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大義を抱いたその瞬間、未来は創られる(致知2023年9月号)

対談『新エネルギーの創出に挑む』より

独自の製造・販売一体型のビジネスモデルを構築し、右肩上がりの成長を遂げる業務スーパー。創業者の沼田昭二ぬまた しょうじ氏は現在、経営母体である神戸物産の経営から離れ、地熱発電を柱とした再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。その決断の背景にあるのは日本のエネルギー自給率、食料自給率を何とか向上させたいという氏の大義である。一大事業に不退転の決意で臨む沼田氏の歩みや仕事観を、沼田氏と共に事業を展開している良知経営社長・濵田総一郎はまだ そういちろう氏にお聞きいただいた。

https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2023/202309_numata_hamada/

町おこしエネルギー会長兼社長 沼田昭二氏と、良知経営社長 濵田総一郎氏は二十年来の知人ということもあってか、文章からも互いに気の置けない仲であることが窺い知れる。

私自身、以前より業務スーパーの元社長が地熱発電などの再生可能エネルギー事業に私財を投じて取り組んでいるということを耳にしていたため、本記事のタイトルを目にしたときから期待に胸を躍らせていたが、それを始める契機となったのが五十歳の時に罹った甲状腺がんであったという事実に愕然とした。

しかし、驚くのはまだ早かった。
何と沼田氏はそこで悲観するどころか、逆に願掛がんかけ】をしたのだという。

それは『私利私欲を捨てて、滅私奉公めっしほうこうに生きる』というものだった。

(ここでの『公』とは政府・自治体といったものではなく、社会全体、ひいては宇宙全体の発展と調和を指すことは、言うまでもない)

そして、当時12%しかなかった純国産エネルギーの低自給率を憂い、その改善と町おこし及び地方創生を大義とした会社を起こしたのだ。

大病を患いながらも大きな目標を掲げ邁進していく沼田氏に対し、濵田氏はこう語る。

「沼田さんがなぜこれだけのイノベーションを生み出せるかという理由も、そこに大義があるからだと思うんです。大義が全て公益に資するものであるからこそ実現していく」

2023-9 致知 P.27


偶然にも、私が最近読んだ本の中に濵田氏の言葉に類するものがあったので紹介しよう。

「世界の調和にかなった方向性であれば、その使命を果たそうと思った瞬間から、その実現にむけて世界の方が変わっていく」

波動の法則(足立育朗著 )


これは華厳経けごんきょう(大方広仏華厳経)でうところの初発心時しょほっしんじ便成正覚べんじょうしょうがく*1)に通ずるところがあると、私は思うのだ。


つまり、自らの掲げる大義と『世界の調和』との方向性が一致する場合、その実現は約束されたものとみなし得るということであり、それはそのまま、その道を進むうえで降りかかる様々な困難や立ちふさがる壁は、全て乗り越えていけるということを示唆するものである。


安心して良い。 世界は君が好きなのだ。



*1)

初めて発心ほっしんする時、便すなわ正覚しょうがくじょうず(初発心時、便成正覚)
初めてさとりへの心を発すときに、たちまち仏のさとりを完成する。
というように教説に代表されています。

~(中略)~

たとえば、私たちが山登りをして、ついに山頂に立った、という場合、山頂を踏みしめたのはたしかに最後の一歩です。
しかし、その最後の一歩は、直前の一歩が踏み出されていなければありえません。さらにその前の一歩についても同様です。となると、登り始めた最初の一歩から頂上をきわめた最後の一歩まで、どの一歩も欠くことはできません。山登りの全体につながり、全体を支える一歩です。とくに最初の第一歩は、目的と方向が確定し、目的への歩みが開始されたという意味においては最も重要であり、むしろ最初の第一歩においてすでに山頂を踏みしめる最後の一歩はその実現が約束されつつあった、ということもできましょう。

華厳経入門(木村清孝著 角川ソフィア文庫)P.260

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