見出し画像

上手くいかないと嘆く事業者ほど『体質改善』に意識を向けずに目先の対処療法ばかりしている。

静岡にUターンしての起業からおよそ4年半。事業相談の解決提案(実行サポート)がメインである会社を経営しながら、ここ2年は地元の市の公共事業『創業支援』のコーディネーターを担当しています。

様々な業態や規模の事業者さんとお付き合いさせて頂き、出会ってから数年経つ方も多くなってきました。そうなると、側から見ていて「伸び悩む人」と「しっかり伸びている人」の明暗がクッキリしてきます。

端的に言うとこの2つに分けられます。

・伸び悩む人:対処療法(その場の対処)にしか意識が向いていない人
・伸びてる人:体質改善(根本からの改善)を目的として動けている人

言い方を変えると、行動するにあたっての視野が「短期的か」「長期的か」でクッキリ分かれている印象。

短期的な成果の魅力と落とし穴

「すぐに結果が欲しい」「早く売上(利益)を上げたい」といった気持ちはとてもよくわかります。目に見える変化が生まれれば、動けている感じもするし、周りから「すごいね」と絶賛の声を浴びやすい。なので、短期的に効果を得られるノウハウや成功事例は注目されやすいし人々を魅了するのも理解はできます。

しかし、これはある意味での罠でもあるわけで。一時的な成功(または成功のように見える状態)は、事業の本質的な改善や強化がおそろかになって、長期的に見るとリスクを高めてしまう可能性を大いに秘めています。

それぞれのタイプのイメージをゲームっぽく例えると以下の通り。

【対処療法タイプ】

敵が現れたら、その敵を倒しやすそうな武器を探す。今の自分でも扱えそうな簡単な武器を見つける。目の前の敵は倒した。すぐに次の敵が現れる、さっきの武器は通用しない。また違う武器を探す。また今の自分でも扱えそうな簡単な武器を手に入れる。目の前の敵を倒す。またすぐに次の敵が現れる。すぐ使える武器(攻略法)に頼った戦い方で「今の自分だから扱える武器」しか操っていないので、自分自身が強くなっていない。新しい敵が現れていることでパッと見の状況は変化しているように見えるが、実はザコ敵しか倒せない状況から抜け出せず行動範囲も広がっていない。

【体質改善タイプ】

強い敵が現れても戦えるように日々の鍛錬を欠かさない。敵が現れたら、武器に頼りきらずに腕力や打たれ強さなどを活かしながら戦う。最初は弱い敵ですら苦戦する状況が続くかもしれないが、自分自身を鍛え上げていくことで、ザコ敵が出てきても瞬殺、強敵な敵にも臆せず立ち向かえるようになっていく。更に腕力なども伴い「レベルアップしたからこそ扱える武器」も操れるようになり、より広い世界へ歩み出せる。

要するに、目先の変化や小さな結果ばかりに捉われていると、今いる現状の風景が変わっているだけで、自分自身の立ち位置がなかなか変わらない。この落とし穴にハマってしまうことに気づかない人が正直なところ少なくないです。

長期的な視点を持つことの重要性

ダイエットで考えてみると理解しやすいと思います。

短期間の結果を求めて大幅な減量も可能ではあるけれど、無理が祟って別の角度で健康を害したり、ちょっと気を抜くとあっという間にリバウンドするので、効果を持続させるために結局は「やり続ける」必要があったり。

それよりも長期的な目標で徐々に体質を改善するほうが、最初はなかなか変化が見られずしんどいかもですが、結果的に太りにくくなり、理想的な体型が維持するのも楽になるはず。

これからやる事を「目の前にしか意識が向いていないまま行うのか」それとも「長期的な目標の達成に向けて明確な繋がり(影響)がイメージできた上で行うのか」の、その差はとても大きいと感じています。

短期的な効果を求めても良いパターン

ここまでで、短期的な効果を求めることを絶対的な悪として書いているように感じられるかもですが、長期的な部分を無視して対処療法的な動きばかり繰り返すことが必ずしも悪いわけではないです。もちろん大きな効果に繋がることだって多々あります。

ただし条件が必要です。

条件:
次から次へと新しい施策(動き・仕掛け)を打ち出し続けられるだけの「アイデア」や「財力」があること

短期的に得た効果は、放っておいて持続できることはほとんど無いです。その得た効果をステップとして、2の手3の手を放っていく必要があります。そのためには「アイデアを出す知恵や想像力」または「カタチにするための財力」が不可欠です。

次々と何かを打ち出せるだけのものを持ち合わせているのなら、常に目先だけ見て「その時その時で」動くのも良いでしょう。そう動き続けることで、唯一無二 or 圧倒的な存在になることもあるにはあります。

裏を返すと、そのように「アイデア」や「財力」どちらか一方でも続ける自信が持てないのなら、短期的な効果ばかりに目を向けてしまうのはとても危険です。

体質改善的な動きが必要だと思うパターン

自分が思う『長期的な価値を生むための体質改善』が必要なのはこの辺り。

1. 組織文化の育成

中規模以上の組織はもちろん、小規模な事業であってもチームや関係者との連携における『文化』は大切。文化は一朝一夕には築けません。むしろ長期的な積み重ねを経て醸造され、結果として「文化」へと昇華されます。

2. 世の中の変化への適応

短期的な目標にとらわれることなく、5〜10年後のビジョンを描くことが大切です。どのような事業を築きたいのか、どのように世の中に貢献したいのか(未来を作りたいのか)を考え「それに向かって今からできること」を意識して動くこと。

3. 事業ブランディング

一時的な利益追求ではなく、長く愛される(選ばれる)サービスや商品を提供することが重要。強火で表面だけ焼き上げる一過性の施策や話題作りではなく、炭火で丁寧に中まで火を通すような顧客との関係性の積み重ねによって、ようやく「味が滲み出て冷めにくいブランド」に成り得ます。

4. 個人として学び続ける姿勢

世の中は常に変化しています。新しい技術やトレンドを学び、自分自身と事業を常にアップデートし続けることも大切。短期的な情報で「そうなんだ」と納得するのではなく、これまでの流れ(文脈)や影響範囲、仕組みを理解していく姿勢を持ち続けることで、アンテナは磨かれて、より広く深く物事をとらえて考えることが可能になります。

体質改善への実践的アプローチ

では、具体的にどのように「体質改善」に取り組めばいいのか。以下、いくつかのポイントを挙げてみます。

【目標設定の見直し】

短期的な目標だけでなく、長期的なビジョンを持つことが重要。例えば「今が何で困っているか、それをどうすればいいか」だけではなく、数年後にどうなっていたいかを明確にして、それに向かって小さなステップを踏んでいくことが大切です。長期的な目標を持つことで、日々の取組みが(すぐに結果が出なくても)意味があるものになるし、積み重ねるからこそ得られる大きな武器(強み・ポジション)を手に入れることもできます。

【チームビルディング】

事業を行う上で「自分1人だけ」でカタチにできることは少ないです。プロジェクトに関わる人たちとの間で、そもそもの部分や長期的な目標を明確に共有していくことが重要。目先の結果にとらわれすぎず、長期的な視点で「何のためにやっているのか」を関わる皆んなが認識していることで、不必要な対立や分断を避けて手を組んで取組むことができるはず。

【顧客関係の深化】

売ったらおしまいではなく、買ってくれたところをスタートにする心持ちで、その顧客との関係を深めていく流れを作っていくことが大切。自己都合による短期的な売上(利益)を求めるのではなく、その後にも顧客の声を聞き、フィードバックを事業に反映させ、更に良い商品やサービスを提供していく。その好循環を生むためには、長期視点(体質改善)の動きは不可欠です。

これからも続けていきたいなら体質改善

短期的な結果を求めがちな流れも気持ち的には理解できますが、期間限定だったり売り切りでおしまいな事業ではない限り「長期的な視点を持つこと」が本当の意味での事業の成長と発展をもたらすのは間違い無いです。

組織によっては「年度」単位で評価されてしまうし、SNSの普及によってパッと見で「スゴイね」って思われたい承認欲求を満たしたくなりがちなのも解るには解ります。

ただ、これだけ変化の大きな世の中。目先(半年から1年以内)の結果を求めて「今だけを取り繕う」事業の進め方は、遠くない将来に「行き場を失う」または「沈む」と考えて良いと思います。

やる事自体は対処療法でも、その先に繋がる「体質改善」の目標と意識を持つことが重要。

そして、その体質改善の目標は「ふわっと」していたら意味が無いので、出来るだけ具体的にイメージする。

そしてそして、今から取り組む対処療法によって、どのように体質改善に繋がるのか(効果として影響するのか)意識しながら動く。

伸びてる事業者に共通しているのは、この辺りだと強く感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?