企業は政治家よりも民主的/アメリカの奇妙な死

ネット企業がトランプ大統領とその支持者を追放したことをリベラルが喜んでいるようだが、それを予期させるコラムが5年半前にNYTに掲載されていた。

このコラムニストが巨大企業による世界支配を問題なしとするのは、選挙区の特定集団の支持を気にする政治家よりも、利益の最大化のためにより多くの顧客に支持されようとする大企業の方が民主的という理屈である。

Corporations aren’t paralyzed by partisan bickering. They’re not hostage to a few big donors, a few loud interest groups or some unyielding ideology.
“They’re ultimately more responsive to a broader group of voters — customers — than politicians are,” said Bradley Tusk, whose firm, Tusk Strategies, does consulting for both private corporations and public officials.
“If you’re a corporation, you need to be much more in sync with public opinion, because you’re appealing to people across the spectrum.”
And so, he added, “Ironically, a lot of corporations have to be far more democratic than democratically elected officials.”

大企業のgreedは悪いものではなく、むしろ政治的に正しい善・正義の実践につながるものだという。言い換えれば、リベラルが悪とみなす勢力を排除する「十字軍」的な役割を担う頼もしい存在になる。

…, it does force you to admit that corporations aren’t always the bad guys. Sometimes the bottom line matches the common good, and they’re the agents of what’s practical, wise and even right.

この理屈は企業の利益最大化がリベラルの教義の"equality, inclusion and diversity"の実現につながるとするミルトン・フリードマンのものと同じで、左派リベラルとネオリベラルが同根であることを示している。

フリードマンによると、経済の自由は、思想的自由の確保や差別の排除にもつながる。「何でも金で方がつく」からだ。

特定の政治勢力の発言の自由を奪うために私企業の行動の自由を用いるというリベラルの矛盾が露になってきた。

The Strange Death of America

Douglas Murrayが言うところの「奇妙な死」は、ヨーロッパよりもアメリカが先行しているように見える(動画は日本語字幕付き)。ヨーロッパは消極的な自死だが、アメリカは白人の原罪を贖って高いステージに生まれ変わるための積極的な死である(「おれは人間をやめるぞ!」のようなもの)。アメリカのエリートはpolitical correctnessを世界に広めることを新たなManifest Destinyと考えているので、これから外国への干渉も強まる可能性が大である。

I mean that the civilisation we know as Europe is in the process of committing suicide and that neither Britain nor any other Western European country can avoid that fate because we all appear to suffer from the same symptoms and maladies. As a result, by the end of the lifespans of most people currently alive Europe will not be Europe and the peoples of Europe will have lost the only place in the world we had to call home.

「白人、男性、異性愛者・健常者・中上流階級」を「殺す」ことが贖罪になる。

ディアンジェロによれば、アメリカ社会は人種・性別・性的志向などによって階層化されており、その頂点に君臨するのは「白人、男性、異性愛者・健常者・中上流階級」という属性をもつグループだ。
アメリカの白人は「生まれる前から」レイシストであり、死ぬまでレイシズムの原罪から逃れることはできないのだ。――そう考えれば、これは一種の「宗教運動」にちかい。

従って、straight white maleを経済苦による絶望死に追い込むことは「ポア」として奨励される。リベラルはカルトと化している。

調査の過程で、中年の白人アメリカ人の自殺率が急速に増えていることがわかった。…驚いたことに、中年の白人の間で増えていたのは自殺率だけではなかった。すべての死因による死亡率が増えていたのだ。…もっとも増加率の高い死因は三つに絞られた。自殺、薬物の過剰摂取、そしてアルコール性肝疾患だ。私たちは、これらを「絶望死」と呼ぶことにした。…絶望死が増えているのは、ほとんどが大学の学位を持たない人々の間でだった」

西洋のリベラルは『地球最後の男』の吸血鬼のようなもので、リベラリズムというウイルスに感染して"woke"し、未感染者を襲う。未感染者から見れば世界の終わりだが、吸血鬼から見れば未感染者こそ新世界における危険な存在である。

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