[最強の感情サイクル2選!]仏教の唯識と脳神経科学から
2000年以上前に体験的知識として発見整理された仏教の唯識教学と最新の脳神経科学の研究成果が全く同じことを言っていたことに感銘を受けました。
そこでこれらの知識を整理してまとめてみようと思います。
読んだ書籍は以下です。
最初に
この記事では唯識の心所法と神経伝達物質(ドーパミン)の関連性についての説明とどのように日常に活用すべきかについての知見をまとめたいと思います。
モチベーションの発揮方法
ストレスとの向き合い方
集中力を高める方法
反響を見て有料記事にすることも考えておりますので、無料のうちに読めたあなたはラッキーです。
まずは簡単に唯識と脳神経科学について説明します。
思考回路について
尋(DMN)、伺(CEN)、念(SN)
なにやらわけのわからない単語が並んでいます。
ですがなんとなく仏教用語は漢字で、脳神経科学の単語はアルファベット(カタカナ)で現れてくるというのは想像できるかと思います。
脳神経科学では3つの脳神経回路についてこのように説明しています。
Default mode network: 無意識状態に近い。白昼夢のようなぼーっとしている状態
Central-executive network: トップダウンで指令を出す状態。思考、意識的な注意
Salience network: DMNとCENを切り替える。体の内部環境の変化に気づかせるための刺激に反応する機能。前帯状皮質(ACC, Anterior cingulate cortex)がなにかおかしいとアラート情報を島皮質に届け、島皮質の前側(AI, anterior insular)が異変の強度を主観的にジャッジする
ボーッとしているとき(DMNがはたらいているとき)に友達から「ワッ」と言われて驚くと、ビクッと無意識に反応します。その時にACCがが何らかの異変を伝えます(SNによる切替)。
その後どの程度びっくりしたか等を含めて考えます(CENがはたらく)。そして今びっくりしたなとびっくりした自分に気づきます。
これが脳神経科学におけるメタ認知のプロセスです。
続いて仏教においての説明です。
尋: 対象をおおざっぱに思いはかる
伺: 認識の対象を詳細に思いはかる
念: 気付く。記憶する
仏教においては禅定、つまり瞑想の集中状態を段階的に上げていくときにこの用語が使用されます。詳細は省きますが、基本的な瞑想には4段階があり(四禅)、思考や感情を徐々になくしていき、最終的に純粋な集中状態を作り出していくというプロセスによって、気付きを得る(念)という手法を取っています。
人間の思考回路は3つあるということが仏教と科学において共通しているということを、ここでは抑えておきましょう。
モチベーションについて
信(vmPFC)
信という用語は大乗仏教の心所法において善のグループに属しています。
意味は、自己を真理に委ねる(不信を制して善を楽う(ねがう))ことです。
知情意の3つの側面から成り立っています。
実の信認: 存在する全てのものごととそれを貫く法則を信じて認識する
徳の信楽: 仏法僧の三宝を信じて願う
能の信欲: 善いことを行う自分の能力を信じて意欲を持つ
簡単にいうと眼の前の現象の信実と、こうあるべきだという信念と、能力に対する自信があるということが、前に進む力になるということでしょう。この記事を書くときのモチベーションに当てはめてみるとこんな感じです。
実: スキの数が100を超えているタイトルを分析してみると、「〇〇10選」や「最初に抑えるべき〇〇」「〇〇なんて最高じゃん」等、数字やベストといったワードをつかっていることが多いな!
徳: 有料記事で何万円も稼げるなんて夢のある話だな!
能: これまで本を読んで学習した知識があれば俺にもできる!
脳神経科学においてはエピソード記憶と情動の記憶が結びついた「価値記憶」や「体験学習」との関連性がありそうです。
体験学習とはエピソード記憶と感情記憶の和分であり、繰り返しにより脳内の独自パターン学習により価値記憶へと変遷し、腹内側前頭前野(vmPFC)に保存されることで事象を価値として認識できるようになり、LIKE反応を示すようになることです。
ちなみに「BRAIN DRIVEN」著者の青砥さんによると高いモチベは、腹側被蓋野(VTA: Ventual Tegmental Area)とSN(黒質, Substantia Nigra)から出るDA(ドーパミン)が影響して、以下の情動を導きます:
SEEK: 未学習の快。自分にとって何かよさそうだ、快の可能性に近づこうとする好奇心、探究心。曖昧性のリスクを背負った上でのモチベのためWANTより高等
WANT: 学習済みの快の情動を再度味わいたいという情動。人の経験に依存するので、記憶が重要な役割を果たす
TRY: より困難なタスクに挑戦してみようと考える状態、DAが枯渇しているとチャレンジ意欲がなくなり諦めやすくなり、簡単なことをやってそこそこで済ませる。コルチゾールのやめたい感情を抑える。
LIKE: 学習済みの快の認知。価値的な記憶から引き出されるこれは良いもの、好きなものという感覚がDAを誘導する
「出来事Aが起きる」→「エピソード記憶Aが形成される」→「感情記憶Aが形成される」→「LIKE、好きという認識が形成される」→「繰り返す」→「エピソード記憶と感情記憶の回路が太く結ばれる」→「セットで価値記憶として保存蓄積される」
まさに出来事(実)がLIKE(徳)となり、繰り返すことでできるという自信や意欲(能)とつながっていく仏教が説明するプロセスと一致します。
欲(ドーパミン)
欲とは意欲のことを指します。希求することです。現代でいうところの欲望のことは愛(渇愛)や取(執着)等といいます。
これは願わしい対象に対して希望することです。先程の信について説明した言葉を借りれば、徳を実現する能を欲することです。
勤(後述)の拠り所となります。
この欲のはたらきは、神経伝達物質のドーパミン(DA)そのものです。
SEEK: 自分にとって何かよさそうだ、快の可能性に近づこうとする好奇心、探究心。曖昧性のリスクを背負った上でのモチベのためWANTより高等
WANT: 学習済みの快の情動を再度味わいたいという情動、人の経験に依存するので、記憶が重要な役割を果たす
TRY: より困難なタスクに挑戦してみようと考える状態、DAが枯渇しているとチャレンジ意欲がなくなり諦めやすくなり、簡単なことをやってそこそこで済ませる。コルチゾールのやめたい感情を抑える。
DAには、短期記憶を頭に留める情報処理能力を高め、自分が向けたい対象にだけ注意を向けるトップダウン的な注意力を高める(余分な情報を排除する)効果があります。
DAは記憶に関連する海馬(エピソード記憶を司る)と扁桃体(感情的な要素の記憶を司る)にも照射され、ある出来事を思い出すと、そのときの情動も一緒に思い出します。
行動を開始する情動(イニシエーション)行動を誘引し、その後刺激を得ると出にくくなります。
βエンドルフィンという快楽物質を誘発します。
瞋(ノルアドレナリン)
瞋は根本煩悩に分類されるなかでも、特に三毒として知られる貪瞋癡の一つです。排除する心のことです。
椎名林檎さんの三毒史という音源も仏教の煩悩からとっているのでしょうか?
瞋は以下の小煩悩の元になります。
忿:腹をたてて危害を加える
恨:うらむ
惱:他を悩ませる
嫉:ねたむ
害:いのちへの思いやりをなくす
ノルアドレナリン(NA)はFight or Flight(闘争または逃走)の役割を担い、交感神経と連動して放出される神経伝達物質です。
避けたい、嫌い、大変と感じる作業に向き合うとき、ノルアドレナリンが出やすくなります。
NAが出ると情報処理機能が高まりますが、同時にノイズにも注意が向きます。NAによって脳が様々な情報にアクティブになると、周囲の雑音が気になってしまいます。
NAはコルチゾールというストレスホルモンを誘発します。
ノルアドレナリンが戦闘準備をし、コルチゾールを出すときにそれが実際の感情としてあらわれるというような関係性でしょうか。
後述する勤は、このノルアドレナリンの情報処理機能を活用します。
勤
仏教では勤は懈怠を制して善の完成に力があるとされます。精進ともいいます。
八正道の中の正精進は以下の四つで成り立っています(大念處経)。
律儀断: まだ心に生じていない悪意や不健全な状態が生じないように取り組む
断断: 心に生じた悪意や不健全な状態は放棄しようと取り組む
随護断: まだ心に生じていない健全な状態が生じるように取り組む
修断: 心に生じた健全な状態は維持し、その健全な状態が消えずに、広がり、大きく成長し、完全なものになるように取り組む。
ノルアドレナリン(NA)とドーパミン(DA)が適度に出ているときは、あらゆる学びにとって最高な脳の状態です。ストレスの起点となるNAは対象シグナルへの認知性を高め、ドーパミンドリブンなモチベにアドオンされます。
DAは行動や情報と接する前に先立って放出され、実際に情報に接し行動するときにNAが合成される。DA量が多いほど、困難に向かい集中しやすくなります。
やりたい理由、意味、意義を見出して眼前にSEEKしている状態ともいえます。
DAとNAが両方出ているときの高いモチベーションを勤と呼ぶということでしょう。
安(セロトニン)
これは深い瞑想状態に入って煩悩の束縛から逃れたときに初めて躍動する善のグループに属する心所です。随煩悩である昏沈(気持ちの落ち込み)を制する働きがあります。
セロトニンは一定の光量を浴びたり、単調リズム運動によって合成されます。痛み等で誘導されたコルチゾールのストレス反応を平衡状態に戻すためにβエンドルフィン等とともに放出されます。
また瞑想中の呼吸への意識は自律神経のバランスを整え心理的安全性に大きく影響を与えます。複合的な効果が合わさって「安」という心所となっているように思われます。
定(集中)
観察の対象に集中するはたらきです。念(気づき、メタ認知)を拠り所とします。心一境性(心が一つになる)ともいわれます。
DA、NA、βエンドルフィン、セロトニンが同時にでている状態は、注意の対象が定まっており、集中力や発想力、記憶力が高まりやすくなっています。
このときに注意を対象に向けていることで高い集中を生み出します。
慧(dlPFC)
定を拠り所とし、観察対象の得失や正邪を判断するはたらきです。
背外側前頭前野(dlPFC)は価値記憶やエピソード記憶、感情記憶をふんだんに参照して過去の経験から類推して物事を判断します。
しかし誰かに言われて作業しているときなどのストレス状態では、この脳部位は機能しません。内向きの集中によって、自分にとっての意味が理解できているときに、深い納得感とともに意思決定を下すことができることをこの「慧」という心所が表しています。
自制心について
慚愧
善のグループで自制心としてはたらく慚愧という二つの心所があります。
慚: 自らを顧み、また、教えに照らして恥じる
愧: 他に対して恥じる
書籍だとこのような説明ですが、これはデフォルトモードネットワーク(DMN)とセントラルエグゼクティブネットワーク(CEN)との関係で考えると分かりやすいでしょう。
CENが自分の世界に入って考察を深めているとき、ふと周りに目が行き自分がおかしなことをしているとハッとします。そして恥ずかしいという感情が芽生えます。これが慚です。
たとえば歩きスマホに集中して周囲の人を危ない目に合わせていることがメタ認知できたとき、恥ずかしいことだと思えるようになります。
それは自分を変えるチャンスです。
前を見て歩くことより大事なことはそうそうないのです。
DMNがぐるぐると思考を巡らしているときに、ふとこのまま行ったらどうなってしまうのだろうと考えハッとします。恐ろしいという感情が芽生えます。これが愧です。
自宅警備員がふと未来について考えて恐くなったなら、それは怠けている自分を変えるチャンスです。案じた行く末に向かっているから、今に安心できるようになるのです。
このようにDMNとCENとが切り替わる瞬間にSNが働きます。念はそのときの気づきのことです。
ところで、中煩悩というグループに属する無慚と無愧の2つは、不善心すべてに相応します。
無慚:自らを顧みず、また、教えに照らして恥じない
無愧:他に対して恥じない
それぞれ恥知らず、恐れ知らずということです。
周りを見渡して観察するところの「実」と照らして恥ずかしいという気持ちや、このままいったら恐ろしい結末が待っているというリスクに気づくためには、念(気づき、メタ認知)が必要なのです。
パフォーマンスを爆速で高める流れ
ここまでを整理すると大きく2つの流れが理解できます。
信 念
⇓ ⇓
欲 定
⇓ ⇓
勤 慧
⇓
安
信⇨欲⇨勤⇨安
集中力と記憶力を高めるための流れが左側です。
出来事と法則からなる「現実」と、あるべき「理想」と、自分の「能力」を信じます。
理想が現実になることに対してワクワクすることでドーパミンが出ます。このときに意欲的になります。
眼の前の作業に臨むも、簡単なことではないので「もう逃げたい」といったストレス反応がでます(ノルアドレナリン)。このノルアドレナリンが注意力や学習効率を高めるということを理解しておくことが、心理的に向上心として機能します。
さらに作業を進めると、ノルアドレナリンによってコルチゾールが誘発されストレスが高まりますが、しばらくするとそれを抑制するために合成されるβエンドルフィンとセロトニンが快感を催します。これによって安心感が生まれます。
このように自分の脳内でホルモンが機能していることを自覚することで、感情が認知され、モチベーションを高めることができます。
何をするにもとりあえず信じることから始めましょう!
今どんな状況で、どんなふうになりたくて、そのためにどうすればいいかを思い出すのです。
念⇨定⇨慧
もう一つが脳の神経回路の流れです。右側の自覚や気付きについてです。
なにかの拍子に、考えごとでボーッとしていたり(DMN)、考え込みすぎて(CEN)周りが見えていない自分に気づきます(SN)。メタ認知です。このときの恥ずかしさや恐ろしさを大事にします。
集中します。
集中力が高まった状態で得失を判断し、最善択を選び取ります。
このようにして最高のパフォーマンスで選択したことには、迷いが生まれません。迷いのない状態は心理的安全性につながり、また集中力を生み出します。
これがモチベーションの好循環を生み出します。
そして多少のストレスは脳のパフォーマンスを上げてくれるのです。
2,000年以上前の仏教と、
最新の脳神経科学が、
たどり着いた全く同じ結論は以上です。
終わりに
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一緒に世界をより良くしていきましょう!
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