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原稿レビューのガイドライン

サムネイル画像: TVアニメ『Do It Yourself!!』第1話より引用
©IMAGO/avex pictures・DIY!!製作委員会

 


はじめに

 本同人では、寄稿していただいた記事を校正担当とピアレビュワー(他の寄稿者から選出)の2名でレビューします。入稿した段階の原稿はそのままコピ本版に収録し、レビューおよび編集提案、執筆者本人による修正を経た完成稿は製本版に収録します。

 文章は一人だけでも書けます。批評系の文章に限らずとも、文筆業でないアマチュアが個人ブログで自分の文章を公開することなど、きょうび珍しいことはありませんし、インターネット上で一定の評価を受けています。では、自分のブログに公開するのではなく、同人誌に参加することをどのように価値づけることができるのか。それは物理的なプロダクトをつくる面白さやアーカイブの意義、バラバラの原稿を一冊にまとめる編集的効果、あるいは即売会イベントのお祭り感など……さまざまな側面がありますが、ここでは「執筆段階から読者が反応すること」だと考えます。
 独力で書かれた文章は筆者自身が推敲して生産されますが、本人は事前知識や背後に隠れた論理などを既に知っているため、他者には読めない文章が読めてしまいます。この原理的な問題によって、せっかく書いたのに読みずらい文章となってしまうかもしれません。もちろん、書き慣れたライターならば単独でよい文章を書けるのでしょうが、本同人誌はそうではない原稿を対象としています。執筆者だけによって紡がれた、ハイコンテクストな初稿=独白を、レビュワーという外部の読者を介して判読可能にする=対話へと開くこと、それが本同人におけるレビューの目的です(そして初稿版と編集版を並べることで、同人誌ならではの成果を発表したい)。ならばレビュワーの要件とは他人の記事にアドバイスできるほど筆力がある人だとか、題材に対する知見があること以前にたんに執筆者ではない読者にすぎないのではないでしょうか。

 さて、この記事では可読性を高めるためのレビューのガイドラインを共有したいと思います。ここでは編集内容を、誤りをチェックして正す「校正・校閲」と文章の内容に踏み込んだ「編集提案」に分類して紹介します。校正担当者がメインとなって実施し、ピアレビュワーは抜けがないか確認するなど補助する立ち位置を想定しています。

※レビューの最初に

 原稿を一読した段階で、簡単な自己紹介と全体的なコメントを書きましょう。5行程度でいいので書いておくと、なんとなくやりやすくなります。
 レビュー内容は誤字脱字の修正なども含めて、必ず「提案」モードを使ってください。googleドキュメントの「提案」モードでは、文章の修正前の内容が残っており、編集権限をもつ執筆者が提案を承認すると変更が反映されます。添削理由の説明や相談など、コメント機能を活用してください。
 また、初稿提出の段階で寄稿者から相談したい部分をあらかじめコメントしていただけると助かります。

画面右上から「提案」に切り替えます
提案モードで添削した例
本文を選択した状態で「+」マークをクリックするとコメントできます
コメント文は本文とは無関係なので好きに使ってください

編集例

校正・校閲

①誤字脱字

 最近ではワードやgoogleドキュメントの自動校正が優秀なので少ないですが、見落としがないか確認しましょう。誤字というよりはミスタイプや誤変換で生じるものがほとんどかと思いますが、
 誤「にも関わらず」正「にも拘らず」
のように当てる漢字が間違っていることがあります。
 「このような時」「このような事」など、状況を表すとき(形容名詞のとき)は「このようなとき」「このようなこと」に開きます。迷ったら平仮名にすると丸いです。

②言葉の誤用

 「気の置けない」「役不足」など慣用句や熟語が正しい意味で使われているか、「会う」「遭う」「逢う」などの同音異義語の使い分けも間違えやすいです。読んでいて引っかかったらWEB辞典などを活用して確認してください。

③事実確認

 作品名、公開年、人物名などトリビアル(些末に自明)な情報に誤りがないかネットで調べる程度でいいので確認してください。

④表記の確認

 本同人では以下の表記とします。

「 」付きの言葉:一般的な用法とは異なる含みがある場合
『 』:作品名は『』で括ります
  “ ”   :引用文はクォートします
文献の引用:
<単著>著者名(発表年※縦書きなので漢数字)『書籍名』出版元
例:斎藤環(ニ〇一六)『承認をめぐる病』日本評論社

<雑誌>著者名(発表年)「該当記事」『誌名』出版元
例:泉信行(ニ〇一六)「アイドルアニメと美少女の表現史~一九八〇―二〇一〇年代~」『ユリイカ 総特集☆アイドルアニメ』青土社

<WEBページ>著者あるいは団体(公開年)「記事名」『サイト名』URL
例:TEAM酷道(ニ〇一六)「戦慄のエロ本小屋」『TEAM酷道』
http://teamkokudo.org/haikyo/miwaku/ero/erosenritu/ero06-3.htm

編集提案

①追記の提案

 作品の概要やあらすじなどの事前情報が不足している場合は、追記を提案してください。冒頭に述べた通り、初稿は説明不足になりやすいので追記しながら文章を修正していきます。

②文章表現(文末表現、冗長表現、句読点、改行)

 「~だ。」「~です。」などの文末表現が偏って文章が単調な場合は、言い換え表現を提案してください。
 「一番最初」「頭痛が痛い」などの二重表現や、「片付けをした」(「片付けた」で十分)などの冗長な表現は言い換えるようにしてくだい。
 一文が長すぎるときは句読点「、」「。」を入れるようにしてください。
 本文の流れが区切れるときは改行し、逆に不適切な改行は削るように提案してください。


②論理構成の確認

 評論色のつよい記事では、因果関係や推論(AならばB)が妥当かどうか意識して読んでください。後件肯定(もし P ならば Q である。Q である、よって P である)と前件否定(もしPならばQである。Qである、よってPである)の誤謬に注意したいです。むやみに逆接で論理展開すると論旨が追いにくいので、ここも気を付けたいです。

③記事の構成

 本文をパラグラフごとに分割して、それぞれどのような意味となっているか、他のパラグラフとどのようにつながっているか確認します。必要に応じて小見出しをつけたり、全体的な構成についても相談してください。

むすびに

 本記事はあくまでも補助的なガイドラインですので、「自分が読めたかどうか」という率直な感覚を重視していただけると幸いです。

※本記事の内容に修正事項や、アドバイスなどがありましたら、どなたでもお気軽にコメントしてください。

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