「世界最先端ミネルバが徹底して創り出した ”認知多様”な学び場とは」
こんにちは、Project MINTファウンダーのTomoeです。
私は2017年に、完全オンラインのミネルバ大学の社会人向け大学院を受講しました。米国西海岸に拠点を持つミネルバ大学という、2014年に創設された、キャンパスを持たない、授業は全てオンラインでアクティブラーニング、学びの科学が融合した先進的な教授法ということで既に、学生から人気な学校で合格率は2%をきる、狭き門の学校でした。
世界中から、次世代リーダーを志す学生たちが集まり、
私が受けていた大学院プログラムはまだ新設されたばかりのプログラムでしたが、7名のクラスメイトと共に2年間学んでいきました。
その経験から、ミネルバがどんな学び場だったのか、私の観点でご紹介していきたいと思います。
コンフォートゾーンを超え、ラーニングゾーンに到達する
真に人が学ぶとき、コンフォートゾーンから、Fear Zone(やりたくない言い訳などをつけて抵抗すること)を超えた先に、Learning Zoneに到達し、チャレンジと向き合う事で新しいスキルを習得できる状態になります。
コンフォートゾーンのなかで、自分に慣れ親しんだ居心地がよい状態では、新たな気づきや知識は身に付けにくいです。
それを様々な視点のアイディアを持ち寄る事で、意図的にコンフォートゾーンを超えるような環境を創っていきます。
それがミネルバの学び場の大まかなコンセプトです。
自然に様々な視点のアイディアを模索できる環境とは
そんな環境を効率よく実現させるには、様々な異なる価値観やバックグラウンドの多様なメンバーを集め、クラスで議論をさせることです。
それは、
「認知多様性」に富んだチームがより良い成果をもたらす、という研究結果にも裏付けられています。
「認知多様性」とは、論理の立て方、問題の捉え方、解決の仕方などの認知プロセスの違い、多様性のことを指します。多様な考えを受け入れる認知多様性レベルが高いチームほど、課題解決で素早く高い成果をあげるといわれています。(参照情報)
誰しも、問題解決のアプローチの仕方は違いますよね。
特に、いま、不確実でますます世の中の問題が複雑化している中、
固定化されたパターンでみんなが同じような視点をもち、問題を捉え、解決のアプローチをとるのでは、革新的なアイディアは出てきません。
それぞれ持ち寄ったアイディアを出し合い、どのようにしてその考えに至ったのかをお互い理解し合いながら、異なる観点を見比べて、どれが最適なアプローチが取れるのか?と規律の維持、ルール破り、新しいアイディアの公安など「ああでもない、こうでもない」と揉み合った後に、その状況に沿ったより良い案を生み出して行きます。
これまでの「正解」がある前提で組み込まれた従来型のクラスでは、規律の維持が重視され認知多様な場とは言えなかったと思います。その点、ミネルバのクラスでは複雑な課題に対して、解決案を出来るだけ多様な視点(時には、極端に正反対のアイディアを批評する機会)が持ち寄れるよう工夫がされています。
そんな認知多様性を担保するような学び場を創るため、ミネルバが工夫している4つのポイントを紹介します。
1.多様な人材をリクルーティング(生徒・講師陣)
ミネルバの生徒の78%は米国以外が出身国の学生になります。
親の所得ステータスで多様性を失われてしまうことを防ぐため様々な奨学金のオプションがあったり、Work-studyプログラムというミネルバでインターンをしながら働きながら学ぶ機会も持てます。
そして生徒だけでなく、講師陣も、ある偏った文化圏から採用するのではなく、幅広い経験、年齢、分野のエキスパートから採用するよう工夫がされています。
2.全員が同じ量を発言・貢献する仕組み
授業中、生徒が平等に発言をするよう促す工夫が、オンラインシステム上で組み込まれています。例えば、生徒が全員平等な発言時間を持つようシステム制御され、先生が生徒を適切に指名することで貢献度が平等になるようコントロールします。外交的な性格の生徒が指名されやすくなるという先生バイアスも防ぐようになっています。
こうすることで、全員が発言することで自分たちのアイディアを持ち寄れ、グループの中で認知多様性が担保されるようにしていきます。
発言時間が赤い生徒は相対的に発言量が少なく、多い生徒は緑、など可視化される仕組み。
3.徹底した少人数で安全な場創り。
アイディアを持ち寄り、全員が消化できるようにするために最大18名のクラスとなっています。このくらいの規模が、多様性も持ちつつも、誰がどんなことを考えているのかがわかるというバランスです。講師も生徒一人一人の発言のサポートに注意が払えます。
また、少人数だからこそ、心理的にも安全な場を創り出し、自分のありのままを出すよう推奨され、お互いジャッジをしない場を創り出します。安全な場だからこそ、お互い議論においては、本音で自分の考えを組み立て、知的にチャレンジし合っていきます。
4.共通のゴールがある (パーパスの合致)
クラスメイトは多様なメンバーではあるものの、授業の中では共通の暗黙ルールがあります。それは一人ひとりが「コンフォートゾーンを超えて互いに知的好奇心を深める。」というようなものです。それがあるからこそ、みんなが同じスタンスで授業に臨めます。考えやバックグラウンドがバラバラだったとしても、進んで違いを明確にし議論を始めていこう、と言った共通意識は必要になってきます。
ミネルバの場合だと、「未解決課題に挑みたい」といったパーパスを持った生徒が共通のゴールであるでしょう。入学試験の審査項目でも「あなたはどんな問題を解決したいですか?」というものが設けられています。
だからこそ授業では自分たちが未解決課題に挑んでいくよう知識をアップデートし続けていくんだという連帯意識を持ちながらお互いコンフォートゾーンを超えていくようなカルチャーを作り上げて行きます。
2年間、「認知多様性」が担保された学び場で学んだ経験は私にとって貴重でした。
この21世期型の学び場こそ、ますます複雑化していく時代の中で、子どもだけでなく大人も必要だと強く感じました。
そこで、ミネルバをを卒業後、私は
「日本の大人が、自分の可能性を認知多様性の中で磨き、お互いシナジー発揮する学び場を創りたい」と想い、Project MINTを立ち上げました。
“いまの大人にとって本当に必要なラーニング”
認知多様な場で学び、
コンフォートゾーンを超えて、ラーニングゾーンへ到達できる場を創りたかったのです。
日本人だけで多様性を担保することは可能なのか?また認知多様性を保つことを前提としたカルチャーがあまり一般的ではない日本でこのような場を作れるのかと当初は私自身も不安でしたが、そんな心配は不要でした。
日本の大人の中にも本当に様々な多様性があることに、実際の受講生と向き合って実感しています。この多様性が、クラスの中の認知多様性につながって行きます。
MINTでは年に3回、10週間の学びを10人の大人で学んでいくプログラム「自己革新コース」を運営していますが、
そこでは、最初の3週間、「自己認識」に取り組みます。まず自分の中の多様性に気付きながら、メンバー 一人一人のありのままの自分らしさを出し、深い対話を通してお互いのことを知っていきます。そこでは自分自身の多様性へ気づき、さらにメンバーのそれぞれの人生経験に共感したり違いを理解し受け入れていく「安全な」土壌を作ります。そこでいろんな面の自分がいてもいい。いろんなメンバーがいてもいい。という共通言語が出来上がるのです。
その土台を作った後、様々な社会課題について議論をして行き、自分の意見もブラッシュアップしながら様々な視点を交換し合い、自分のこれまでの常識をアップデートしていきます。どんな批判的なことを言ってもジャッジされないという「安全な」土壌があるからこそ、様々な視点を交換し合えるのです。心理的安全性を作りだすことは、認知多様性を作る上でも相関があると言われています。
その中で「本音でありのままの自分を出そう。」「メンバー間の違いを楽しんでいこう」という共通のルールをMINTではクレド(信条)として全員が守っています。
これまで1期から4期まで運営しましたが、毎期のメンバー10名が創り出す多様性はそれぞれの形があり、運営する私も毎回新たなアイディアが醸成されることを楽しませていただいています。
例えばクラスで扱うケーススタディの解釈や解決案へのアプローチは、毎期違うアイディアが出てきています。
私の究極的なゴールは、いま、MINTの学び場で「認知多様性」を生かしていることを、
もっと、広く日本の学び場と職場へと拡大させて行きたい。
日本の中で語られている現状の「多様性」や「ダイバーシティ」の考え方をアップデートしていきたいです。
なぜ多様なメンバーが参画する必要があるのか?の問いに対して、「よりよく一人ひとりが学び成長するため。そしてグループとしてより良い課題解決の成果を出すため。」というように。
そして日本の様々な学び・働くチームの中で「認知多様性」が推奨され、一人でも多くの個人が可能性を発揮させて行って欲しい。
そうすることで、様々な分野で、これまでの問題解決から一歩進んだアプローチを取れ、構造的な問題だと言われた根深く複雑な課題も、改善に向けた新しい変化を創れると信じてます。
まだまだそのジャーニーは始まったばかり!
以上