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【「景岳全書」婦人科を読む】4.最終回コラム

「解説を終えて」

 女性は陰に属し、陰の収斂作用によって気血のベクトルが内下方へ向き、女子胞に集まります。これによって女子胞は充実し、女子力(自愛力、恋愛力、出産力、共感力、直感力、敏感力)が生じます。

 さらにこの女性の収斂作用は、精(気血)だけではなく、日常生活で生じる様々な邪(気滞・湿痰・邪熱・瘀血)にも同じように働きます。よって女性の全ての病に女子胞は関与すると考えるわけです。
よって月経の状態から女子胞の状態を把握し、女子胞の状態から全身の病理状態を把握し、全ての病を婦人科の範疇として女子胞を利用して治療するのです。

 2018年にスタートした「景岳全書婦人科を読む」は、これで終わります。「景岳全書」は数ある婦人科系の古典の中でも、比較的よくまとまった本です。よって女性を治療する上で、一度目を通しておくとよいと思います。

 本連載を読んで興味を持たれた方は、今度は原書に還って、「景岳全書」を自分なりの解釈で読まれてみてください。

山口誓己


「連載を終えて」

 助産学生の頃、参加していたゼミで日本の古代から近代にかけてのお産を研究していました。絵巻物や古典書物の中に記されている分娩様式や介助方法、新生児のケアなどを時代毎にまとめ現代の助産技術と比較する内容でした。
 お産の姿勢を例にあげると、現代は分娩台に仰臥位となりお産をします。仰臥位は医療者が緊急時に処置しやすい姿勢ですが、産婦は重力に逆らうので胎児を産み出しにくいのです。戦後自宅出産から病院出産に移り変わるとともに仰臥位分娩が主流となり、産婦の意向よりも医療者の都合が優先されているとの声もあります。
 古代のお産は坐位や側臥位など産婦が自由に分娩スタイルを選ぶことが可能であり、産婆も産道が開きやすく胎児が下降しやすい姿勢となるよう誘導し介助していました。また感染症や分娩時出血で命を落とす母子が多かった時代、産婦も母親や産婆からお産や養生法について学び実施するなどセルフケアへの意識も高かったようです。 

 古代は科学技術が発展しておらず医療も遅れていたと看護学では学んできました。研究を進めるうちに、古代にも優れた知識技術があり学ぶことが多いと気づきました。古代中国ではどのように産前産後のケアがなされていたのか知りたくなり『景岳全書』を読み始めました。
 驚いたのは産科異常について分類がなされ治療法が書かれていたことです。エコーのような画像診断技術のない時代に脈診や触診により母体や胎児の異常を正確に把握していたのに驚きました。細分化されている現代医学は患者を数値や画像で評価診断し、患者の全体像を見ないという批判もあります。『景岳全書「婦人規」』の記述には環境や人間関係のストレスによる身体への影響にも触れられており、東洋医学の全体を診る視点で患者と関わっていたことがわかります。今読んでも古代の話とは思えない優れた内容で、古代の人々から学び臨床に活かすことはたくさんあると思いました。
 本書には漢方薬の記述も多く、私自身知識不足な点もあり十分に内容が理解できない部分も多くありました。今後繰り返し「婦人規」を読み臨床で患者さんと向き合いながら考察してみたいと思います。

 今回『景岳全書「婦人規」』を読み、妊娠出産に関する古代中国の人々の知識や医術に触れることができました。中国語を読むのは大変でしたが、古代の人たちも現代と同じように暮らしていたのだなと親近感が湧き楽しい時間でした。
 連載を読んでくださった皆様、解説を担当してくださった山口誓己先生、連載を支えてくださった”NISHIZUKA LABO”の皆方に心より感謝しております。ありがとうございました。

仁木小弥香


「景岳全書」婦人科を読む 〜完結〜

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目次

書き下し・口語訳/仁木小弥香
解説/山口誓己 

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