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水を得るならば、自らを低きに置け(致知2023年6月号)

対談『よき人、よき言葉との出逢いが、わが人生を導いてきた』より

寄生虫病などに罹った数億人の命を救ってきた特効薬イベルメクチンを開発し、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏。人生の山坂にも屈せず、日本の心を伝える童謡の普及に情熱を傾け続けてきた歌手の大庭照子氏。「世のため人のため」という志を胸にそれぞれの道を深めてきたお二人が語り合う、忘れ得ぬ出逢い、糧にしてきた言葉や教え、越えてきた艱難辛苦、その中から紡がれてきたわが人生の詩――。

https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2023/202306_oomura_ooba/

よき言葉


イベルメクチンの開発者 大村智おおむら さとし氏と、童謡活動家 大庭照子おおば てるこ氏の対談では、互いに人生の標となった”よき言葉”を語り合った。

数々の金言が飛び交う中、私の心にひときわ響いたのは大庭氏の母の言葉だった。

「自分より下にいる(優秀な)人に助けてもらうには、その人を下に下げてはだめ。その人を上に持っていくようにしなさい」

2023-6 致知 P67

人に教えを乞う際の基本姿勢であるが、私には人生をより豊かにしていくためのエッセンスが凝縮されているように感じたのだ。


知識は水なり

『知識の泉』という言葉があるように、しばしば知識や知恵は水に例えられる。

なるほど、確かに水に例えるとわかりやすい。

水は高い所から低い所へと流れるものである。

自らを低きに置けば、労せずとも自ずから水を得ることができる、というわけだ。

しかし、ここで注意しなければならない点がある。

どんなに沢山の水を得ようとも、それが溜まったままではいずれよどみ、腐ってしまい使い物にならなくなっていく。

自分が受けたよき知識や知恵も、後輩へと伝え、人々の役に立たなければ意味がない。

せっかく苦労と時間をかけて得たものが日の目を見ることなく死んでいくのだ。

これは対談の後半で触れられた北里柴三郎先生の説かれた『実学の精神』そのものだ。

世の為、人の為に役立つものを作り、人々を幸せに導いてこその技術であり、私たちの目指すべきものに他ならないのである。

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