映画『オッペンハイマー』二度目の鑑賞で発見した、科学と権力のコミュニケーションのすれ違い 2024/03/30開始

今日は、2024/03/30(土曜)だ。

昨日、公開初日・初回の映画『オッペンハイマー』を観た。
今日2024/03/30、公開2日目・朝一番の回の映画『オッペンハイマー』を観てきた。

1回目を観ていないのに、2回目の予約をするなんて、クレイジーだ。自分でもそう思う。でも、誰かと一緒に映画を観賞して、語り合うという奇跡を体験したかったんだ。

2回目では、全体の流れが分かっているので、観るポイントを絞ることができた。

特に最後の3分の1のストローズ vs オッペンハイマーの戦いを、スリリングに観ることができた。

ストローズは権力闘争の視点で見ているし、オッペンハイマーは科学者としての平和活動の視点で見ている。

政治家と科学者のコミュニケーションの取れなささをも描いていると感じた。

A面
プロメテウスからオッペンハイマーへ:神話が現実に交わる瞬間

映画の冒頭、プロメテウスの火の神話から始まる。
核分裂という技術を、原子爆弾という装置に仕立て上げた、そのプロジェクトを現場で牽引したのが、オッペンハイマーだ。

オッペンハイマーが、ロスアラモス研究所を呪われたものとして語られる可能性を語ったかのように、オッペンハイマーも、自意識というゼウスに、ずっと呪われ続けたのかもしれない。

プロメテウスの火の神話は、ギリシャ神話の中でも特に有名な物語の一つです。この神話によれば、プロメテウスは人類に同情し、神々が持つ火を盗んで人間に与えました。火を持つことで、人間は文明を発展させることができるようになりましたが、この行為は神々、特に最高神ゼウスの怒りを買います。

ゼウスの命令により、プロメテウスはカフカス山脈のに磔(はりつけ)にされ、日中は彼の肝臓を巨大なが啄む刑に処されました。夜になると肝臓は再生し、この苦痛は永遠に続くという罰を受けることになります。この厳しい罰は、神々に対する反逆の代償として、また人間への愛が招いた悲劇として語り継がれています。プロメテウスの物語は、知恵と進歩のための犠牲、そして不屈の精神の象徴として、今日でも多くの人々に影響を与えています。

プロメテウスの火の神話は、ギリシャ神話に登場する話であり、特定の「原典」としては存在しません。ギリシャ神話は、長い時間をかけて口承伝承され、さまざまな詩人や作家によって書かれた作品群によって伝えられてきました。プロメテウスの物語も、多くの古典文学作品で取り扱われていますが、以下の古典作品が特に有名です。

ヘシオドスの『神統記』(Theogony):
プロメテウスが火を盗んだ結果、ゼウスが怒り、人類に苦難を与えるパンドラを送った話が含まれています。

ヘシオドスの『仕事と日々』(Works and Days):『神統記』と同様、プロメテウスとパンドラの物語が語られ、人類の苦労の始まりが描かれています。

アイスキュロスの悲劇『縛られたプロメテウス』(Prometheus Bound):この悲劇は、プロメテウスが岩に縛られ、毎日鷲に肝臓を食われる刑を受ける様子を描いています。プロメテウスがなぜ罰されるのか、そして彼の不屈の精神が強調されています。

これらの作品は、プロメテウスの物語を異なる視点から描いており、ギリシャ神話における彼の重要性と複雑性を示しています。しかし、これらの物語がすべて一致しているわけではなく、著者によって細部に違いがあります。ギリシャ神話は多様な伝承と解釈の集合体であり、プロメテウスの物語も例外ではありません。

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それにしても、プロメテウスの火のような神話は、なぜ語られ続けるのだろうか? 進化心理学上の意味はあるのだろうか?

プロメテウスの火のような神話が語られ続ける理由を進化心理学の観点から考察すると、以下のようなポイントが挙げられます。

好奇心と探究心:人間は本能的に好奇心が強く、未知への探究心を持っています。プロメテウスが火を盗んで人類に文明の光をもたらした物語は、この探究心を象徴しています。火が文明発展の象徴として語られることは、人類が知識を求め、自然界の謎を解明しようとした歴史を反映しているとも言えます。

社会的協力とルールの重要性:プロメテウスの物語は、個人が社会全体のために行動することの重要性を示していますが、同時に神々のルールに反した結果、厳しい罰が下されるという警告も含んでいます。これは、社会内での協力ルールの遵守が人類の進化において重要な役割を果たしてきたことを示唆しており、進化心理学では、社会的規範に従うことが生存と繁栄に不可欠であると考えられています。

罰と報酬のシステム:人間の行動は、報酬を求め、罰を避ける傾向にあります。プロメテウスが受けた永遠の罰は、極端な例ですが、行動の結果としての罰を恐れることの重要性を示しています。これは、人間が社会的なルールを守るよう動機づけられる進化的メカニズムを反映しているとも解釈できます。

物語を通じた教訓と文化の伝承:物語は教訓や価値観を伝える効果的な手段です。プロメテウスの物語は、人類にとって重要な教訓を含んでおり、世代を超えてそれらの教訓を共有する手段となっています。進化心理学では、物語や神話が社会的な結束を強化し、集団内での協力や規範を促進する役割を果たしてきたと考えられています。

プロメテウスの火の物語が長い間語り継がれてきたのは、これらの進化心理学的特性に深く根ざした人間の普遍的な興味と価値観を反映しているためであり、そのために多くの文化や時代を超えて関連性を持ち続けているのです。

オッペンハイマーは、プロメテウスと異なり、ルールを破ったわけではない。
プロメテウスとオッペンハイマーとの共通点と相違点は何だろうか?

プロメテウスの神話と、20世紀の物理学者ジュリアス・ロバート・オッペンハイマーとの間には、いくつかの興味深い共通点と相違点があります。

■共通点
知識と技術の進歩への貢献:
プロメテウスは人類に火をもたらし、それによって文明の発展を促進しました。
オッペンハイマーは原子爆弾の開発に貢献し、科学技術の進歩を象徴する人物の一人です。
重大な結果に対する責任:
プロメテウスは、火を盗んで神々の怒りを買い、永遠の罰を受けることになりました。
オッペンハイマーは、原子爆弾の使用がもたらす結果について深い悔恨と責任を感じ、「私は死、世界の破壊者となった」と述べました。
革新によるパンドラの箱:
プロメテウスが火を人類に与えたことで、無限の可能性と同時に危険ももたらされました。
オッペンハイマーと彼のチームが開発した原子爆弾は、戦争を終結させる力を持ちながら、核戦争の脅威を世界にもたらしました。

■相違点
目的と意図:
プロメテウスは人類への愛と同情から行動しました。彼の目的は、人間の生活を改善することにありました。
オッペンハイマーは科学的な探求と戦時中の政治的、軍事的要請に動かされました。彼の作業は、敵への勝利を目指すという明確な目的がありました。
神話と現実:
プロメテウスはギリシャ神話の登場人物であり、象徴的な教訓を含む架空の物語です。
オッペンハイマーは実在の人物であり、20世紀の歴史において実際に影響を与えた科学者です。
罰と反応:
プロメテウスは神々によって罰され、その苦痛は外部から課されました。
オッペンハイマーは公的な罰を受けることは少なかったものの、彼の行動に対する内面的な葛藤と罪悪感に苦しんだと報告されています。

プロメテウスとオッペンハイマーの物語は、知識と技術の進歩がもたらす利益と危険性、そしてそれに伴う倫理的な責任について考えさせられる点で共通しています。しかし、その背景、動機、そして結末の違いは、神話と現実の世界の根本的な違いを浮き彫りにしています。

青い世界・地球を覆い尽くす真っ赤な炎。
『風の谷のナウシカ』の「火の七日間戦争」をマクロで見たら、あのような世界になるのだろう。

映画『オッペンハイマー』で、オッペンハイマーがケンブリッジ時代に、深夜の雨の中で想っていたイメージは、なんだったんだろうか? 
進化の過程で、猿の時代に、思い描いていた世界なのかもしれない。

表現は、もっと自由でいいんだ。そして、その場その場で撮影すること、アップロードすることも大事だが、じっくり考えて、書いて、描いて、選んで、アップロードしてという流れを作る。

もっと自由にアウトプットしよう。

オッペンハイマーの配偶者は、「キャット」でなく、「キティ」という名前だ。
キャットは、映画『TENET』の登場人物だ。

広島・長崎への原子爆弾投下後のオッペンハイマーによる講演会より後のパートが、1回目を観ると、ほとんど音楽が流れていないようだが、2回目を観ると、テンポの良い音楽が使われていることがよく分かる。

ある一点から未来に話を進めながら、過去の回想を入れていくのは、ノーランならではだ。

B面
斜に構えてみる

音がうるさい。光が強い。
感覚器官に不調をきたす人もいるだろう。
いずれにしても、音楽と視覚効果に頼りすぎだ。
後半の、ストローズ vs オッペンハイマーの戦いは、音楽のノリで押し通そうとしている。

結局、何を言いたかったんだろうか?
オッペンハイマーは、破壊者になってしまった、ということなのか?結局、軍拡競争に加担してしまった、という罪悪感だろうか。

『風立ちぬ』っぽいかもしれない、やはり。
つまり、技術を信奉していて、それが世の中に負のインパクトを与えたとしても、心象風景は青空だし、縦のいくつもの複数の雲は美しくもある。

初見では全容が把握できない

全然、誰が誰だか分からないし、説明が少な過ぎて、話がわからない。

ストローズ

ストローズは南部訛りだ。これは何を表していたのだろうか?

ストローズの過去履歴を知りたい。どういうキャリアだったのか? 
なぜ商務省の長官に任命されたのか?

映画『オッペンハイマー』に出てくるストローズ(実際の人物はルイス・ストラウス)は、多岐にわたるキャリアを持つ人物でした。ストラウスは1896年、ウェストバージニア州チャールストンで生まれ、幼少期から物理学に興味を持っていました。高校卒業後にタイフス病にかかり、大学進学を断念し、家族の靴販売業を手伝うために旅行セールスマンとして働き始めました​ (Wikipedia)​。

第一次世界大戦中、彼はハーバート・フーバーのもとで無給の私設秘書として働き、その後フーバーがヨーロッパでの救済活動を指揮する際も彼に同行しました。戦後、彼はニューヨークの投資銀行クーン・ローブ & カンパニーに入り、やがてフルパートナーとなりました。その間、海軍予備役にも参加し、第二次世界大戦中は海軍のための重要なプロジェクトに携わり、戦後は海軍少将に昇進しました​ (Encyclopedia Britannica)​。

1946年、アメリカ合衆国原子力委員会(AEC)が設立され、ストラウスは委員の一人として参加しました。彼は水素爆弾の開発を強力に推進し、物理学者J.ロバート・オッペンハイマーと対立しました。オッペンハイマーは水素爆弾開発の反対者で、AECの一般諮問委員会の長でした。ストラウスはオッペンハイマーをソ連のスパイだと疑い、1954年にオッペンハイマーの安全保障認証を取り消すための論争の的となる聴聞会の背後にいました​ (Encyclopedia Britannica)​。

ストラウスが商務省長官に指名されたのは、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領の下、1958年から1959年にかけてでしたが、彼の指名は米国上院によって確認されませんでした。この指名と確認プロセスは、公の政治戦となり、彼のキャリアにおける重要な出来事の一つとなりました​ (Wikipedia)​。
ストラウスのキャリアは、公共サービスへの強いコミットメント、金融業界での成功、そして原子力政策における重要な役割によって特徴づけられます。彼の人生は、科学技術政策、軍事開発、そして冷戦期の政治的論争において重要な役割を果たしました。

村上春樹のモノマネになっている。パルプフィクションなどのパクリな気がする。そんな風に思った。
でも、二つの時間軸を交互に語る、あるストーリーを主軸に、過去を改装するという物語形式は、昔から存在している。

オッペンハイマーよりも、もっと撮るべき作品が、ノーランにはあったのではないだろうか。

だからこそ、ノーランがなぜ、オッペンハイマーを外形的なテーマとして選んだのかが気になる。

以上


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