2022年度　東京医科歯科（東京科学）大学　医学部学士編入試験（問題２）　解答例

２０２１年に実施された、２０２２年度入学の筆記試験（問題２）の解答例です（私が個人的に作ったものです）。

• この時期（２０２４年２月末）になって、過去問で対策している方もいると思うので、何かの参考になればと思い記事にすることにしました。

• 他の記事（最新年度）では解説も詳しく書いていますが、取り急ぎ解答だけです。

• 解答だけの間は、全文が無料で読める投げ銭形式にしておきます。解説も加わったら有料記事にすると思います。

• 需要（スキやコメント含め）・要望があれば解説や他の年度の解答例も載せるつもりです。もしよければコメントお待ちしております！

はじめに

• 英文（論文）のことを「本文」、(1)など、かっこがついたものは「設問」と呼称します。

• 受験者の方の力になりたいと思っています。別解や誤りのご指摘等は、ぜひコメントまでお願いします。

• 問題は過去２年分、大学から入手できます。

• 出典その１：Mulimani PS. Evidence-based practice and the evidence pyramid: A 21st century orthodontic odyssey. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2017 Jul;152(1):1-8.

• 出典その２：Bothwell, Laura E et al. “Assessing the Gold Standard--Lessons from the History of RCTs.” N Engl J Med vol. 374,22 (2016): 2175-81.
  

筆者について

• ２年間（２０２３年度、２０２４年度入学）受験しました。

• 一次不合格者です。ただし、私は別の大学での通過経験があるほか、医学系大学院を修了しているため、分野における専門知識を有しています。
  
  

設問と解答例

(1) 本文中の Figure1, Figure2 を次に示す。(A)~(C) に当てはまるものを、以下の選択肢ア～ウ、(a)~(c)に当てはまるものを、以下の選択肢エ～カよりそれぞれ選べ。

解答例：
(A) イ (B)ア (C)ウ
(a) オ (b) エ (c) カ

(2) 精神科医療において RCTs がもたらした弊害と述べられているのはどんなことか述べよ（日本語 150 字以内）。

解答例：
RCTsは心理療法に対してよりも精神薬に対してより有効なので、精神薬に対するエビデンスの方がはるかに蓄積してきている。この差は製薬会社には利益をもたらしたが、精神科医療において、より包括的なアプローチをする上で妨げになっている面がある。(101字）

(3) 外科手術に RCTs を適用する際に困難であると指摘されている点を日本語で箇条書きせよ。

解答例：
・患者によって病態が異なること
・外科医によって技術が異なること
・手術によって麻酔、術前の薬の処方、手術のアプローチ、器具、術後ケアに無数の選択があること
・これらの要因が、臨床試験において必要とされる標準化を困難にしていること。

(4) RCTs の透明性を高めるために行われている対策は何か。日本語で２つ述べよ。

解答例：
・（金銭的な）利益の相反を明らかにすること
・すべての臨床試験を登録すること

(5) RCTs の高いコストがもたらす国際的な問題点について述べよ（日本語 200 字以内）。

解答例：
研究が行われる場所は多様化しているが、研究対象はそうではないこと。多くの臨床研究は、公衆衛生に対しては限定的な影響しかないが、高所得の国における多大な市場価値がありそうな薬に焦点をあてていること。低所得地域の結核、マラリアなどが受けている注目は、はるかに少ない。
（１３１文字）

(6) RCTs を含めた今後の医学研究の展望について筆者の考えをもとに記述せよ（日本語 300 字以内）。

解答例：
RCTsは治療のエビデンスにおけるゴールドスタンダードの地位を獲得してきたが、制限もある。医師はRCTsよりも早く、安価で、RCTsでは答えられないものを答えられるような方法を模索している。RCTsは効率を測定し、治療の市場を規制するために最も重要な部分となりえる。このRCTsの地位は、個人へのオーダーメイド医療（個別化医療）や、先制医療への注目とともに進化しつづけるかもしれない。医学はそれぞれの患者に独特の病態生理やそれに付随する状況に焦点を当てているので、RCTsによって生成された一般化されたデータの応用性は、一層強い精査を受けることになるだろう。
（２７９文字）