アメリカの革命とトランプ・パージ

アメリカのtech企業がトランプ・パージを開始したが、これは企業が「反トランプの姿勢を明確にしない→cancelのターゲットになる」ことを危惧したため、つまりは金(利益)が動機というよりも、思想に基づいて積極的に行ったものと見られる。

現在のアメリカで進行しているのは武力行使を伴わないフランス革命のようなもので、旧体制を打倒して「進んだ理念」に基づく社会を作ろうとするprogressive勢力が主導している。半世紀前に暴れた学生運動・新左翼がアップデートされたものがprogressiveである。

Apple社の「1984」のCMが象徴的だが、tech業界には元々、人々を解放してempowerしようとする使命感のようなものがある。しかし、革命が成功すると、革命勢力が理念に従わない人々のパージを始めるのもよくある話である(ジャコバン派やクメール・ルージュ)。

「古き良きアメリカ」を取り戻そうとしたトランプとその支持者は保守反動の反革命勢力なので、昔ならギロチン送りである。

補足

米英では白人には人種差別(奴隷制と植民地支配)の原罪があるとする観念がインテリと若者に広がり、それが「贖罪」としての過激な反差別運動(現代の十字軍)を巻き起こしている。

アメリカの白人は「生まれる前から」レイシストであり、死ぬまでレイシズムの原罪から逃れることはできないのだ。――そう考えれば、これは一種の「宗教運動」にちかい。

名門大学が現代の「教会」である。

「人種間の平等」がリベラルの”宗教“であるという考えを、私は直接的にはハーバード・ロースクールの憲法の授業で、ノア・フェルドマン教授に習った。
「そう、我々はいまだ消えぬ『原罪』を抱えている。道半ばに倒れた『キリスト』の意志を継いで『白人と黒人の平等』という教義を世に広めようと努力し続けている。信仰にも似た熱心さと従順さで。この『人種間の平等』が我々リベラルの心の拠り所だ。この教えをリベラルの『信仰』としないで、他の何が信仰の名に値するだろう」
この教義は後に「すべての人間の平等」へと拡大した。フェミニストはそこに「男女の平等」を入れ込み、LGBTは「セクシャリティの平等」を含めることを主張したからだ。

アメリカ社会のベースはヨーロッパからの移民によって形成されていたが、非ヨーロッパ系人口の増大に伴い、差別的な白人文化を一掃して「民族性をまったく取りはらった、まとまりある文化」「コスモポリタン的と呼べる規範や習慣」に置き換えようとする思想がリベラルに広がっている。

苦難の中でも大きかったのが、多くの民族がクレイジー・キルトのようにひしめき合っていたために起こる文化的混沌と燃えあがる憎悪だった。
このような帝国でキリスト教が再活性化運動になれたのは、民族性をまったく取りはらった、まとまりある文化を擁していた点が大きいとわたしは思う。民族の絆を捨てなくても誰もが迎えられた。だがまさにこの理由で、キリスト教徒のあいだに新しくより普遍的で、コスモポリタン的と呼べる規範や習慣が現れるにつれて、民族性はしだいに退いていった。

リベラルの教義(理念)の"equality, diversity and inclusion"は新たな普遍主義でもある。

人権や民主主義、市場の優越性や競争の自明性、科学的実証性など、現代社会において自明と思われている概念は、不平等の構造を拡大・深化させるレトリック、「普遍主義」という暴力に支えられているのではないか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?