2024年度 東京医科歯科(東京科学)大学 医学部編入試験(問題1) 解答例

割引あり

2023年に実施された、2024年度入学の筆記試験(問題1)の解答例です(私が個人的に作ったものです)。

問題2のnoteや、再現答案(開示点数含む。問題1と2両方)、2024年度の受験記なども含めたマガジンも併せてご覧ください。

なお、このnoteは再現答案と開示点数を含んでいましたが、その部分を別記事に分離させました。分離前にこのnoteを買って下さった方の中でその内容をまた知りたい方は、ご連絡お願いします。

はじめに

  • 英文(論文)のことを「本文」、(1)など、かっこがついたものは「設問」と呼称します。

  • 本文中にはまとまりごとに小タイトルが付けられています(Basic biology of bats など)。このnoteでは小タイトルを太字で示し、(全文通してではなく)小タイトルごとに段落番号を振っていきます。例えばBasic biologi of batsは2段落で構成されていることになります。

  • 論文が非常に長いので、別解が複数存在するかもしれません。

  • 受験者の方の力になりたいと思っています。別解や誤りのご指摘等をぜひコメントや、各種SNSなどからご連絡ください。

  • 問題は過去2年分、大学から入手できます。

  • 出典:Irving, A.T., Ahn, M., Goh, G. et al. Lessons from the host defences of bats, a unique viral reservoir. Nature 589, 363–370 (2021).

    筆者について

  • 2年間(2023年度、2024年度入学)受験しました。

  • 一次不合格者です。ただし、私は別の大学での筆記通過経験があるほか、医学系大学院を修了しているため、分野における専門知識を有しています。


設問と解答例

(1) コウモリに特徴的な免疫防御機構について、日本語で説明せよ。

解答例(解答欄は5行):
IFNのシグナリングにおける抗ウイルス性の遺伝子の発現、誘導、機能が、コウモリが宿主とするウイルスを効率的に制御している。また、オートファジーが亢進しており、免疫を調節し、病原体の除去を仲介している。


ポイント:
Enhanced host defence responses (問題冊子p10)を参考にします。

1文目(IFNについて)は、以下の文章を参考にしました。

Together, these bat-specific changes in baseline expression, kinetics, induction or functions of antiviral genes in IFN signalling could help bats to efficiently control the numerous viruses that they host.

2文目(オートファジーについて)は、以下の文章を参考にしました。

Enhanced autophagy has a key role in the increased clearance of lyssavirus from bat cells, and is known to regulate immunity and mediate pathogen clearance.


難しい点:
本文中に書いてあることの多くが「免疫防御機構」に見えてきます。なんならtoleranceも免疫防御機構に入れる、という解釈もあると思います。長い本文からいかに答案をまとめられるか、が課題です。

(2) コウモリに特徴的な免疫寛容機構について、日本語で説明せよ。

解答例(解答欄は5行):
インフラマソームのセンサーであるNLRP3が、転写とタンパク質レベルで抑えられており、下流のcaspase-1とIL-1βも抑制状態にある。また、ナチュラルキラー細胞が抑制状態にある。

ポイント:
前半の部分は、具体的な因子の名前(NLRP3, caspase-1, IL-1β)を出すよりも、もう少し一般的な記述が良いのかなと思っています(別解コメントお待ちしてます)。
後半の部分(ナチュラルキラー細胞の記述)は点が入ると思います。

Mechanisms of immune tolerance (p11)を参考にします。

NLR-family pyrin domain containing 3 (NLRP3), a key inflammasome sensor that recognizes various cellular stresses and pathogen invasions, is dampened at both the transcription and protein level in bats.

2段落目(A more recent study …)

An inhibitory immune state of natural killer cells has been inferred from genome analysis of natural killer cell receptors, providing support for enhanced immune tolerance.

3段落目(Other studies have …)

また、前半の部分(インフラマソームの記述)では、Learning from bats (p12)の以下の部分も参考にできるかも:

Previous studies have demonstrated altered inflammasome activation in bats, including the loss of the PYHIN gene family, dampened NLRP3 and reduced function of caspase-1 and/or IL-1β (Fig. 2).

感想:

  • かなり難しい問題です。理由は・・

  • 免疫寛容(tolerance)に関する専門知識がないと解答を作るのは少し厳しいこと。

  • 'tolerance'は小タイトルにはA balanced host defence-tolerance systemと、Mechanisms of immune tolerance の2つにみられること。

  • 恐らく前者を根拠に解答を作ると点が入らないこと。しかし当日時間に追われた受験生は、一定数、ここから解答を作ったと思われます。

  • Mechanisms of immune tolerance を見つけられたとしても、In summary … から始まる段落だけでは解答を作るのが難しいこと。

  • これらを踏まえ、Mechanisms of immune tolerance の部分から解答根拠を拾っていき、点になる解答をつくれたかどうか(かなり時間のかかる作業)。

(3) コウモリが飛行に伴う高い代謝負荷にどのように適応したのか、英語で説明せよ(25 単語以内)。

解答例:

  • Cyclic bradycardia is induced for 5-7 minutes several times per hour during the rest, which may conserve up to 10% of available energy. (23 words)

  • To compensate for cardiac stress during the flight, cyclic bradycardia is induced during the rest, which may conserve up to 10% of available energy. (24 words)

  • To compensate for cardiac stress during the flight, cyclic bradycardia is induced during the rest, which may conserve much less available energy. (22 words)

  • Bradycardia is induced during the rest, which may conserve much less available energy than during the flight. (17 words)

解答根拠:
Basic biology of bats
 (p7)の第二段落をもとにします。

ここから先は

4,320字
この記事のみ ¥ 700〜
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

サポートのご検討、ありがとうございます😊 HPなどの運営費ほか、撮影機材など、クリエイターとしての活動費にあてさせていただきます。