2024年度 東京医科歯科(東京科学)大学 医学部編入試験(問題2) 解答例

割引あり

2023年に実施された、2024年度入学の筆記試験(問題2)の解答例です(私が個人的に作ったものです)。

問題1の記事や、2024年度の受験記も含めたマガジンもご参考下さい。

なお、このnoteは以前、再現答案・開示点数も含んでいましたが、その部分は以下のnoteに分離させました。分離前にこのnoteを購入して下さった方で、再現答案と開示点数をまた見たい方はご連絡ください

はじめに

  • 筆者は、2回(2023年度、2024年度入学)受験しました。

  • 一次不合格者です。ただし、私は別の大学での筆記通過経験があるほか、医学系大学院を修了しているため、分野における専門知識を有しています。

  • 英文(論文)のことを「本文」、(1)など、カッコがついたものは「設問」と呼称していきます。

  • 受験者の方の力になりたいと思っています。質問、別解や誤りのご指摘等を含めて、コメントや各種SNSなどからご連絡ください。

  • 問題は過去2年分、大学から入手できます。


設問と解答例

(1) ECPRにおいて血液がどのように体外回路に出入りするか、そして回路内でどの様な変化を受けるか日本語で説明せよ。

(解答欄:5行)

解答例1:
血液は下大静脈のような中心静脈から体外回路に入り、回路内では、血液から二酸化炭素が除去され、酸素が付加される。回路から出る際は、大腿動脈を通して動脈へと戻る。
(「体外回路に入る→回路内→出る」の順で記述)

解答例2:
血液は下大静脈のような中心静脈から体外回路に入り、大腿動脈を通して動脈へと戻る(回路から出る)。回路内では、血液から二酸化炭素が除去され、酸素が付加される。
(設問の文章の順番に従った場合。「どのように出入りする→どのような変化を受ける」の順で記述)

ポイント:
以下の文章をまとめるとよいと考えます。
*は注釈のある単語です。
During ECPR, deoxygenated blood is removed from a central vein, such as the inferior vena cava*, and circulated through a membrane oxygenator where carbon dioxide is removed and oxygen is added before the blood is returned through the femoral artery* into the aorta.

難しい点:

  • 本文には「回路」にあたる英単語(circuitなど)が見当たらず、何が設問の「回路」なのかが分かりづらかったと思います。

  • ちなみに、回路とは「血液が循環する、患者の血管、ECMOやカニューレ、患者の血液が流れるチューブ」を指していると考えます。

  • こちらのサイトがイメージしやすいです。

  • すなわち、回路全体は、「下腿静脈→(体外)→カニューレ→チューブ→ECMO(装置)→チューブ→カニューレ→(体内)→大腿動脈→患者の体内→・・・→下腿静脈・・」ということになります。

  • なので、体外回路とは回路全体のうち、「カニューレ→・・→ECMO→・・→カニューレ」の部分を指しています。

(2) ECPRを成功させるには熟練した施設で行う事が重要な理由について日本語で説明せよ。

解答例(解答欄は5行)
ECPRは迅速に行われなければならず、分野横断的なチーム、多くの資源、綿密に定められたプロトコルを必要とする。また、施設によって効果的な方法は異なるが、ECPRによる血管へのアクセスとカニューレの設置には、血管超音波検査と蛍光透視鏡を利用する必要があるため。

コメント
vascular access(血管へのアクセス), cannula placement (カニューレの設置)の訳はもっといいのがあるかもしれません。

本文のFor these reasons より前を中心にまとめればよいです:

The application of ECPR allows the organs, (中略). To be effective, ECPR must be promptly administered and requires a multidisciplinary team, substantial resources, and well-defined protocols. For these reasons, ECPR is typically performed in specialized centers with highly trained personnel. ECPR vascular access and cannula* placement should be guided by vascular ultrasonography and fluoroscopy, although effective methods may differ among institutions.

(3) ECPRの合併症と発症率について日本語で述べよ。

解答例(解答欄は3行):
心停止に対して行われたECPRの生存率は約30%で、約25%の患者に出血、約5%の患者が大腿動脈カニューレの末梢に肢虚血がみられた。

解答根拠:
以下の部分を参考にすればよいでしょう。
According to the Extracorporeal Life Support Organization registry, the survival rate for individuals who have undergone ECPR for cardiac arrest is approximately 30%. Approximately 25% of patients experience bleeding and approximately 5% experience limb ischemia distal to the femoral arterial cannula.

コメント
limbic ischemia(肢虚血)、distal(抹消の)を訳せたかどうかで差がついたかもしれません。
なお、本文からは「心停止から生存した30%の患者のうち25%が出血などの合併症を発症した」のか、「心停止に対してECPRされた患者(生死は問わない)のうち25%が出血などの合併症を発症した」のかは読み取れないと考えます(前者だとは思います)。

(4) In your own words, describe the “benefit” of ECPR that were indicated in the Yannopoulous et al. (2020) study. (Answer in 20 words or less in English)

解答例(解答欄は3行)
ECPR can improve patients’ survival compared with conventional CPR.
(9 words)

ECPR can improve patients' survival to hospital discharge compared with conventional CPR. (12 words)

コメント:
自信がないです。2個めの解答例でもまだ8 words足りません。

本文中には Yannopoulos et al (2020) を含め、3つの臨床試験について言及されています。この臨床試験だけが示せるECPRのbenefitについては、私には検討がつきませんでした。また20 wordsという制限もあり、「ECPRは患者の生存率を上げうる」と、この臨床試験について、単純に記述するのがよかったのかもしれません。

本文中、付近には3つの臨床試験について言及されています。設問の(Yannopoulous et al)臨床試験のみECPRに旗が上がっており(ECPR 43% vs conventional CPR 7%)、他2つには介入とコントロールで有意差がみられなかったことに気づけたかどうかが、ポイント(=benefit)だったかもしれません。

(5) Suverein らの臨床試験内容と結果について、その他の臨床試験との違いについても含めて日本語で要約せよ。

解答例(解答欄は8行):
Suvereinらは、初期の心室細動患者160人に対してECPRもしくは従来のCPRでランダム化を行ったが、治療効果にグループ間での有意差はみられなかった。他2つの試験との違いは、この試験は複数施設で行われたことと、他2つの試験と比べ、心停止からECPRを始めるまで時間がかかり、カニューレーションの失敗率が高かったことである。

別解(前半):

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