0349 - 新しい通貨の話
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仕事でブロックチェーンを扱っていたことがある。このことを話すと「じゃあ相当儲けたでしょ」と言われることが少なくない。今でもブロックチェーン=ビットコイン=お金の話という認識の人が多い印象だ。
これは受け売りの例えだが、ビットコインという「仮想通貨」はあくまでブロックチェーンの仕組みを使ったサービスの1つ。インターネットの仕組みを使ったサービスの1つがEメール、みたいなものだ。
しかも、ブロックチェーンの仕組みを使った仮想通貨はビットコインだけではなく、ビットコインキャッシュという派生を含め、イーサリアム 、リップル、ライトコイン、ネム、ファクトムなどなど多彩だ。同じEメールでも、SMS、Gmail、ヤフーメールなどあるようなもの。
自分がブロックチェーンに仕事で関わるようになった頃、仮想通貨の賑わいが加速度を増していた。キーワードは「非中央集権」。国が管理する貨幣とは切り離された世界共通通貨のような存在として、多くの人々が「仮想通貨で世の中をガラリと変えるぞ」と、大きな可能性を見出してプロジェクトを立ち上げていた。この流れは(少しカタチを変えつつ)現在も続いている。
ただ、残念ながら頓挫したり事業を畳んだ起業も少なくない。それぞれに複雑な事情が絡むと思うが、仮想通貨に絡めたグローバル視点のプロジェクトがなかなか進まない理由は大きく2つあって、1つは「法律の壁」で、もう1つは「安定しない相場」だと感じている。
当たり前だが、法律は簡単に変えられない。更に複数の国をまたぐ仕組みとなると、乗り越えるための難易度は想像できないほどに高くなる。しかも導入しようとしているのは、国が国として治まるために不可欠な「お金」の存在を脅かすものなので尚更だ。自分が知る限りでも実際問題この部分で頭を悩ませているプロジェクトがとても多い。
もう1つの理由「安定しない相場」もなかなかに厄介だ。リアル通貨でもハイパーインフレを起こしたお金は紙屑同然になるし、そのような国に安心して住めるかと言われれば正直NOだろう。
先に挙げた仮想通貨は、基本的に取引所を介してリアル通貨と交換して入手する。株と同じイメージ。ビットコインの場合、最初から「世に出回る上限がココまで」と宣言されていて、更に「未来で使える通貨になるぞ」という期待値もあり「これから価値がドーンと上がる銘柄」として投機目的で人々が手を出す存在となってしまった。
一時期は、ビックカメラやレッドブルが主催するイベントのチケットなど有名どころの支払いでビットコインOKとする流れもあったが、さすがに超絶短期間で撤退した。価値が急激に下がればお店が困るし、価値が急激に上がると所有者が買い物で使うなんてことはしない。
このように、仮想通貨を含めた「デジタル通貨」が普及するためには乗り越えなければならないハードルがなかなかに高い。そう感じていたのだが、どうやらこれまでの流れとは異なる方向で、実用化に向けた動きが活発になってきているようだ。
(次回へ続く)
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