的に栄養素を取り込む方式です。受動輸送より吸収速度が速く、濃度の働きに逆らって濃度の低い方から高い方へ移動が可能です。(受動輸送とは、濃度の濃い方から薄い方へ移動するため、エネルギーは必要ありません。吸収される物質によってトランスポーターの不要・必要が異なります。)

話しが難しく長くなりましたが、ビフィドバクテリウム・ロンガムは、ある種の糖を摂り入れられるトランスポーターを持っていたと言うことになります。そして、その糖をエネルギー源として利用し、最終的には酢酸を生成、その酢酸が腸管の細胞に働き抗炎症作用を示しました。その結果、腸管のバリア機能が高まり、O157が感染しても毒素が体内に侵入することが出来なかったというメカニズムです。

反対にビフィドバクテリウム・アドレセンティスはこのトランスポーターを持っていなかったため、酢酸を十分作り出せず、腸管の炎症を抑えられなかったため、体内への毒素の侵入を許してしまう結果となりました。

人の生体系の中で、腸内細菌が多大な影響を及ぼしている。時にはその人の生死を分ける働きをしている。本当に奥が深いです。