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サウナそのものの危険性とは

 この note では、サウナに関する種々の論文を紹介し、サウナ健康にいいよーとおすすめばかりしていますが、先日、職場の人と雑談していて「サウナは血液ドロドロになって危険だ」みたいな認識を持っている人も少なくないということが分かりました。

 また、ちょっと前に、サウナで多くの人が亡くなっているという誤解についても論考しました。

 今回は、サウナそのもののリスクに関する研究論文を探してみました。検索に使ったのは、論文検索界のファンタジスタ google scholar 先生です。

 まず英語論文について、「sauna risk」と入れて検索してみました。その結果、サウナそのものが危ないというものは見つけられませんでした。出てきたのは、循環器疾患のリスクを下げる、呼吸器疾患のリスクを下げる、脳卒中のリスクを下げるといったものばかりでした。残念。

 次に、日本国内でサウナの危険性に関する論文はないかと、日本語で「サウナ 危険」と入れて検索しました。日本ではサウナに対するネガティブ・イメージを持っている人も少なくないのだから、研究もあるでしょ!と思った訳です。

 そしたら1件ヒットしました。論文のタイトルは
「サウナによる顔面重症熱傷の1再建例」
という症例報告でした。あとは外国と同じで、リスク下げる系ばかりでした。この論文のリンクは以下になります(日本医科大学雑誌 2009; 5; 225-227)。実際の治療経過の写真も掲載されていて、グロテスクな画像が苦手な方は、見ない方がよいです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/5/4/5_4_225/_pdf/-char/ja

 この症例と同様に、サウナでの熱傷の論文が何本かあるとのこと。なので、サウナそのものの危険性は「熱傷」が重要になります。

 確かにサウナの床や壁は熱いかもしれません。100℃を超えるようなサウナでは、床が無茶苦茶熱くて、歩くのに難儀するところもあります。通常、床にはバスタオルが敷いてあるのですが、バスタオルがなかったりして、足の裏が直接床に触れて、アチチチチとなったことあります。

 背部の壁に背中が触れて、アチチチチとなることもあります。気体の熱伝導率はそれほど高くないのですが、個体は熱がこもって熱いのでしょうね。今度、温度計で計測してレポートしようと思います。

 それでは、本論文の症例はどのような状況だったのでしょうか。
・男性 60代 糖尿病
大量飲酒後にサウナに入室
うつ伏せの状態で意識消失
1時間後に救出され、救命センターに搬送

 というものです。いやまぁ、サウナ危ないですよねぇ。でも、この症例はどちらかというと、サウナが悪いというよりも、アルコールが悪いんじゃないでしょうか?と控えめに言いたくなります。

 床にうつ伏せの状態にあったということですが、バスタオルが敷いてあったとしても、けっこう熱かったかもしれません。

 論文によると、熱傷は低温火傷と同じ状態だったということです。低温火傷というのは、例えば、コタツや湯たんぽみたいな40~50℃程度のものでも、長時間触れていると火傷してしまう状態を言います。ただし、火に直接触れたように、直ちにただれてしまうわけではありません。徐々に皮膚の内部を壊してゆくイメージです。

 低温火傷に関する分かりやすい解説は以下にあります(リンク先は川崎幸クリニック)。

https://saiwaihp.jp/kenkoujyukuch/contents/contents/lowtemperatureburn.pdf

 加えて、糖尿病の方というのは、低温やけどを起こしやすく、重症化しやすく、治りにくいという特徴もあります。なので、この患者さんにおかれましては、様々な不幸が重なってしまったとしか言いようがありませんね。

 もう一つの不幸は、誰にも声をかけてもらえなかったということもあるかもしれません。サウナ好きの皆さま、もし床で寝ている人がいたら、「やけどになるから」と声をかけておこしてあげましょう。2サイクル目、3サイクル目にまだ寝てたら、明らかに変ですから。

 という訳で、結論です。眠ってしまい熱傷になる危険性があるから、酔った状態でサウナに入るのは止めましょう。

 てか、どこのサウナや健康ランドでも、の入り口には「酒に酔った状態での入室お断り」の掲示がありますので、看板は伊達じゃないですね。

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