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0105 - 防災学習センターでHUGした話

t= 4 d= 6

先日、浜松市防災学習センターにて開催された『避難所運営ゲーム(HUG)で避難所体験講座』に参加した。

避難所の運営は、お役所や政府ではなく、基本的には自治会など現地の住民が自主防災組織となって行わなければならないという事実を初めて知った。有事の際には市区町村の職員が駆けつけてくれることが多いと思うが、あくまで『人手』の一部。現場では各自治体の住民が自主的に指揮を取ることになる。なので万が一に備えて避難訓練を行うように『事前シミュレーションしておくこと』が重要とのこと。なるほど納得。

避難所運営ゲーム(通称『HUG』)は、静岡県西部地域防災局の職員(当時)が2007年に発案したものだそう。

HUGで使うもの
・学校など、避難所になる場所(校庭や体育館)の見取り図
・ゲームの中心となる進行カード

カードを使うゲームだが、対戦型ではない。明確なゴール(正解)も無い。皆で協力して『この場合どうするか』という判断を繰り返しながら避難所を運営するリアルタイムシミュレーションだ。

ゲームしている時の様子はこんな感じ。見取り図に通路やトイレの場所をどうするか書き込みつつ、カードに書かれた人物を次々と配置して(さばいて)いく。

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カードは2種類。避難者の情報(住んでいる地区、名前、年齢、家族構成、補足事項など)が書かれたもの。そして、その場で起こったイベントが書かれたもの。(画像参照ページ

HUGカード

全てのカードには左上に番号が振られている。進行役の人が「はい、次は5番〜7番の豪雨一家がやってきましたー」「次は31番、テレビの取材が来ましたー」といった『容赦無し待った無し』な状態で『番号順』に読み上げていき、瞬時の判断で次々とカードに書かれた内容に対応しなければならない。

今回は4名1チームとなってのチャレンジだったが、まあ忙しいこと忙しいこと。

咄嗟に『今取れる最善の対応』をしたところで、そのままで穏便に行くわけもなく、後からやってきた人たちに合わせて現場の状況を柔軟に変更させなければならないのがとにかく難しい。4名を「判断する人×2」「記録する人」「現場報告する人」と役割分担しながら進めてみたのだが、それはそれで連携するのも一苦労。30分ノンストップの進行が本当にあっという間だった。

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カードの大きさは実際に避難所での1人に対して確保すべきとされているスペースの目安幅になっている。それを考慮しつつ空いている場所に人々を案内した上で、車椅子がすれ違える幅での通路確保、車で来た人の駐車スペース確保、明日届く仮設トイレの場所確保、同じ年代や同じ地区の人がなるべく近くになるような配置、水が使えない状態でのトイレをどうするか等々。同時進行で考えなければならないことがとても多い。

特に難しいと感じたポイントはこの辺り。
・後から来る人ほど、認知症、鬱、持病、障害者など『抱えている事情』が重くなる(元気な人から先に避難所にやってくる)
・ペットの対応(犬、猫、ウサギ、鳥など様々なペットがやってくる)

なぜ難しく感じたのかは明確である。僕は上記で挙げた状況の人やペットとは暮らしていない。なので、これらの事情を抱えた人が必要とする物(環境)が体験として身についておらず、想像しきれないので判断がどうしても鈍ってしまうのだ。

ゲーム終了後は、他チームのテーブルを見学したり、各々で感想など意見交換する時間が設けられた。全く同じ見取り図&全く同じカードによる全く同じ進行にも関わらず、避難所の様子は大きく異なっていた。

細かい違いを挙げればキリが無いが、印象的だったのは、避難所のメインとなる体育館において、2つしか無い入り口のどちらを『受付』にするか問題がキレイに真っ二つに分かれていたこと。運動場から入って来やすい後方を受付にする派の意見としては「外部から来た人が入ってきてスムーズに受付できるように」という理由が多かった。対して、運動場から遠くステージに近い前方を受付にする派は「体育館のステージを対策本部が話し合う場所してスタッフ連携しやすくするため」や「ステージ横に器具庫があるので、後方を受付にして前方に人を固めると、後から備品の出し入れがしにくくなる」という理由だったり。人が違えば視点も変わるという、当たり前なことをHUGによって強く再認識できた。

現実の避難所はこんな生易しいものではないのは百も承知。万が一の状況に備えて心構えを持つ人が増えるよう、なにより自分自身の知見も増やせるよう、もっと多くの世代や立場の人と一緒に繰り返しやってみたい。

※購入する場合は、9955円(税込)+送料とのこと。貸し出しも行なっている。詳しくはコチラを。

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