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南太平洋島嶼国家の分断をめぐって

こちらは一帯一路の「一路」(pp.24-25)というよりは、南シナ海への軍事進出(第三章第三節)に関連する内容です。
中国はこの間、ソロモンとキリバスの切り崩しに成功しましたが、今年5月の王外相の島嶼国家歴訪では、異例の長期滞在をしたにも関わらず、日程の最後の域内10ヶ国との外相会談では地域全体の取り込みには失敗しました。そもそもこの地域は全員一致の原則で会議を運営しているため、内部から異論が出たことは明らかです。

なおソロモン諸島(島嶼名であり国家名)については、先行して4月に中国側が積極的な取り込みを図り、地ならしとしての安全保障協定を締結したうえでの歴訪という周到な段取りでした。

この余波はさらに続き、前身機関から数えれば地域協力機構として71年以来の伝統を有する太平洋諸島フォーラム(PIF)から、キリバスが8月に脱退を表明します。地域に生じた本格的な分断です。米中新冷戦はすでに、「ガダルカナル」「ソロモン」「ミッドウェー」といった、太平洋戦争中に日米両国が死闘を繰り広げた南太平洋の激戦地の島々の基地用地としての陣取り合戦にまで発展しており、既視感のある展開となっています。
ちなみにガダルカナルはソロモン諸島の島の名で、ここに日本軍が戦時中に整備した滑走路を中国が改修して、いずれは空軍機を駐留させるという、きわめて生々しい話です。
19年に成立したソロモン諸島の現政権は、中国の後ろ盾を得て憲法改正による任期の延長を表明するなど、強権色を強めています。中国の派遣した顧問が現地の警察の訓練を実際に行うなど、中国流の人権抑圧体制(p.5)がソロモンに留まらずに地域に広まる懸念もあります。

キリバスのPIF脱退に至る経緯の詳細については、下記を、

また断続的に4期も首相の任にあるソガバレ氏が、今日のように中国に全面的に傾倒するに至るまでの、オーストラリアによるソロモンの内政への過剰な関与の経緯については下記を参照してください。

画像の元記事は、以下です。


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