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【いつ値引きすべきか?】プライシング(値決め・価格決定)のマーケティング

「値決めは経営である」

これは、京セラ創業者でJAL再興の立役者でもある稲盛和夫さんのあまりにも有名な言葉です。

同じ商品・サービスを売るのであれば、もちろん高い方が利益がでることを頭では理解しながらも、値上げをすれば売れなくなるのが怖い、と思うのは当然でしょう。
だからといって、安ければ販売数は増えるかもしれませんが、いったん安売りした商品・サービスをまた定価・適正価格に戻すことも難しいわけです。

ここでは、マーケティング的に考えたプライシング(値決め・価格決定)という非常に難しい課題について考えてみますが、今回は【いつ値引きすべきか?】がテーマです。


■顧客が納得できない値引きはしない

私はデパートやネットなどで服をよく買うのですが、基本的にバーゲン・セールでなければ服を買わないようにしています。
なぜなら、定価で買うのを数ヶ月だけ我慢しておけば、後で値引きされることがわかっているからです。

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誰しも経験したことがあるはずなのですが、定価で購入した商品が後日値引きされていることを知ったら、定価で買ったことを後悔し、その後は定価で買うことをためらうようになります。

服だけの話ではなく、ビジネス上でもよく「決算大感謝祭!」などと謳った値引き販売を見かけますが、顧客からすれば販売者の決算・値引き時期などは何ら購入に関係のない要因で、定価で買った既存顧客が以後買わなくなる誘因になっているだけでしょう。

顧客に「いつか値引きされるのだろう」「だから今は買わない方がいい」と思われたら負け、というのがマーケティング的な思考です。

ルイヴィトンなど一切値引き販売をしないブランドもありますが、これこそ究極的なプライシング(高値)維持=ブランド力の構築で、値引きはその会社のブランド力・信用力にも大きく影響しますので、在庫が余っている・売れ行きが悪いからという、顧客が全く納得できない値引きは絶対にしない方がいいのです。


■値引きを「今買う」動機にする

では、マーケティング的に値引きはどのように設定すればいいのでしょうか。

当社は、士業と呼ばれる専門家(主には税理士・会計事務所)向けにセミナーを開催し、収録したDVDなどを販売していますが、DVD発売当初1週間のみ値引き販売を実施しています。

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具体的には、定価@10,000~20,000円程度のDVDをリリースすれば、1週間だけ@5,000~10,000円の値引きを実施しています。

このように、あえて商品・サービスをリリースした初期段階で値引きをすることにより、顧客が「今買う」動機を設定しているのです。

顧客は迷ったら買いません、これが原則的な考え方です。
そして、顧客は「今買う動機」が明確にないのであれば、購入をためらいます。

「今買っても、よく考えた後に買っても同じ値段」であれば今買う動機がありませんので、それを値引き設定することによって動機を引き出しているというわけです。

もちろん、値引き期間を経過すれば定価に戻しますし、定価にした以上はその後も値引き販売をすることはありません。

これは上記のとおり、定価で購入した顧客が「後悔する」「損をしたと感じる」のを避けるためです。
当社は狭いマーケットの中で、繰り返し購入いただく顧客をいかに作るかがビジネスの根幹ですので、既存顧客は「将来的に値引きされない」「定価販売がずっと続く」ということをよく理解してくれています。

「後で買った方が損をする」状況を自ら作り出しているわけで、だからこそリリース直後の値引き販売が有効になる(売れる)、というロジックです。


■段階的な値引きを設定する

また当社では、高額な商材・サービスをリリースする際には、リリース直後の値引きのみならず、あえて段階的な値引きを設定することもあります。

当社のセミナー(単発開催)の多くは@5,000~8,000円に設定していますが、全6~8回開催する連続講座の場合、10~20万円に設定することもあります。

このように、通常販売している商品・サービスよりも単価が高いというだけで申込み率が一気に下がることが予想されますので、あえて値引きを段階的に設定することで申込率・申込総数を引上げようとする考え方です。

(例)20万円の連続講座を6月から開催開始
   ▼
   4月上旬のリリースから2週間:12万円
   ▼
   4月中旬から4月末まで:16万円
   ▼
   5月以降の申込み:(定価の)20万円


DVDなどの単発商材であれば、顧客が「告知を見ていなかった」という、いわゆる買い漏れが多少あっても仕方ないと割り切れるのですが、このような高額商材・サービスの場合、1週間など短い期間設定であれば取り返しがつかないことになりがちなので、このように段階的な値引き設定にすることで、「今買う動機」を維持しながら告知期間を長めにとることが可能となります。


また、同じ考え方で他の実践パターンも紹介しましょう。
当社はサブスクモデル(月額課金)のサービスをいくつか提供していますが、そのどれもが入会金を設定しています。

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あえて入会金を設定している理由はいくつかあるのですが、その1つの理由として、月額料金を値引きするのが難しいことから、入会金を値引きすることによって、入会動機を高める手法をとっています。

(例)入会金:20,000円の月額サービスをリリース
   ▼
   リリース開始後1ヵ月間:入会金ゼロ円(なし)
   ▼
   翌月の入会:入会金10,000円
   ▼
   翌々月以降の入会:入会金20,000円(定価)


このように、後になればなるほど、顧客が損をする設定をすることで、「今すぐ(早く)入会した方がいい」状況を作り出すわけです。


■値引きに期間設定する場合の注意点

ここまで解説してきたとおり、販売・提供者側の都合によって安易に値引きをするのではなく、値引きを「今買う動機を高める」手段として用いることで、販売数=売上額を伸ばすことができます。

ただし、値引きに期間設定する場合には、2つ注意すべきことがあります。
当社もいろいろと試行錯誤してきましたが、この2つを守らない場合、値引き設定に失敗する、もしくは効果が薄まることがわかっています。

①値引き期間を短くする

当社では上記のとおり、毎月数本リリースするDVDの販売において、毎回1週間の値引き期間を設定しています。
高額商材など、DVD以外の商品・サービスとなれば、値引き期間を2週間~1ヵ月程度とする場合もありますが、この期間設定は短くなければ意味がありません。

売上を上げたいと思うと、すでに触れたとおり、顧客が値引きの情報を知らない、いわゆる買い漏れを危惧し、値引き期間を長めに設定しようという気持ちになるのはよくわかります。

当社でも何度か、値引き期間を通常の1週間から2週間に伸ばしたり、試行錯誤を繰り返してきましたが、期間設定を長くした時ほど売上額(販売数)は下がる傾向にありました。

これは繰り返しますが、値引き期間が長くなれば、顧客からすると「今買う動機」は薄まります。
「この瞬間に買わなくても・・・来週でも同じ値段なんだよね」と思われてしまうと、購入の先延ばし=結局買われない、という結果を招くためです。

値引き期間は短くするには勇気が必要なのですが、「値引き期間が短いな」と思える程度に設定しないと値引き効果は出ません。


②値引き期間後の申込に対する対応は厳しくする

セミナー事業を開始した当初は、定刻に受講者がなかなか集まらない場合、運営者の配慮として、ある程度の人が集まるまで開始時間を遅らせるという運用をしていたことがあります。
この結果はどうなるかというと、セミナーを開催すればするほど開始時間に遅れる受講者が増えていくのです。

今から考えれば当たり前なのですが、定刻前に会場に行ってもセミナーが開始されないことは常連客ほどわかっていますから、今まで定刻までに来ていた人ですら、遅れて来るようになるのです。

これと同じ原理で、値引き期間を超えて申込みをしてくる顧客に対して、「まあいいですよ」と配慮してしまうと、常連客であるほど「前は期限を超えても値引きで対応してくれた」となり、告知を見ない顧客が増加、もしくは際限のないクレームを招くことになります。

良かれと思って対応したことが、後々悪い結果を招かないよう、期限後の申込みには「値引きできない」旨をきちんと伝え、期限には厳しく対応すべきです。


■最後に・・・

ここまで、「値引き」という手段を有効活用して売上を上げていくマーケティング手法を紹介してきました。

期間限定の値引きと同じ考え方として、個数・人数を限定するなど他にもいろいろな手法が考えられますが、根本的には「今買う動機を設定する」ということと同じだと考えてください。

単純な値引きはむしろ、利益減のみならず将来的な顧客離れにつながりますので、ぜひマーケティング的な考え方から有効に値引きを設定してみてください。


次回は、同じくマーケティング的な考え方から、値引きをせず、いかに適正価格で販売するかについて考えてみましょう。


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