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独身インザハウス!!

ラッパーが良く使う「in the house」とか「in the building」という言葉は、そのままお家にいますという意味ではなく「俺が来たぜ!」とか「ここにいるぜ!」という意味のスラングらしい。最高にいかしたラッパーがここにいるぜ、というように使うのだろう。

私はヒップホップに明るくないが、「ここにいるぜ!」とは最近よく思う。クラブではなく、家で思う。「インザハウス!」と叫びたいが、この場合スラングの意味と本来の家の意味でダブルミーニングになるのだろうか。

一人暮らしを始めて人と話す時間が極端に減った。新天地のために右も左もわからず、内向的な私は恋人はおろか友人すらもなかなかできない。働き、帰宅し、自炊し、寝て、また働く。このサイクルが全く苦ではない自分がいる。元々一人でいるのは結構好きで、出不精なので出かけることもなるべく避けているような人間だった。

しかし、不意に訪れる不安がある。このまま、この生活を続けていたら一生抜け出せないような輪廻に足を取られ同じ生活を送り続けたまま死ぬのではないかという不安だ。

仕方なしに、飲みに行ったり出かけたりもしてみる。しかしせっかくの休みに何をしているのだ自分は、という気分がどうしても抜けずに全く楽しめない。自分で書いていても厄介な性格だと思う。

20代半ばではあるが、自分は一生独身なのではないかと思う。まだ若いということもあるが、誰かと生活する自分を全く想像できない。一人暮らしが楽しいわけではないが、自分に合っていると感じる。

ところが、先日ある記事を見て気が変わった。結婚したい、というかしなければならないと思った。

「いのち短し、恋せぬおとこ」というヤフーニュースの記事である。独身研究家なる怪しい職業の男が書いたようだが、なかなかうまいことを言うではないかと悔しい気持ちになる。

肝心の記事の内容だが、未婚男性の平均寿命は約67歳で男性の平均寿命である82歳を15歳も下回るというものであった。要は、男は結婚しないと15歳早く死ぬということらしい。

何でだよ、と思う。普通にまじめに仕事一筋で恋愛に目もくれず働いて、いざ定年になったら7年で死ぬってあんまりじゃないですか。結婚に寿命15年の価値があるとは思わなかった。

私の両親はかなり頻繁に喧嘩していたけど、あれは寿命を縮めることにはならないのだろうか。それよりも夫婦間の愛情や子どもへの愛情が寿命を延ばすのだろうか。

いずれにせよ、結婚ごときで15年も長く生きられるのなら結婚してやろうじゃねえか。

え、でも、しかし、どうやって?

週末に作り置き用の豚キムチを作りながら「独身男がここにいるけどな。誰か僕に15年の寿命と幸せを与えてくれませんか。」とつぶやいてみる。

言葉はしばらく空気中にとどまっていたが、すぐに煙と共に換気扇に吸い込まれていった。


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