実録!睡眠時無呼吸症候群【いびきに悩む全ての人へ】
病院での診断
汗顔の至りであるが、私は朝がとにかく苦手だ。
目覚ましが1時間以上なり続けているのに気が付かないということもあるし、朝起きたときが一日の中で一番疲れているということは日常茶飯事であった。
そのせいでやらかしてきたことも多々ある。
自分の中ではそれを気持ちの問題だとして片づけたこともあったし、一方で「そうはいっても起きられないものは起きられないからなあ」という心持ちになることもあった。
そんな睡眠状態であるから、エナジードリンクを飲まない日はないし、日中は強い眠気に苛まれる。
加えて最近は同居人から「いびきが悪化している」「息が止まっていて心配になることがある」とまで言われるようになっていた。
そんな状態であったので、専門の病院で診断を受けた結果、私はSASであることが分かった。
英国の「特殊空挺部隊(Special Air Service)」を想像された方がいるだろうが(いない)、そのことではない。
「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)」である。
これは睡眠の最中に筋肉が弛緩することで舌根が沈下し、上気道を塞いでしまう結果低呼吸や無呼吸に陥るというものだ。
そして、以下が精密検査の結果(一部抜粋)である。
「溺れながら寝ているようなものですね」
AHI(一時間当たりの無呼吸発生回数) 67.7(正常値は5回以下)
無呼吸の割合 29.7%(6時間睡眠で2時間近くは無呼吸状態)
SpO2(最低酸素飽和度) 79% (正常値96~99%、90%以下で呼吸不全)
N3(深い睡眠の割合) 0.9%
いびきの大きさ 68dB
数値で見るといかに劣悪な睡眠状態であったのかが一目瞭然だ。
まず注目したいのが最低酸素飽和度。
SpO2(最低酸素飽和度)79% (正常値は96~99%、90%以下は一般に呼吸不全とされる)
酸素飽和度は一分間息を止めると93%まで低下すると言われているので、私はもっと息が止まっているのだろう。
医者からは
「溺れながら寝ているようなものですね」
と言われた。
魚の睡眠方法には3種類あるが、私は「泳ぎ続けながら浅い睡眠をとる、カツオのような回遊魚タイプ」であるらしい。
中学生の頃なら確実に「カツオくん」というあだ名で揶揄されたに違いない。
起きるときって頭が痛いものなんじゃないの?という錯覚
次に深い睡眠の割合。
睡眠は大きくレム睡眠とノンレム睡眠に分かれる。
レム睡眠は急速眼球運動(rapid eye movement:REM)を伴う睡眠のことで、このときは脳が活発に動いている。
そして、脳が休まるノンレム睡眠のうち、睡眠の深さがN1~3まであるのだが、そのうち最も深い睡眠であるN3の割合がたった0.9%、時間にして5分以下らしい。
これでは脳が休まるはずもない。
起きる際は慢性的に頭痛が起こっていたのだが、まあ寝起きなんてこんなものだろうと思っていた。
しかし、どうやらそうではないらしい。
ヒトの睡眠は連続しておおよそ8時間程度と言われるが、寝る時間の長さは哺乳動物の種によって異なり、体のサイズが大きくなるほど短くなるとされる。
したがって、象などはかなり睡眠時間が短い。
大学生の頃なら確実に「エレファント姦し」というあだ名で揶揄されたに違いない。
蝉が如く
また驚くべきなのがいびきの大きさだ。
なんと68dB。
近い値を調べたら掃除機や洗濯機が60dB、セミが70dBであった。
また、セミの個体あたりの地上での活動期間は約一週間で、かつ夏期限定であるが、生田目は年中無休だ。
控えめに言って公害である。
ウルトラQにセミ人間という宇宙怪人が出てくるが、彼の身長体重は180cm,150kg,BMIは脅威の46.3だ。
セミは本来、中が空洞になっており、そこで発音筋と呼ばれる筋肉を動かして音を出している。
あとはアコースティックギターと同様、その音を中の空洞に響かせることで増幅させる。
しかしセミ人間の体重からは彼が中空構造を持っているとは考えにくい。
BMIからしても、彼の鳴き声は一般のセミとは異なり、いびきであると考えるのが妥当だ。
「怪獣の花唄」なんていう可愛いらしいものではないだろう。
ある意味、「会話よりも鮮明」に覚えているかもしれない。
そしてそれは、悲しいことに私のいびきとて同様である。
小学生なら確実に「セミ人間」というあだ名で揶揄されたに違いない。
SASの弊害がもう一つ。
深い睡眠がとれずに昼間起きていると、オレキシンという覚醒物質が大量に分泌される。
その物質の副作用が「食欲の増進」である。
SASの主な原因は肥満であるが、SASが原因で食べる量が増えて太る、そして太ることでSASが悪化するという地獄のような悪循環が私の体で起こっていた。
悲しい合成獣
もうカツオやら象やら蝉やら、様々な生き物にたとえたが、そんな何とも迷惑な合成獣こそが私の正体なのかもしれない。
幸いCPAPという器具を使用した治療をすでに始めており、効果も実感できている。
CPAPを使用してからは、7時間ほど寝ると自然と目が覚めるようになった。
一方で先日CPAPを付けずに寝てしまったときは14時間寝てもまだ眠かった。
装着を続けてさえいれば、何とかやっと人間になれそうだ。
ちなみにSASを放っておくと生存率がかなり下がるらしい。
いびき(漢字では鼾と書く)の語源は「息引き」であるが、あやうく本当に息を引き取るところだった。
洒落にならない。
自分のことは自分ではわからない
この一件がありしみじみと感じたことがある。
それは「自分のことはわかっているようで案外何もわかっていない」ということだ。
エレファントカシマシの宮本浩次は「待つ男」という曲で
と歌ったが、母に聞くと学生時代からいびきは悪化していたようなので、やはり笑えないほど自分のことをわかっていなかった。
睡眠時のいびきや無呼吸については自覚することができない。
他者の指摘があってはじめて気づいたことだ。
眠気やだるさという自覚症状もあったが、気持ちの問題だと片付けていた。
こういったことは子供たちの日常生活や、勉強にだって多く見られると思う。
周りの大人は異変があればいち早く察知し、軽視することのないように努めるべきだろう。
勉強で分からないことがあったときに、それが自分一人ではどうにもならないということも多くある。
だからこそ、日々子供たちとのコミュニケーション量を増やしたい。
そして気軽に質問や相談をできる関係を作りたい。
「スキ」をタップして応援宜しくお願い致します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?