急性副鼻腔炎小児:上咽頭細菌性病原体のない場合、抗生剤治療の効果はわずか



先に、to the Editor(Antibiotics for Acute Sinusitis in Children | JAMA | JAMA Network)から
鼻汁の色では細菌感染有無判断できない、結局は、細菌同定が必要という報告への応答

最近のランダム化臨床試験1では、上咽頭細菌性病原体を認めない急性副鼻腔炎の小児に対して、抗生剤治療はほとんど効果がないことがわかった。著者らは、発症時に特定の細菌を検査することが、この疾患における不必要な抗生物質の使用を減らす戦略である可能性を示唆した。

ただ、この推奨が、小児が急性副鼻腔炎の症状で来院した際に、臨床医が特定の細菌について広範な検査を行うことを促すのではないかと懸念している。肺炎球菌、インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalisは一般的に気道に存在し、細菌検査を実施するとしばしば陽性結果が得られ、感染症の診断が増加する。本研究の結果1では、上咽頭細菌コロニー形成のある小児は、コロニー形成のない小児に比べ、抗生物質治療による恩恵が大きいことが示唆された。この結果は、臨床医が病原体が結核している小児に抗生物質をより頻繁に使用することを促すかもしれない。

細菌検査の重要性が再認識されたが、一般コロニーへの対応が危惧されるという論旨だと思う。

Shaikh, Nader, Alejandro Hoberman, Timothy R Shope, Jong-Hyeon Jeong, Marcia Kurs-Lasky, Judith M Martin, Sonika Bhatnagar, ほか. 「Identifying Children Likely to Benefit From Antibiotics for Acute Sinu sitis: A Randomized Clinical Trial」. JAMA 330, no. 4 (2023年7月25日): 349–58. https://doi.org/10.1001/jama.2023.10854 .

【キーポイント】

【問題】 急性副鼻腔炎を有する2~11歳の小児において、抗生物質治療の有効性は、上咽頭の細菌性病原体のコロニー形成の有無、あるいは鼻汁の色によって異なるか?

【所見】 上咽頭細菌コロニー形成のない小児(登録者全体の28%)は、病原体コロニー形成のある小児に比べ、抗生物質治療による恩恵が有意に少なかった。抗生物質の効果は鼻汁の色による差はなかった。

【意味】 急性副鼻腔炎の小児において、上咽頭細菌性病原体のない小児に対する抗生剤治療の効果はわずかであった。抗生物質の効果は鼻汁の色によらなかった。

要約

【重要性】 急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状が大きく重複していることから、急性副鼻腔炎と診断され、その後抗生物質による治療を受けている小児の特定のサブグループは、抗生物質の使用からほとんど利益を得られないことが示唆される。

【目的】 事前に規定したサブグループにおいて、抗生物質治療を適切に差し控えることができるかどうかを評価すること。

【デザイン、設定、参加者】 臨床基準に基づき急性副鼻腔炎と診断された2~11歳の小児515例を含む無作為化臨床試験。本試験は、米国の6施設に所属するプライマリケアオフィスで2016年2月~2022年4月に実施され、細菌培養における鼻咽頭の肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタルハリスの有無、および色のついた鼻汁の有無で定義されたサブグループにおいて、症状の負担が異なるかどうかを評価するようにデザインされた。

【介入】 アモキシシリン(90mg/kg/日)およびクラブラン酸塩(6.4mg/kg/日)(n = 254)またはプラセボ(n = 256)を10日間経口投与。

【主な転帰と測定】 主要転帰は、診断後10日間の有効な尺度(範囲、0~40)による毎日の症状得点に基づく症状負担とした。副次的アウトカムは、治療失敗、臨床的に重大な下痢を含む有害事象、および家族による資源利用であった。

【結果】 対象となった510人の小児のほとんどが2~5歳(64%)、男性(54%)、白人(52%)、ヒスパニック系ではなかった(89%)。平均症状スコアは、プラセボ群(10.60[95%CI、10.27~10.93])に比べ、アモキシシリン・クラブラン酸塩群(9.04[95%CI、8.71~9.37])で有意に低かった(群間差、-1.69[95%CI、-2.07~-1.31])。症状消失までの期間は、抗生物質投与群(7.0日)がプラセボ群(9.0日)より有意に短かった(P = 0.003)。上咽頭病原体が検出されなかった小児は、病原体が検出された小児ほど抗生物質による治療効果がなかった。平均症状スコアの群間差は、病原体が検出されなかった小児では-0.88(95%信頼区間、-1.63~-0.12)であったのに対し、病原体が検出された小児では-1.95(95%信頼区間、-2.40~-1.51)であった。有効性は、着色した鼻汁の有無による有意差は認められなかった(群間差は、着色した鼻汁で-1.62[95%CI、-2.09~-1.16] vs 透明な鼻汁で-1.70[95%CI、-2.38~-1.03];治療群と着色した鼻汁の有無の交互作用についてP = 0.52)。

【結論】 急性副鼻腔炎の小児において、来院時に上咽頭細菌病原体がない場合には、抗生剤治療はほとんど効果がなく、その効果は鼻汁の色に左右されなかった。来院時に特定の細菌を検査することは、この病態における抗生物質の使用を減らすための戦略であるかもしれない。


Trial Registration ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02554383

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