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四季報の夏号発売日(6/18)までにやっておきたいこと

株式投資を5年、10年と続けているかたで四季報を見たことがないかたは少ないと思います。四半期毎に発売され、まるでレンガブロックのようなこの本は、各号45万部も発行されているそうです。

法人割引もありそうですが、仮に一冊2000円、取次/小売マージンを3割と仮定すると、出版社の売上は25億円ほどではないでしょうか。東洋経済新報社は20.9期の売上高が113億円ですから、四季報は全社売上の2割を占める、まさに屋台骨を支える出版物といえるでしょう。

決算短信は期末日から45日以内に開示することとされており、例年4末〜5月中旬が3月決算企業の決算シーズンです。独自の業績予想を盛り込んだ四季報夏号が発売されるのはシーズン終了の1ヶ月後、今年は6/18(金)です。

年度決算の発表では、多くの会社が新年度の会社予想を公表し、資料や説明会を通じて行われる説明も四半期より充実しています。年度末にしか行われない減損や税務関連の処理もあるため、株価は大きく動きがちで、投資チャンスの多い時期だといえるでしょう。

プロ投資家にとっても1年で最も忙しい時期。私もバイサイドのアナリストやファンドマネジャーをしていた頃、ゴールデンウィークを休んだことは一度もありませんでした。

以前の記事で、個人投資家の強みは (1) 自己資金であることと(2) 巨額の資金を運用しなくてよいことだと書きました。(2) は言い換えれば、知られざる中小型株に勝機があるということです。多数のプロがひしめく大型株に比べ、プロが見ていない中小型株では発表された情報が株価に織り込まれるまでのタイムラグは長くなりがちです。

他の投資家に先んじ、少なくとも四季報の発売前に投資チャンスを発掘するにはどうすればよいのでしょう?シーズン中、短信を片っ端からチェックする強者もいるそうですが、上場企業の総数は3800社。週末も休みなく調査を続け、仮に半数はチラ見でパスできる会社だとしても、1社あたり10分 x 30社 = 5時間を、9週間も続けることは並大抵の苦労ではできません。

決算のエッセンスを一画面に集約

そのようなニーズに応え、proproではこのたび「決算分析サマリー」機能をリリースしました。

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この画面では、最近の決算発表を以下のポイントで整理しています。エッセンスに絞って図示することで、深堀りすべき会社がぱっと分かるようになっています。

1)売上成長率営業利益率について、
  > 過去5年平均
  > 今回決算の発表値
  > いまの株価が織り込んでいる将来
2)最近の株価騰落率
3)分析のしやすさ

あたりを付けた後は、ボタンをクリックして個々の分析画面にすすみ、将来売上高をドラッグして今日の買い指値を確認します。今日はその、あたりを付ける部分のお話です。

1) 調子は上向き、でも織込みの弱い会社

順にみていきましょう。まずは売上成長率と営業利益率の3点比較ですが、これは「過去/現在/将来の織込み」のまとめです。

長期投資の秘訣は「良い会社を安く買う」。良い会社とは、フリーキャッシュフローを着実に稼ぎ、その成長率が高い会社です。安い会社とは、長期的にはいずれ実現する理論株価に比べていまの株価が十分に低い会社。

つまり、以下2点が満たされている会社は、長期投資に適している可能性があるといえるでしょう。

・過去実績がよく、それよりも足下の状況はさらによくなっている
・だけれども、いまの株価が織り込む将来は弱い

少し言い換えると、このようになります。

・5〜10% < 過去
・過去 < 現在
・現在 > 将来の織込み

画面上の表示ではこういうことです。絶対水準が高く、右肩下がりの線と、その上にあるオレンジ色の今回決算、そして営業利益率の改善です

・売上成長率が絶対的に高い(目安は5-10%超)
・線が右肩下がりで、今回決算はその線の上方に
・利益率も、足下の改善とは裏腹に織込みが弱い

2) ベータ調整後の相対騰落率で考える

2つめは株価騰落率。市場が業績の先行きについて勘違いをしている場合、本来以上に株価が落ちることがあります。順調に上げている銘柄が、そのまま成長に伴って株価を伸ばす場合もありますが、最もリスクリターンがよいのは、相場の勘違いに気付くことができた場合です。

proproの決算分析サマリーでは、この株価騰落率を「ベータ調整後」という方式で絞り込むことができます。

相場全体が1%上げたとき、平均して何%上げる銘柄なのかは銘柄により異なります。株価は最終的には業績を反映するものですが、世の中には、景気がよくても悪くてもそれほど売上高や利益が変わらない事業もあれば、非常に敏感に影響を受ける事業もあるわけです。

一例として、食品事業と半導体事業の違いを考えてみましょう。人の食事は収入が増えても減ってもそれほどは変化しませんから、食品事業は景気動向にそこまで左右されません。一方、半導体は極めて高額な生産設備を必要とし、好景気のときに一気に設備投資を行い、増産で利益を伸ばします。不況になると各社とも急速に投資を絞りますが、大きな減価償却費が残るため、売上高よりも利益の減少幅が格段に大きく、大手企業が巨額の赤字に陥ることも珍しくありません。

この結果、食品事業を営む会社の株価は、半導体事業を営む会社の株価よりも値動きが穏やかです。さてここで、景気の見通しが悪化してTOPIXが10%下落したとします。TOPIXというのは東証に上場しているすべての銘柄を加重平均した値ですが、それを構成する個々の株価の変動率は、事業がどれだけ景気のよしあしに左右されるかによって変わります。

つまりTOPIXが10%下落したときの各社の本来の株価の下げ幅を考えたとき、A食品会社についてはそれは8%だけれども、B半導体会社については15%だというようなことになるわけです。

このとき、前者はベータ値が0.8、後者はベータ値が1.5といいます。

投資家として知りたいのは、個々の会社が本来以上に株価を下げたかどうかです。仮にA食品会社もB半導体会社も同様に10%下落したとしましょう。このとき、先の数字をもとに考えるなら、食品会社は2%ほど下げ過ぎており、半導体会社は5%ほど下げたりないということになるのです。

景気変動の影響を大きく受けるような事業を営んでいる会社であれば、株価も大きく動いて当たり前、ということを覚えておいてください。

ベータ値を勘案した本来の株価騰落率を「ベータ調整後の株価変動率」と呼びます。さきほどの、A食品会社の8%やB半導体会社の15%です。

proproでは、ベータ調整後の株価変動率と実際の株価変動率の差をとって、相対的な株価騰落率を把握することが可能です。事業にはそれぞれ特性があり、単にTOPIX変動率との差だけを見ていては間違ってしまうのです。

・ベータ調整後 株価変動率 - TOPIX変動率 * ベータ値
・無調整    株価変動率 - TOPIX変動率

3) 分析しやすい会社から手を付ける

最後は「分析のしやすさ」です。proproは各上場会社について星の数で分析のしやすさを示しており、それはこのような意味になっています。

星1または2(赤色表示) 売上高と利益が連動性が低く、分析が困難
星3〜5 売上高さえ分かれば利益予想が外れにくく、分析しやすい

業績を左右するパラメータは無数にあり、それをひとつひとつ予想するのは実に骨が折れる作業です。ごく基本的なものだけでも、売上高、粗利率、販売管理費、営業外損益、特別損益、実効税率、減価償却費と設備投資、配当性向などがあり、ファンダメンタルズに基づく長期投資を行うプロの投資家は、これらを網羅した業績モデルをエクセルなどで組み立てます。

このとき厄介なのは、様々な一過性要因の存在です。その年ならではの事情というのは常にありますから、将来予想を考えるときは、最近の実績値からそれら一過性の要因を取り除いたうえで今後を考える必要があります。

売上高 特需、新商品サイクル、期ズレ、etc.
粗利率 商品構成、リベート、設備投資、etc.
販管費 人員増、広告宣伝費、外注費、etc.

通常、一過性要因は将来については分からないことが多いため、予想自体しないことが多いでしょう。が、時として発生することが予期されるケースも。オリンピック特需や、新商品サイクルなどはその良い例でしょう。

人の将来予測能力が驚くほど低いということには、誰もが納得するものと思います。知るべき情報をすべて入手し、行うべき分析はくまなく実施した。それでも予測しえない事象が世の中には無数にあり、どんなに頑張っても把握しうる限界というのは60-70%なのではないかと思います。

分析を要するパラメータが多ければ多いほどその範囲が縮小することは自明です。ということは、過去・将来のいずれについても、できるだけ一過性要因の少ない、シンプルなコスト構造をもった会社のなかから投資すべき会社を見つるべきだということです。

もちろん、そのような会社の中に今日の株価で投資すべき会社が含まれているかどうかは別問題です。「良い会社を安く買う」には車輪が2つ。「良い会社」だと判定できたとしても、それが「安く」なければ買うべきではありません。

それでも、目の前の良い会社がそれと把握できなければ元も子もありません。そのためにできることとしては、できるだけ予想しなければいけないパラメータが少ない会社を選ぶ、ということになるのです。

proproは5年後の売上高だけを予想パラメータとしており、その他はすべて過去の業績データにもとづいて自動算出しています。限界利益率を複数の方法で算出し、最もふさわしいと思われるものを採用して利益を計算、一過性要因についても可能な範囲で自動把握し、調整しています。

自動計算では、算出値の精度が高いかどうかもある程度把握できるため、これを「分析のしやすさ」として表示しています。星の数が1や2の会社は、予想どおりの売上高が実現しても、利益やキャッシュフローが計算どおりになるかどうかに自信がもてない会社だということです。

逆に星の数が4や5ある会社では、売上高さえ予想どおりに達成されれば、株価を決定づける利益やキャッシュフローの額はほぼ計算どおりになる見込みが高いということです。もちろん例外もありますが、確率的にそうだということです。

いかがでしょうか?決算分析サマリー、ぜひ活用して頂ければ幸いです。


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