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経済

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2023年10月の記事一覧

日本のGDPがドイツに抜かれた背景

2023年のGDPがドイツに抜かれかかっている件について。 四半期ベースでは1-3月期と7-9月期はドイツ>日本になっている。 1990年代はドイツの2倍前後だったので、相対的に半分に縮小したことになる。 相対的縮小の大半は実質GDP成長率の差よりも実質ベースでの円安によるもの。 構造改革前の「旧常態」では、円安→輸出数量増が国内生産に波及する景気拡大につながったが、企業がグローバル経営を深化させた「新常態」においては、為替レート変動に左右されない体制が整ったために、

エンゲル係数上昇と円安の背景

がニュースになっていたので少し書いてみる。 一般的に、エンゲル係数の上昇は生活水準の低下を意味する。第二次安倍政権期には敗戦後二番目に長い景気拡大や就業者の著しい増加が生じたが、国民の生活を豊かにすることには失敗したと言える。 アベノミクスでは円安が国内生産と投資の増加を引き起こすシナリオが描かれていたが、そうはならず、輸入物価上昇のマイナス効果が上回ってしまった。 食料とエネルギーを輸入に頼る日本が豊かな先進国であり続けるためには、技術立国・生産大国である必要があるが

岸田首相の手のひら返し

以前にも書いたが、第二次安倍政権や岸田政権が発足後に「グローバル資本大歓迎」に転向した理由について再度書く。 金融ビッグバンをはじめとする構造改革とは、日本経済をウォーラーステインがいうところのインターステイト・システムに組み込むものであり、ほぼ完了している。このシステムは金融資本主義(株主資本主義)によって動いているので、それに逆らう政策を行うことは極めて難しくなっている。 「これらの運動」とは労働・社会主義とナショナリズムの二つの運動で、どちらも自国の民衆・労働者の厚

リクスバンク経済学賞受賞者の日本に関するズレた見解

スウェーデンの中央銀行Riksbankがスポンサーの経済学賞の受賞者が日本について見解を示しているが、西洋リベラル特有の偏見に満ちていて、聞く必要がなさそうである。 女のパートタイム労働については👇を。 低出生率についても時代遅れの認識をしている。 ゴールディンが依拠しているのは、「女は家庭」という男女分業の伝統的規範がある社会で女の労働力化を進める→女が家庭と仕事の二重の負担に苦しむ→負担を減らすために子供を減らす(従って、男女平等になると出生率は上がる)という201

人口減少と革新の鈍化

この👇記事の内容からはズレるが、日本経済のinnovativeでなくなってきた根本には人口減少がある。 この👇タイトルの通りで後知恵になるのだが、 この👇ような楽観的予測が外れたのは、 設備投資や技術開発、(本来の意味での)イノベーションが活発になるのは、市場が拡大する→自社の事業が拡大するという見通しがある状況であり、市場が拡大しない/縮小に向かう予測されている状況では、中央銀行が利下げしても、政府が革新を奨励してもほとんど効果がないからである。 自国の人口が減少し