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感染症に対する東洋医学

新型コロナウイルスをどう読み解くか? 
大上勝行

1. はじめに

 新型コロナウィルスの蔓延によって、5月に予定していたロサンゼルス講演が延期になってしまいました。事態の終息には時間がかかりそうで、普段の臨床にも支障をきたしてくると思われます。

 われわれに今できることは、一般的には、ウィルスに感染しないよう、または感染を拡げないように、手洗い・うがい・消毒などの公衆衛生的な予防に努めることです。

 また医療に携わるものとしては、患者に対して、治療も含めた適切な処置や情報提供ができるようでないといけません。
 新型コロナウイルスに関して、われわれをたよりにする患者は大きく二つに分けることができるでしょう。たとえば、

1,ウイルスに感染しないように体調を整えたい人
2,感染者で、東洋医学的にアプローチしたい人

 いずれにせよ、東洋医学でいうところの元気、一般的には免疫力を高めることが大切です。

 まず最初に、よくいわれる「東洋医学で免疫力を高める」といった漠然とした考えについて、詳しく考えてみたいと思います。ただ単に「東洋医学は免疫力を高める」といういい方だけでは、怪しげな健康食品屋と変わりません。専門家として詳しい仕組みを理解した上で、患者には簡単な言葉で分かりやすく説明できるようにしましょう。

 なおここでいう「免疫」や「免疫力」という言葉は、西洋医学や公衆衛生でいわれるものとは少しニュアンスが違うかもしれません。一般的いわれている「免疫」について、東洋医学的にどうみるのかという主旨でお読みください。


2. 免疫

 免疫とは、東洋医学においては、何にあたるのでしょうか?コロナウイルスに限らず風邪やインフルエンザなど、人の身体の中から起こる病気ではなく、外から入ってくる病気は外邪と呼ばれます。ある時期、地域によって、特定的に多くの人が罹患する病気、感染症・流行り病といわれるものは、外邪による病だといえます。

 東洋医学では、この外邪の侵入に対して、抵抗する力、正気や元気、衛気とよばれるものが免疫力に相当します。

 ここで言語の統一をしておくと、正気と元気はほぼ同じもので、人が生まれつきや元々もっている、素養や体質といわれる、根源的な力のことを指します。ここでは元気と統一します。

 そしてその根源的な力を原動力として、外邪の侵入に対して、体表面で直接的に防御にあたるのが衛気です。

(1) 元気

 病気の出方や軽重、予後などは、この外邪の種類によって大いに変わってくるのですが、もう一つ大切なのは、病を受ける側である人間の元気です。いわゆる「あの人は丈夫だ」とか「生まれつき虚弱だ」とかいわれる生まれもっての元気の強弱です。また糖尿病や腎臓病などの慢性的な疾患を持っている人も、この元気が損なわれています。

 東洋医学では身体が元気であれば、病気にはならないという原則があります。五臓の気がそれぞれ充実していてバランスを保っていれば、もちろん内側からは病気にならないし、外からの病気にも侵入されることはない、というのが原則です。

(2) 衛気

 この元気の後押しを受けて、実際に体表面で外邪の侵入に対抗するのは衛気です。衛気は水穀が脾胃で腐熟され作られた気で、脈外を巡り、主に体表を巡り守ります。腠理の開闔を管理し、汗や体温の調整をして外邪の侵入を防ぎます。この衛気の働きは肺の支配を受けています。

(3) 外邪とのせめぎ合い

 東洋医学では、これらの元気と衛気の力が身体を守る力が、一般的に言われる免疫力と同等のものであるといえるでしょう。体表面におけるこれらの守りと外邪とのせめぎ合いが、感染するかどうかのポイントになります。
 たとえば、インフルエンザが猛威を振るっているときでも、かかる人とかからない人がいます。東洋医学では元気が充実しており、衛気の守りがしっかりしていれば外邪に侵入されない、つまり病気にならないと考えます。

コロナウィルス00

 また外の守りが破れ侵入された場合でも、どれだけ内側への侵入を食い止められるかは、元気と外邪とのせめぎ合いの結果です。病気というのは罹った、治った、で終わりではなく、罹ってからどのような経過をたどって悪化していくか、はたまた快方に向かうかといった経過が大切で、治療に際しては、その時その時に適切な判断と処置が求められます。

 このように衛気が負けて外邪に侵入され、罹患したあとでも、身体の免疫力、つまり元気の強さが、病気の進行や回復に大きなポイントとなります


3. 外感病の仕組み

(1) 外邪

 コロナウイルスに限らず、外から入ってくるものを外邪といいます。古典医学的には六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)のいずれか、もしくは重なったものとして鑑別して治療します。

 六淫の邪にはそれぞれ性質があり、その性質によって留まる部位や病気の現れ方も違ってきます。

 たとえば風の邪は陽の性質があるので、同じ陽の性質を持つ衛気をまず傷ります。衛気が虚すと、その支配部位である皮毛の守りを失うので、発熱し汗が漏れ出て悪風がします。そうして風の浮揚させるという性質によって、衛気が本来の猛々しい性質を失うので、脈証は緩を現します。これを中風病といいます。

 また寒の邪は陰の性質があるので、同じ陰の性質を持つ営気をまず傷ります。そうすると血が冷えて滞るために、悪寒や頭痛・頸強・腰痛などの症状が出ます。陰陽ともに陽気を失うので、脈証は緊を現します。これを傷寒病といいます。

 これらは外から入ってきたときのまず最初の病気です。身体の元気が回復して衛気営気が回復し、侵入を防ぎ、変調を改善することが出来ますが、元気が回復せず、外邪の力が強ければ、内攻されて重症化します。臓まで及ぶと、肺炎などの重篤な病気になることもあります。

 このように六淫に侵入されたあとに発病した病に対して、「中風」や「傷寒」という病名がつけられます。これらは、いわゆる病気モデルのパッケージで、表面的に分かる病症や脈証だけでなく、身体の中で起こっている陰陽虚実寒熱の変動が分かるようになっています。

 「このような病気に罹ると、身体の中でこのような変化が起こり、この部位が侵され、このような病症が出て、このような脈が現れますよ」
というモデルケースを示してくれているのです。

 ですから、新型コロナウイルスに限らず、未知の病であったとしても、四診によって病症や脈証から体内で起こっている変化を把握し、これらモデルケースを参考することで、診断し治癒に導くことができるのです。

(2) 熱症と寒症

 たとえば、傷寒にかかったときには、大きく分けて熱症と寒症に分けることができます。

 ここで注意していただきたいのは、経絡治療学会の証分類でいうところの「熱証」「寒証」とは少し違います。経絡治療学会でいう「熱証」は陰虚や陽実を表す言葉で「寒証」は陽虚のことです。ここでいう「熱症」は熱症状のこと「寒症」は寒症状のことです。

 衛気の守りが及ばず表が寒に傷られると、まず太陽経に寒が停滞します。寒は陰性で閉じる性質がありますから、体表面での陽気の循環や発散がうまくいかなくなります。この陽気は元気に由来します。

 「熱症」は、元々強壮な人が寒邪とのせめぎ合いに負けておこります。寒によって体表は閉じられ、発散できない陽気が熱として体表部に停滞した状態のことです。ここから先は、この熱が邪となって病を起こします。陽気が回復してこの熱に勝つと病気は回復し、陽気がこれをせき止めることができないと、この熱が内攻していきます。

 「寒症」は、元々虚弱な人が寒邪とのせめぎ合いに負けておこります。熱症は陽気が停滞して熱症状を現しますが、虚弱な人は停滞するほどの陽気がないために、寒症状を現します。そして元気が弱くここでせき止められない場合は、この寒が内攻していきます。

コロナウィルス02

 熱症、寒症ともに、寒熱の所在する部位によって、病症や脈証が違ってきます。

(3) 病の進行

 体表部、つまり太陽経でせき止め耐えることができなかったときには、邪は内攻していきます。外邪が侵入して中風や傷寒のように定着すると、その部位の虚実寒熱となり、それが内攻していきます。そこで内攻するか、押し返して回復に向かうのかは、発生した邪と元気とのせめぎ合いになります。

 その時に停滞する部位と浅深によって、病症は違ってきます。『傷寒論』が特徴的なのは、各病変の第一条にそれぞれの経が罹患したときの病症や脈証があげられていることです。

 たとえば太陽病は「太陽の病たる、脈浮、頭項強痛して悪寒す」(『傷寒論』太陽病上01)とあり、これは太陽経とその支配部位である体表部に、何らかの病変が起こったときに、起こる病症と脈証について述べられています。太陽経というのは身体の最も外側である皮毛の部位を支配するので、そこが侵されると、発熱・悪寒・悪風・関節痛などの体表面の病症が現れます。また太陽経絡上にも変動があるので、頭痛、項背強、腰痛などの太陽経の病症も現れます。ここにあげられた「頭項強痛」「悪寒」というのはその例に過ぎません。また体表部に変動があるので、脈は「浮」を現します。

 このように病の内攻とともに病変のある経絡も替わり、病症や脈証も変わります。経絡というと鍼灸師は経絡人形に書かれているような経絡の走行図を思い浮かべますが、実は経絡は身体を立体的にも支配しているのです。体表面から陽経(太陽・陽明・少陽)、陰経(太陰・少陰・厥陰)に支配され、それぞれの経に特徴的な病症や脈証があります。

 ですから、これらを理解していると、病の位置が分かるのです。刻一刻と変化していく急性熱病においては、特に今現在、どこがどのように病んでいるかを的確にとらえないと、治療が逆になることもあり、治癒に導くどころか悪化させてしまうこともあります。


4. 治療

 治療に際しては、病の場所(表裏・経絡)、性質(虚実・寒熱とその程度)を知ることが大切で、素因(素養・体質)や病因(六淫)はそれを紐解く参考になります。

(1) 経絡治療と外感病

 経絡治療では、臓の精気の虚が病気の原因であり始まりです。精気とは各臓が持つ原気のことで、精気の虚がなければ臓は病みません。前述した身体の元気が充実していれば、病気にはならないという話と同じです。ただし、すべての臓が完全に充実し、バランスを保っていることはありません。これが生まれつきの素養であったり、体質というものです。

 五臓には身体を運営していく上での受け持ちが、それぞれにあります。外邪と体表部で実際に対面し、せめぎ合う衛気を支配しているのは肺で、肺の精気が充実していれば、外邪の侵入を防ぐことが出来ます。逆にいうと、肺が虚して外の守りが弱くなると、外邪の侵入を許します。

 まず身体全体的な、元気の強さがあり、それをバックボーンとした各臓の精気が充実していることが大事です。この元気の強さや各臓の精気の虚が、病気の現れ方にも影響を与えます。

 下図はこれを図にしたものです。

コロナウィルス01

 外感病でいうと、肺の[精気の虚]があるところにつけ込んで、[病因]である外邪が侵入して、肺による気の運営を乱します[気の虚]。元気・精気・肺気と外邪のせめぎ合いにより、寒熱の停滞する部位が変わってきます[経絡に波及]。そして急性熱病では刻一刻と変わっていきます。その結果現れるのが、右端の[病症]です。また病が内攻していくということは、元気と外邪の均衡も変わっているので、担当する臓も変わってきます。

(2) 外感病の証分類と治療

 外感病は体表から侵入して刻一刻とその姿を変えます。その虚実寒熱表裏を的確にとらえ、証を決定して治療します。

コロナウィルス03

 熱症を例にすると、肺気が虚し、寒に傷られて、発散できずに体表部に停滞した熱は太陽経の熱なので、肺虚太陽経実熱証と言われます。この熱が元気とせめぎ合い、勝てば侵入していきます。そしてその停滞する各経絡によって病症や脈証が変わります。

順番に、

肺虚太陽経実熱証(太陽経熱)
   ↓
肺虚陽明経実熱証(陽明経熱)
   ↓
脾虚陽明経実熱証
   ↓
脾虚肝実熱証(少陽経熱)
   ↓
脾虚胃実熱証(陰経熱)

といった具合です。

 各証の基本的な病症や治療については、拙著『よくわかる経絡治療講義』(医道の日本)の「第8章 肺虚証」(P136~)に書かれているので参考にしてください。

外感病の治療は、

1,部位を特定すること(経絡・表裏)
2,病理を理解する(精気の虚及び病理の虚実に対する補瀉)
3,寒熱に従った手技の種類と程度(経の病症に対する補瀉)

によって、選穴や手技が決まります。急性熱病は虚実や寒熱の程度にあわせて手技も繊細に調整しないといけません。
いくつか例をあげておきます。

① 肺虚太陽経実熱証

 まず寒にやぶられて表が閉じられると、陽気の発散がうまくいかなくなり、熱の停滞になります。表の守りの破綻は、肺の精気の虚から来ており、太陽経に熱が停滞するので、肺虚太陽経熱証とよばれます。

(a)病症

 悪寒が中心で、発熱・頭痛・項背強・腰痛などの症状があります。食欲、便通などは変化がありません。外感病でも初期にあたり、内傷のない場合に限られるので、一般の鍼灸院でみられることは少ないです。

(b)脈証

 脈は全体に浮緊。六部定位脈診では肺虚証。

(c)治療

 経渠・商丘を補い、後溪を瀉します。体表部が病んでいて急性熱病は動きも速いので、手技は浅く接触鍼で、速刺速抜します。
 背部は肌のきめを擦りみながら、ほんのりと温かく軟らかくなるように、接触鍼の補的散鍼。陽気を補い、発散を助けるように。やり過ぎるといけません。

② 脾虚肝実熱証

 熱が内攻して少陽経に停滞します。いわゆる少陽病です。ここは半表半裏とよばれ身体の表裏でいうと真ん中になり熱の停滞しやすい場所です。ここまで奥に来ると臓である肝の熱にもなるので、経絡治療学会では脾虚肝実熱証と表現しています。

(a)病症

 この熱は留まりやすく、熱の増減によって、往来寒熱・盗汗・だるさなどの熱症状を現します。また口苦・胸脇苦満など、内傷も加わります。

(b)脈証

 全体に沈弦で有力です。熱の欝滞を現しています。六部定位脈診では脾虚肝実です。

(c)治療

 間使・商丘を補い、熱の程度によって臨泣(足)や行間を瀉します。左関上が浮いて強い場合は臨泣(足)、沈んで強い場合は行間。熱が内鬱しているので、しっかりと瀉す。うまくいくと浮いて軟らかくなります。
 背部は熱がなければ置鍼もいいが、短めで。膈兪から胃兪あたりに膨隆や硬結がみられることがありますが、そこをブスブスやるのではなく、まわりを補いつつ全体になだらかになるように、刺針・散鍼する。

(3) 湯液治療

 各証分類における漢方薬の治療も可能です。詳しくは『臓腑経絡からみた薬方と鍼灸 第五巻』(池田政一・たにぐち書店)を参考にしてください。代表的な処方をあげておきます。

肺虚太陽経実熱証:麻黄湯、大青竜湯
肺虚陽明経実熱証:葛根湯 香蘇散
脾虚陽明経実熱証:小青竜湯 参蘇飲
脾虚肝実熱証:小柴胡湯 大柴胡湯
脾虚胃実熱証(陰経熱):調胃承気湯


5. 新型コロナウイルス

(1) 対策

 今までのことを理解していただければ、未知の新型コロナウイルスに対しても、変わった対応をすることはありません。ただし、その病気に特徴的な症状に関しては、いくつか打つ手を用意しておいた方がいいでしょう。

 新型コロナウイルスの怖いところは、感染しても軽症ですむケースも多いですが、お年寄りや持病を持っている人、つまり身体が虚弱な人は重症化することが多いということです。これについては、経絡治療では、身体の元気や臓の精気にアプローチし、力をつけることをするので、特にすることはありません。強いていうなら、脈状までみて、虚実寒熱表裏を繊細に調整する技術が必要です。

(2) 肺炎

 新型コロナウイルスの怖いところは、ウイルスが直接肺炎を引き起こすということです。ですから病気が急変することも多く、致死率も高くなっているということです。

 われわれができることは、肺炎の気配のある人を早期発見し、必要に応じて治療または注意喚起や病院に紹介することだとおもいます。

① 鍼灸

(a)症状

 肺炎は典型的な症状だと高熱や咳、痰、息切れ、胸の痛みなど、その程度によって軽重が見分けられるものもあります。しかし、高齢者や虚弱な人ははっきりとそのような症状が出ないことがあります。元気がない、食欲がない、寝てばかりで動かない、意識がはっきりしないようなときは注意が必要です。

(b)脈証

 このようなときに参考になるのが脈診です。多くの場合は肺の炎症ですから、六部定位脈診でいうところの右寸口の脈、つまり肺の脈が強くなります。そしてこの脈の浮沈・虚実を詳しくみることで、より詳しい状態が分かります。

 肺の脈は健康な状態では、浮で緩や毛といった軟らかい脈が理想です。衛気が表部で充実しているということです。

 肺に熱が入ったときに肺の精気が強ければ、それを外に押し戻します。そのまま追い出せればいいのですが、追い出しきれないときには陽経の大腸経に留まります。そうすると右寸口の脈は浮実となります。急性熱病で太陽病(肺虚太陽経実熱証)のときは、全体に浮実になることがありますが、このときは寒けや発熱が中心で、咳などの呼吸器症状はまだ軽いです。このような太陽病のときは脈も浮いて速く浮いて強いですが、病気としては初期で恐れることはありません。むしろ下手に治療して悪化させないことに注意してください。肺虚で補って、大腸経を瀉します。

 病気が進み熱が内攻していくと、脈も沈んでいき、内にこもるので脈幅は狭くなり強くなります。脈の浮沈は熱の深浅を現していますから、沈んでいくということは肺に熱が入っていくということでいいことではありません。そして脈が強くなるというのは、熱が多くなっているからです。脈幅が狭く強いのは狭い範囲で熱が多く留まっているということですから、これもよくありません。つまり肺炎のような症状、または肺炎を疑うようなときに、脈をみて

浮 ⇔ 沈
大 ⇔ 小
軟 ⇔ 堅

がどの程度かということで、病の軽重が判断できます。それぞれ右に寄っていくにつれ重症で、あわせ持つことはより重症といえます。

(c)治療

 肺の実熱を取ることは大切ですが、その内側の精気の虚を補い、肺以外に派生した寒熱を補瀉することがまず基本になります。それぞれの証にしたがって治療してください。

 そうしたあと肺の熱を処理します。肺の実熱は尺沢から孔最あたりの肘から前腕に出ることが多いです。熱が強く、内攻するにしたがって、硬結は沈んで硬いものになります。尺沢は肘窩横紋上を上下左右します。また孔最も上下します。教科書的な取穴にこだわらず、反応をよく探って取穴します。

 手技は輸瀉でやや深めに刺し、鍼をしばらく留めて硬結が緩むのを待ち、緩んできたらゆっくりと抜鍼して鍼孔を閉じます。

 お灸もいいことがありますが、熱をこもらせてしまうこともあるので、まずは少ない壮数で試した方がいいでしょう。

 肺経は形状が腑に似ていて熱がこもりやすく、瀉法もむいているところですが、気に敏感な人にはきついことがあるので、軽めから様子をみながら治療してください。

② 湯液

 肺の実熱に対する代表的な薬物は石膏です。証によって石膏を配合した麻杏甘石湯や大青竜湯などを使い分けるか、小柴胡湯+石膏というように、証に合わせた湯液に石膏を配合するなどするといいでしょう。

 石膏も強いお薬なので、最初は少なめから、様子をみながら熱の量によって増量します。


6. おわりに

 新型コロナウイルスが日本国内で本格的に騒がれ始めたのは、2月末の政府による休校要請あたりから。そのころはまだ軽くみており、5月のセミナーが中止になるとは思いもよりませんでした。その後の世界的な蔓延をみて、「こんなSFのようなことがあるのか?」と、おのれの甘さを反省し、皆様の無事と新型コロナウイルスの終焉を願っております。

 くしくも5月のセミナーの各論は「肺虚証」であり、外感病の解説をする予定でした。直接講義することはできませんでしたが、その要旨をまとめましたので、ご自身やご家族などの健康維持や臨床の参考にしていただければ幸いです。

 西洋医学や公衆衛生の分野が大いに頑張ってくれていますが、東洋医学もニッチなところでお役に立てると思っております。

2020年3月22日 大上勝行

(追記)2020/03/27

 今朝のNHKニュースで、感染者の中に「味が分からなくなる」といった症状があるという話がありました。
 味が分からないのは熱のためで、胸の熱、胃腸の熱、胆の熱が考えられます。中でも「口が苦い」「口が粘る」などの症状は胆の熱が多く、少陽経や半表半裏の熱を確かめる必要があります。

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