出生率低下の半分は「結婚しても産まなくなった」から

結婚した女が産む子供の数は減っていない、という見解についてファクトチェックするが、結論は「誤」である。

それは、結婚したお母さんたちだけに限れば、ちゃんと2人の子どもを生んでいるという事実です。
世代を超えて、ぴったり子どもの数の比率は同じなんです。
今の若い女性たちが子どもを生んでいないなんてことはないんです!

出生率には、ある年に生まれた女の集団(コーホート)が産んだ子供の平均数(コーホート出生率)を用いる。

高度成長期初期までに生まれたコーホートの出生率は約2.0だが、末期以降に生まれたコーホートでは約1.4に約30%低下している。

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嫡出ではない出生は近年でも2%強と少ないので、出生率は「結婚する割合×結婚した女が産む平均出生児数」に分解できる。

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「国勢調査」によると、1940年~1975年生まれの女の40歳時点での既婚率(=1-未婚率)はこのように推移している。

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コーホート出生率の約30%の低下がすべて未婚率の上昇によるものなら、既婚率は約65%になっているはずだが、実際には約80%にとどまっているので、結婚した女が産む数も減っていることになる。

41歳時点の累積出生率を40歳時点の既婚率で割ると約2.1→約1.8で、結婚した女が産む子供の数(有配偶出生率)が約15%減っていることになる。

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国立社会保障・人口問題研究所の標本調査の「出生動向基本調査」でも、1955年生まれが45歳になる2000年頃を境に、40代の妻の平均出生児数が実績・予定共に減少している。数値も上の推計値とほぼ一致している。

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35~39歳で実績と予定の差が拡大していることは「もう1人産みたいが何らかの制約のために産めていない」割合が高まっていることを示唆している。

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ほぼ産み終わった45~49歳の妻では、出生児数がゼロと1人の割合が2000年代から急増している。結婚しても産まない・産んでも1人だけの妻の割合が増えたことがコーホート出生率の低下に寄与したことになる。

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「世代を超えて、ぴったり子どもの数の比率は同じ」ではない。

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以上から、コーホート出生率の約30%の低下は、女が結婚する割合と、結婚した女が産む子供の数がそれぞれ約15%減少したことによるものと推定できる。出生率低下の半分は「結婚しても産まなくなった」ことによるので、「結婚したお母さんたちだけに限れば、ちゃんと2人の子どもを生んでいる」は事実誤認ということになる(「お母さん」には無子も含む)。

付録:出生率低下の原因

2000年頃を境に有配偶出生率が低下した理由だが、高度成長期以前の世代が完全に産み終えて退場する時期だったことに加えて、日本経済が賃金が慢性的に抑制される「新常態」に移行したことも関係ありそうである。

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韓国の専門家は韓国の超低出生率についてこのように分析しているが、日本も程度の差はあるものの、方向性は同じではないかと考えられる。

人間の基本的な本能に生存と再生産があるが、生存できない状態では再生産も考えられない。韓国では子を産み育てる年齢層の生存が脅かされている」

女は結婚相手の条件として経済力(自分と子供を養う能力)を重視するが、30代・40代の男の平均給与は2018年になっても1997年のピークから約10%も少ない。たとえ結婚しても「給料が少なくて昇給も期待できないので2人目・3人目は諦める」夫婦を増やす要因になる。

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逆に、女の就業率は10~20%ポイント強も上昇している。賃労働には出産とトレードオフの面がある。

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男は賃下げ、女は「出産よりも賃労働」のフェミニストの理想社会に近づいたことが、結婚しなくなる&結婚しても産まなくなるの二重の効果で出生率を引き下げていると考えられるのである。フェミニズムはネオリベラリズムと同じく「稼がない人間には価値が無い」という「生産性で人を測る」思想なので、出産・育児は非生産的行為(無駄)とされる。

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。
個人的な面では、一番大事なことは働くことです。
最近になって、子どもを産むことは女性にとって厄介な罠だと思うようになりました。だから母親になるな、と女性に忠告したいのです。
正規雇用者の給料を下げて、夫に600万円払っているのなら、夫に300万円、妻に300万円払うようにすれば、納税者も増えます。
日本でも男性の平均所得は減少していますから、結婚相手に「キミは働かなくていいよ」なんて言わなくなるはずです。つまり、稼げない女は、結婚相手としても選ばれなくなる可能性が高い。
賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう?

この発言(⇧)からは、フェミニストが「合理的精神」の権化であることが感じられる。

自己の利益を最大化することで、かりに他者が不幸になったとしてもそれに何の道徳的責任を感じたりしない「合理的精神」こそが、自由競争の勝者に求められる資質であると言っても過言ではないだろう。

これ(⇩)も上野千鶴子の発言だが、フェミニズムは「彼ら」=劣等な男の淘汰を志向する優生思想であり、少子化を肯定していることも知っておくべきだろう。フェミニストにとって、低賃金・低出生率は社会が正しい方向に向かっていることの証である。

彼らが間違って子どもをつくったらたいへんです。子どもって、コントロールできないノイズだから。ノイズ嫌いの親のもとに生まれてきた子どもにとっては受難ですよ。そう考えてみると、少子化はぜんぜんOKだと思います。

その証拠(⇩)。フェミニズムは社会の繁栄・存続には価値を置かない滅びのイデオロギー(後は野となれ山となれ)であることに気付かなければならない。

日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。・・・・・・日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。

参考

大学進学率の上昇は経済成長には寄与しなかった反面、子育てコストの増大や就職・結婚・出産年齢の引き上げ(→出産可能期間の短縮)などにより、出生率低下には大いに寄与した。

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