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【自主性・主体性ある会社・組織・チームの作り方】 第1回 マネジメントをどう考えるのか?

この記事では、中小企業(特に成長を目指すベンチャー企業)として、マネジメント・組織作りをどのように行っていくべきなのかを、私の実体験と実践内容をもとに考えていきたいと思います。

売上的な成長、それにともなう従業員数の増加、そして従業員数が増えることで経営者はマネジメントコストが大きくなり、本来的には商品・サービス設計⇒販売に注力したいにもかかわらず、社内の内向きな問題に時間と労力を割かれるのが現実です。

経営者の本音としては、業務・タスクを割り振るために雇ったはずの従業員が、従業員数の増加にともなってむしろ、そのマネジメントコストが莫大になり、人件費というコストは増えるが、会社全体としての付加価値はむしろ低下し、経営者はより忙しくなるだけで、中長期的な視野を持てなくなるというジレンマを抱えるわけです。

経営者であれば誰しもが経験したことがある、このジレンマ・悪循環を断ち切り、どのようにして【自主性・主体性ある会社・組織・チーム】を作っていくのかが、この記事の目指すところです。

なお、私は東京と沖縄の2ヵ所、グループ全体で3社、全従業員数が約40名の経営者であり、人材コンサルタントでも組織論の学者でもありませんので、私が経験し、現時点で実践している内容をベースに考え方を公開していきます。

会社・組織作りに「正解」も「終わり」もありませんから、あくまでも現時点での当社の考え・取組みとご理解ください。


■経営者の勘違い

私は新卒で東京国税局(公務員)、転職したのが光通信(東証一部)というゴリゴリの営業会社、その後に起業しましたので、サラリーマン時代はあらゆる意味で「ヒエラルキー(階層)組織」「トップダウン」しか経験したことがなく、自身の会社も経営者として、同じマネジメント方法しかないと思い込んでいました。

いわば、マネジメントなるものが「管理」「コントロール」であり、会社・事業運営とは、従業員に経営者(私)の言ったとおりにさせることである、という勘違いをしていたわけです。

従業員がミス・失敗をすれば、管理を強め激しく叱責する、場合によっては罰則・ペナルティを作り、それを適用するわけです。

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しかし、売上は伸び事業は大きくなるものの、従業員を採用をしてもすぐに辞めていくことから、本来的な成長は全く実現できていないことに気付きます。

私を含めた、よくある経営者の勘違いは、「マネジメント=従業員を動かす」ことだと信じていることで、本当の(経営者による)マネジメントとは、従業員が【自ら動く環境を整える】ことなのです。
これが、この記事内で定義する「自主性・主体性ある」状態ということです。


■社長に採用権限がない会社にした

とはいえ、従業員全員に自主性・主体性がある会社など、一朝一夕に作れるわけもありません。特に業歴が長く、(良い意味でも悪い意味でも)カルチャーが定着している会社は、現状を変えるのは想像以上に大変なことです。

私は8年前、経営者として大きな決断をしました。
社長である私自身に、従業員の採用権限をなくしたのです。

今でも、社長直轄となる管理(バックオフィス)系や役員クラスの採用以外は、一切の採用面接もしなければ、採用の可否判断を行っていません。
社員が「採用します」と言えば、私はそれに従うだけです。

もちろん、この決断には背景があります。
この変更を実施する前までは、アルバイトまで含めた全ての採用を私(社長)が行っていたわけですが、このような状況でした。

私が採用面接・判断する

採用者を現場に送り込む

従業員は無責任に文句を言う
(「あいつはツカえない」など)

現場が忙しいから、それを軽減・平準化するためにコストと労力をかけて採用したはずなのに、なぜか現場の不平・不満が増えるわけです。

正直なところ、社長である私からすれば「やってられない」という心境です。
ここで私にスイッチが入りました。

「文句を言うなら自分たちで採用すればいい」

今でも忘れませんが、私に採用権限をなくし、社員だけで採用判断をした第一号採用者は私の秘書でした。中途採用だったのですが職歴もアルバイトくらいで、まったくもって失礼ながら、驚くほどデキない秘書でした。

これで困るのは現場の社員たち自身です。なぜなら、秘書がまったくツカえないため、結局私のスケジュール管理・資料作成など、自分たちがやらなければならないからです。

その秘書は2ヵ月ほどで退職したのですが、驚くことに、採用を決めた社員たちが私に謝りに来たわけです。

「あの秘書を採用した私たちが間違っていました」 と。

このように、経営者が良かれと思って自身で判断・行動したことも、従業員にとっては不満の種になることが多いわけで、まったくの逆・裏返しとして、従業員自身に権限を渡せば【当事者意識】を持つことになります。


■トップダウンかボトムアップか

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マネジメント論を考えると間違いなく出てくる議論として、「トップダウンが良いのか?」「ボトムアップが正しいのか?」という論点があります。

私はこの議論にあまり意味を感じません。
創業間もない頃にボトムアップなど不可能で、むしろ経営者の強烈なトップダウンが必要とされるはずです。

一方で、会社・組織が大きくなってくると、権限移譲を含めたボトムアップ式に移行してくるのが普通の流れかとは思いますが、だからといって、経営者のトップダウンが不要ではないはずです。

うまくいっている(と思われる)有名企業には、ソフトバンク・ユニクロ・日本電産などが挙げられますが、どの会社も強烈な個性ある経営者がトップダウン経営を行っています。

ここで考えるべきは、トップダウンかボトムアップという二択ではなく、単純に「役割の違い」だと認識すべきでしょう。

経営者は、経営者にしかできないことをやるべきであり、マネジメントという領域においては、【従業員が自ら動く環境を整える】という役割を果たすべきなのです。

経営者あるあるとして、自ら率先して動く社長ほど「うちの社員は指示待ちだ」「俺の方が営業力があって売上をあげられる」と言いがちですが、これはむしろ経営者が望む方向を自らが阻害しているだけでしょう。

経営者が自ら営業し、売上を上げれば上げるほど、従業員は「じゃあ、あなた(経営者)が頑張ればいいよね」としか思いませんし、従業員が何をやっても細かく口出しされるのであれば、従業員に自主性・主体性など生まれるはずがありません


■権限移譲することと放置は違う

上述のとおり、確かに私は従業員の採用権限を手放したわけで、そういう意味ではトップダウンではなくボトムアップのように見えるはずです。

ただ、私は採用に無関心なのではなく、むしろ「会社とは人がすべて」と考えていますので、採用を含めた組織作りを大事にしています(だからこそ、こういう内容の記事を書いているわけです)。

では、なぜ採用権限を手放したのかというと、繰り返しますが「経営者は、経営者にしかできないことをやるべき」なのであって、あえて権限移譲することにより、全従業員に当事者意識を植え付け、自主性・主体性ある会社・組織・チームを作りたいからです。

私には採用権限はありませんが、その一方で、「採用基準の明確化(ブラッシュアップ)」「採用のやり方(コストを含む)」「採用応募者に見せる動画に出ること」など、常に私(経営者)にしかできないことに関わり続けています。

単に「権限移譲すればいい」という論調を見かけますが、権限移譲と放置は違うと考えなければ、自主性・主体性ある会社・組織を作っていくことはできません。


■最後に・・・

ここまで、経営者として「マネジメントをどう考えるのか?」を考察してきました。

組織運営がうまくいっていない経営者に限って、従業員の自主性・主体性を阻害・ジャマをしている(経営者自身に問題がある)ケースがほとんどでしょう。

私も以前は、「すべて自分でやらなければ気が済まない」経営者の典型だったわけですが、自主性・主体性ある会社にするため、自らの考え方を大きく転換してきました。価値観・考え方のパラダイムシフトです。

次回は、私(当社)がどのような組織形態を目指しているのか、昨今流行りの「ティール組織」という側面から考えてみたいと思います。


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