3Kチンピラ 4,5ページ目

1だけ炙る。効き目が切れてきた頃には夕方だったので晩酌をするため近所のスーパーに出かけた。
スーパーでは寿司と氷と緑茶を買った。アパートに戻り発泡酒を開ける。寂しいが一人暮らしも4年も越えてもう慣れた。冷たい寿司を食べると家族との楽しい時間が蘇る。父と母、それに弟。捕まったら悲しませるかなと思ったが茜には麻薬を止める程の決意はない
。キマってたのでスーパーの寿司でも美味しかった。発泡酒を飲み終わると焼酎の緑茶割りを飲み始めた。
明日仕事かと思うと憂鬱になる。後輩の社長のタカシも悩みの種だ。いちおう敬語だが完全に舐めきってる。大体後輩なら入ってくる金を丸々くれても良さそうなものだ。先輩に対する敬意が足りない。会社を変えるべきだろうか。人夫出しやバイトでばかり働いてきたので手元や初歩的な作業は出来るが専門的なのはさっぱりだ。ここらで専門的な職業に就くか。しかし人夫出しだとある程度好きに休みをとれるしあまり態度が良くなくても文句を言われないという利点があった。明るく元気よく前向きになんて無理だ。
「はぁ。」
思わずため息を吐いていた。明日から新しい現場で火力発電所で設備の点検と設備の機械磨きだ。タカシは15000円は貰っているだろう。気が重い。せめて後輩じゃなければいいが。8500円に釣られたのが運の尽きか。発電所の仕事は高崎さんという人に貰ったらしく高崎さんも貰った仕事らしい。ややこしいことだ。何でもシャチハタでいいのでハンコを持ってこいという事だった。発電所の近くの大型スーパーで7時に待ち合わせだ。他にタカシの知り合いの県南のヤクザの会社から1人来るらしい。昨日は寝ていないので早めに切り上げて寝ることにした。
 朝。夏だが長袖の作業着を着て超超ロングのニッカを履きキャップを被った俺はアパートを出た。
6時50分位にスーパーに着いた俺は紺色のカローラワゴンを探した。ちょうど駐車場の真ん中にあった。近付くと大柄なのと小柄なのと男が2人いた。
「おはようございます。高崎さんですか?タカシのとこの茜です。」大柄な方の男が応える。
「おはよう。ハンコ持ってきたか?」
「はい。持ってきました。」
「じゃあいいや。もう1人来るから車で待っててよ。」
「はい。」
5分程すると軽トラが入ってきてカローラワゴンの隣に止まりニッカを履いたツンツン頭が出てきた。怒声が聞こえる。
「ハンコ持ってこいって言っただろう!。」
高崎さんの怒鳴り声が聞こえてくる。ツンツン頭がハンコを忘れてきたらしい。よく見ると軽トラの車検も切れている。人の事は言えないがチンピラ丸出しだ。気を悪くしたのかツンツン頭が唾を吐いた。すると高崎さんが袖を捲り上げた。10分袖の洋彫りのタトゥ
ーが顔を出す。それを見たツンツン頭は頭を下げた。高崎さんがクラクションを鳴らす。付いてこいという事らしい。カローラワゴンに軽トラとワゴンRが連なって走り始めた。5分程すると大帝建設という会社に着いた。高崎さんと小柄な男が車から出て中に入っていったので茜とツンツン頭も車を降り付いていく。
「ここでツナギに着替えるから。適当にあそこから探して。」そう言って部屋の隅を指す。その時部屋の扉が開いた。
「おう高崎。ハンコ持ってこさせたか?」
「城島さん。このツンツン頭、田中っていうんですけど忘れたらしいです。」
「なにぃ?100均もやってねえしな。ま、いいや。明日必ず持って来いよ。」
「申し訳ないっす。明日必ず持ってきます。」田中が答える。
田中という名前らしい。すっかり大人しくなったようだ。俺に話しかけてくる。
「田中といいます。何さんですか?」
「茜でいいよ。田中は何歳?」
「21です。何歳ですか?ハンコ持ってきました?」
「持ってきたよ。あんま怒らせんなよ。あの人達多分山影会の関係者だぜ。」
「うちの社長もっす。まあ1コ下なんすけどね。」
「お前のとこもか。うちの社長も1コ下で山王会だよ。むかつくよな。」
「本当っすよ!車検切れの車で1時間半も走ってきたんですよ!しかもこれから毎日。むかつきますよ。いつか金属バットでぶん殴ってやる・・。」
「はは。」
「冗談じゃないっすよ。」
「わかったわかった。さっさと着替えよう。」そこに高崎さんが話しかけてくる。
「おい田中、お前の軽トラ車検切れてんの?」
「はい。会社の車です。」

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